【対談:フレンチシネマの中の女性たち vol.2】 時代とヒロインの変化
フランス映画の女性の描き方も時代と共に変化していく。たとえば、「フランス映画祭2013」の上映作で8月公開の『タイピスト!』の舞台となる1950年代は、フランスでも女性の社会進出はまだ始まりかけたばかりだった。
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フランス映画の女性の描き方も時代と共に変化していきます。たとえば、「フランス映画祭2013」の上映作で8月公開の『タイピスト!』(原題:Populaire)の舞台となる1950年代は、フランスでも女性の社会進出はまだ始まりかけたばかり。
ドラ:フランスは60年代までは、すごくコンサバティブだった。70年代に法律が改正して、女性が自立するようになったら劇的に変わった。
雅子:フランソワ・オゾン監督の『しあわせの雨傘』(原題:Potiche/70年代、病に倒れた夫の代わりに雨傘工場運営を任された主婦が経営手腕を発揮する)で描かれていたような感じ?
ドラ:そう。この頃から、映画での女性の描き方も大きく変わった。結婚はしないで、同棲して子どもを持つとか、結婚・離婚・再婚でお互いの連れ子が増えていって、複合家族になるとか。
雅子:フランス映画の面白さは、そういういろんな現実をそのまま見せてくれるところ。ドキュメンタリーだったり、風刺を込めたフィクションだったり、様々な見せ方があるんです。
ドラ:オゾン監督の『ムースの隠遁』(原題:Le refuge)もフランスの社会の変化を描いていますね。フランスでは最近、同性婚が合法化されたけど、養子のこととか、いろいろ複雑な問題があります。
雅子:ゲイの男性が、子どもが欲しいと思ったときにどう行動するかっていう。
ドラ:不思議なのは、フランスの社会ってアバンギャルドなのに、同性婚については反対派のデモをする人がすごく多かった。びっくりするぐらい。
雅子:そうなんですよね。フランスは移民も多く、人種も思想も多様だけど、すごく保守的な面もある。
ドラ:それから、さっき雅子が言ったように、フランス映画はそのとき現実に起きている社会問題を題材にします。『キリマンジャロの雪』はリストラと移民、『フランス、幸せのメソッド』(原題:Ma Part Du Gateau)は格差社会といった問題を取り上げています。『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』(原題:Love Crime)は働く女性同士の凄まじい戦い。企業で高いポジションに就く女性が増えているから、これはリアリティがある。そういえば、女優の質も変わったと思う。70年代くらいまでは、うっとり憧れるような美だったのが、いまは普通の人に近い。
雅子:そこは日本と似ていますね。女優であって、女優でないところがある。スクリーンと一般社会の差がなくなってきたというか。
ドラ:もちろん、才能ある素晴らしい女優はいっぱいいる。ただ、ずっと見ていたいような本物の美を感じる女優って、いまは私にとってはいないかな。『太陽が知っている』(原題:La Piscine)のロミー・シュナイダーみたいな。あの映画はファッションもいい。
雅子:衣裳は「クレージュ(Courreges)」です。黒いビキニや白いワンピースのスイムウエアの着こなし、ディナーのときのグリーンのサマードレス、ラフに羽織るシャツ、白いワンピースなどなど…大人の女性の装いとして参考になる。それから、舞台が南仏のサントロペ、気侭で素敵なヴァカンスの過ごし方、プール付きの別荘…。もう、日本人には遠い存在だから憧れちゃう。
ドラ:アペリティフ(食前酒)の時間を楽しむとかね。
雅子:食事をするのに必ず着替えて食卓に着くっていう、オシャレをする上でのTPOも、やっぱりフランス映画から学ぶとステキなものになりますね。
特集:「カルチャー感度をアップ! おしゃれに楽しむフレンチシネマ」
【対談:フレンチシネマの中の女性たち vol.1】 何歳になっても“女性らしく”
WOWOWシネマ「フランス月間!2013」
6月9日(日)~21日(金)まで
《photo:Toru Hiraiwa / text:Yuki Tominaga》
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