宮崎駿、自作を観て涙も「情けない」 庵野秀明はラストのセリフ“180度修整”を絶賛
スタジオジブリ最新作で、宮崎駿の5年ぶりの監督作となる『風立ちぬ』の公開を控え、6月24日(月)、東京・小金井市のスタジオジブリにて、宮崎監督、主人公の声を担当した庵野秀明、主題歌を提供した松任谷由実による…
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大正から昭和にかけての激動の時代を舞台に、ジブリ作品で初めて“大人の恋愛”を描いた作品としても話題を呼んでいる本作。零戦の設計者として名高い堀越二郎と作家の堀辰雄を掛け合わせた主人公の青年と少女・菜穂子の時代に翻弄されながらの切ない愛が描き出される。
宮崎監督は完成した作品を観て思わず涙したそうだが、自身の作品で泣くのは初めての経験だったという。「情けないです。本当にみっともない…」と自嘲気味にふり返る。庵野さんはそのときの様子について「号泣でしたよ(笑)」と証言。松任谷さんは同じクリエイターとして、自作を観て涙する監督の姿を「羨ましい」という思いで見ていたという。
宮崎監督が最初に本作の企画を考えたのは、『崖の上のポニョ』が公開された2008年。世界経済に大きな影響を与えた“リーマン・ショック”の前後で、「ファンタジーが簡単には作れない時代となった中で、スタジオジブリはどう進むべきか? 模索していた」という。劇中の登場人物たちは、時代の波に翻弄されつつ、長くはない人生を懸命に生きようとする。宮崎監督はこれを「切迫した時代」と表現し、「これからそういう時代が来る。だからこそ作る意味があると思った」と現代と共通するものを感じたと明かす。
庵野さんは、宮崎監督のことを「アニメはこういう風に作る、映画はこういう風に作ると教えてくれた師匠」と語るが、その庵野さんにとってもジブリ作品での声優、しかも主人公の役でのオファーは驚きだったようで「最初はよく分かんなかった…」と述懐。多くの俳優が候補としてピックアップされ、幾人かは実際にオーディションを行ないながらも宮崎監督が決めかねている中で、鈴木敏夫プロデューサーからの提案で庵野さんに決まったという。宮崎監督はその決め手について「現代で一番、傷つきながら生きている。声にそれが出ている」と説明。庵野さんは「当たらずとも遠からず…。しんどい生き方ですからね(笑)」と得心がいったように笑みを浮かべていた。
松任谷さんの名曲「ひこうき雲」(荒井由実名義)の主題歌での起用も、鈴木プロデューサーから宮崎監督に持ち込まれたもの。この曲に関しても部屋で聴かされた宮崎監督は「不覚にも…年を取ると涙腺が…」と涙してしまったことを告白。松任谷さんは、この曲を作ったのが高校時代であることを明かし、「荒井由美というのは、分身のようでもあり遠い人物のようでもある。40年の時を経てこういう素敵な作品に参加できて…高校生の自分に(40年後の主題歌提供のことを)言ってやりたいですね。荒井由美が亡霊のように現れました」と満足そうに語った。
庵野さんはお気に入りのシーンとしてラストシーンを挙げたが、実はこのシーン、映像はそのままに「台本のセリフを180度変えた」(庵野さん)とのこと。「最初は『何じゃこりゃ?』と思ったけど、(セリフを変えて)よくなったと思います。72歳を過ぎてハタチ過ぎの映画ができた。宮さんがちょっと大人に近づいたと思います(笑)」と毒舌まじりに“師匠”へ惜しみない称賛を送る。松任谷さんも「見たことのない、勇気が出るような不思議な終わり方になっていると思います」と頷いた。
『風立ちぬ』は7月20日(土)より全国東宝系にて公開。
《シネマカフェ編集部》
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