【シネマVOYAGE】もうすぐ世界の終り。その時、あなたは誰に会いに行きますか?
小惑星が地球に衝突することがわかり、地球の滅亡まであと21日しかないとしたら、誰と何処で何をして過ごしたい? 『エンド・オブ・ザ・ワールド』は、タイトルとおり地球滅亡までのカウントダウンを描いている
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世界が終わるというニュースが流れ、妻が出ていってしまった男・ドッジ(スティーヴ・カレル)と飛行機に乗り遅れてイギリスの家族に会えなくなってしまった女・ペニー(キーラ・ナイトレイ)は、飼い主に見捨てられドッジに拾われた犬・ソーリーと共にそれぞれの目的──昔好きだった女性に会いに行くこと、家族に会いに行くことを叶えるために一緒に旅に出る。面白いのは、一緒に旅をする2人の出会い方。同じアパートに住んでいたにもかかわらず、それまで一度も言葉を交わしたことがなかった(興味を持たなかった)2人が、なぜか近づいて旅をすること。安定だけを求めてきた保険セールスマンのドッジは、どこからどう見ても冴えない中年男性で、若くて美しくて自由奔放な女性・ペニーとはなんだか不釣り合い? でも、出会いって不思議、地球滅亡という危機がなければ出会うことのなかった2人が、とあるきっかけで一緒に過ごすうちに恋に落ちてしまうのだから! 危険を共にすると、そのドキドキが恋愛に変わるという吊り橋効果もたしかにあるかもしれないけれど、それも含めて運命だって思わせてくれる、そんなロマコメなんです。いつの間にか相手のことを好きになって、どんどん想いが膨らんで、ペニーがドッジに「最後の人(男性)になって」と想いを打ち明けるシーンは、女性もキュンとするほどロマンティック!
また、ロマコメというだけあって、旅の途中の出来事もユニーク。ヒッチハイクで乗せてもらった相手が殺されてしまったり、パトロール中の警官につかまって留置所に入ったり、なかなか思い通りに旅は進まない珍道中は、クスッと笑えて、でもちょっぴり切なくて…。2人が訪れようとする旅先はハンツビル、カムデン、デラウェア、サリー、サマセット…。特別有名な観光名所ではないけれど、なぜかその地名を調べたくなって、世界地図を広げたくなる。「ああ、2人はこういう経路で旅をしていたんだ」と、映画を観たあとに2人の旅路をたどる、それもまたひとつの旅と言えます。そして、彼らの旅をたどりながら考えるのは「自分ならどうする?」というごく自然な問いかけ。残りの人生があとわずかだとしたら愛する人とどうやって過ごす? 愛する相手がいなかったら誰と過ごしたらいい? ドッジやペニーのように愛する人を訪ねる旅に出る? そんなことを考えているうちに「普段からもっと旅に出てみようかな」と、旅する衝動に駆られるはずです。
人生は一度きり。明日世界が終わっても悔いはないと言えるほど自由に生きている人は少ないかもしれないけれど、近くてもいい、自分が楽しめる場所へ足を運ぶこと、会いたい人に会いに行くこと、それが旅だと思うんです。観光するだけが旅じゃない! 旅の定義をほんの少し変えてくれる、『エンド・オブ・ザ・ワールド』はそんな映画です。
(C) 2012 Dodge Productions, LLC.
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