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『愛と誠』妻夫木聡インタビュー “上手く”ではなく“誠っぽさ”を追求した硬派男子

ルーズな学生服姿の妻夫木聡が瞳に憤怒の炎を燃えたぎらせながら、握り締めた拳をケンカ相手の不良グループに突き出し、そして……歌って踊る!? “観る者の度肝を抜く”などという表現ではどこか物足りない衝撃と共に、三池崇史監督最新作『愛と誠』は幕を上げる。映画冒頭、西城秀樹のヒット曲「激しい恋」に乗せ、怒れる主人公・太賀誠の激情と鬱屈を文字通り体現した妻夫木聡さん自身、「最初は“どうすればいいのかな?”と思いました」と認める。

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『愛と誠』 妻夫木聡 photo:Toru Hiraiwa
『愛と誠』 妻夫木聡 photo:Toru Hiraiwa 全 9 枚
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ルーズな学生服姿の妻夫木聡が瞳に憤怒の炎を燃えたぎらせながら、握り締めた拳をケンカ相手の不良グループに突き出し、そして……歌って踊る!? “観る者の度肝を抜く”などという表現ではどこか物足りない衝撃と共に、三池崇史監督最新作『愛と誠』は幕を上げる。映画冒頭、西城秀樹のヒット曲「激しい恋」に乗せ、怒れる主人公・太賀誠の激情と鬱屈を文字通り体現した妻夫木聡さん自身、「最初は“どうすればいいのかな?”と思いました」と認める。

「上手く」ではなく「誠っぽさ」が大事

先に挙げたシーンは、歌部分のレコーディングからスタート。その後、踊り&アクションの振り付けを固め、撮影に臨んだという。
「“ミュージカルみたいな歌い方をすればいいのかな?”と思っていたんですけど、三池さんから『上手く歌うのではなく、誠っぽさが出るといいよね』と言われたんです。となると、次に“踊りはどうすればいいんだろう?”という問題が上がってくるわけですが、三池さんの説明の中ですごく分かりやすかったのは『誠の口からポンッと台詞が出るように、ポンッと踊っちゃった感じを出してほしい』ということ。ムカついたからケンカをして殴るように、ムカついたからケンカをして踊る、という発想の転換ですよね。それなら、何よりもまず誠らしくあればいいんだなと考え、踊りとアクションを作っていきました。踊りの稽古もやりましたし、もちろん上手い方がいいんでしょうけど、上手過ぎても誠らしくない。肝心なのは、やっぱり感情なんですよね」。

では、その「誠っぽさ」とは何か。70年代を風靡した梶原一騎原作の同名コミックから生まれ、その後何人もの俳優によって実写世界の住人と化し、いまこうして新たに生み出された太賀誠は不遇な生い立ちを憎み、世の中を恨む札付きの不良だ。
「歌もあるし、踊りもあるし、最初の脚本からはパロディ色の強さを感じたりもしていたんですけど、三池さんの中には原作に対する敬意がしっかりある。だから、『太賀誠をクールに演じてほしい』と言われたときも、“ああ、なるほどな。そっちなんだな”と納得しました。どのキャラクターにも人間味があることは出来上がった作品を観ても分かるし、無茶苦茶やっているようで、三池さんの頭の中にはきっちりとしたビジョンがある。だから、僕は信頼してクールなキャラクターの中に“誠っぽさ”を追求することを特に意識しました」。

いっさい揺れない誠に「ちょっと憧れます」

世を拗ねた太賀誠は純粋無垢な財閥令嬢・早乙女愛に出会い、ストレートな恋心をぶつけられ、その濁りない愛情に包まれて浄化され……はしない。「感情移入はしたかなあ? ちょっと分からないですけど、こうありたいよなっていう部分はあったかもしれないですね」と苦笑する。
「誠は無茶苦茶過ぎるから、全部が全部、彼みたいにすることはできないですけどね。勢いよく自分に向かって来てくれる女性が仮にいたとして、最初はそれが嫌だったとしても、“ま、いっか”と思い始める部分が男にはあると思うんですよ。好きだと言ってくれる女性に対して弱いというか。もしかしたら、女性にもそういう部分はあるかもしれないけど。でも、誠はいっさい揺れないでしょう? それって、すごく硬派だと思うんですよ。あんなに尽くされているのに、平気で『うるせえ!』なんて言うし、簡単に相手を騙す。そこまでするのはさすがに…というところまで貫けるのが逆にすごいなと思いましたね。ちょっと憧れます。それが感情移入しているってことなのかどうかは分からないですけど(笑)」。

完成報告会見時の妻夫木さんは、「この映画は“純愛エンタテインメント”と謳われていますけど、そうじゃないですよ」と言い切っていた。太賀誠を一心に想い続け、(愛情の対象の気持ちはさておき)心のまま突き進む早乙女愛の想いは“純愛”に値すると思うが?
「いや、“純愛エンタテインメント”という言葉の現代的な響きに抵抗があっただけで、究極の純愛だとは思っていますよ(笑)。たくさん詰め込まれている映画なので、“これです!”とは言えない面白さがあるんですよね。エンタテインメントだけどそれだけじゃないし、純愛映画かと言ったらそれだけでもない。じゃあアクション? と聞かれたら、“アクションもあるけど…”となる。どの言葉に対しても“○○もあるけど…”なんですよね、この作品は。なので、僕としては“純愛娯楽映画です”くらいに言っておきたい。ただ、早乙女愛みたいな女性は駄目か? と言われたら駄目ですけど(笑)。いいって言う人なんているのかなあ…? あれが武井咲ちゃんじゃなかったら…」。

役への挑戦の一番の軸は「直感」

「正直、ギリギリの所まで攻めている」と主演俳優自ら表現する『愛と誠』には、ピュアなラブストーリーもあれば乾いた笑いもあり、「みんなが本気でぶつかってきたので、撮影自体は『バイオハザード』より怖かったです(笑)」というアクションもある。一方、そこには胸を打つ人間ドラマがあり、俳優・妻夫木聡の役者力と相まって最後には泣かされる。
「いや、それはもう本当に三池さんの力なんだと思います。そういった流れの脚本にはなっていたんですけど、実は途中で変えた部分も多いんです。誠が最後に迎える展開も、撮影が進んでから撮り足したもの。やっぱり、きちんとしたビジョンが常に浮かんでくるんでしょうね。あんなにも泣ける映画になったのは、僕としても嬉しい驚き。そういったところも、どんどんアピールしていかないと」。

昨年の主演作『マイ・バック・ページ』『スマグラー おまえの未来を運べ』に続き、今年は井筒和幸監督作『黄金を抱いて翔べ』の公開も待機。「自分が演じる役の傾向などは何も考えていないですし、オファーをいただいて、面白いと感じれば喜んで参加させてもらうスタンス。“面白いと感じるか感じないか”が一番の軸です。ほとんど直感ですね」と語る妻夫木さん。その直感が間違っていないことを、『愛と誠』は証明している。



stylist:TsuyoshiNimura(little friends)/hairmake:KATSUHIKO YUHMI(THYMON)

《photo:Toru Hiraiwa / text:Hikaru Watanabe》

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