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マシュー・フォックスが語る、初音映莉子との“言葉の壁”を超えた恋

映画の中では憂いを帯びた表情と軍人らしくピンと伸ばした背筋が印象的だったが、インタビューの場に現れた彼は柔らかい笑みを浮かべ、長い手足を組んでリラックスした様子でソファに腰かけた。

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マシュー・フォックス『終戦のエンペラー』来日インタビュー/Photo:Naoki Kurozu
マシュー・フォックス『終戦のエンペラー』来日インタビュー/Photo:Naoki Kurozu 全 12 枚
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映画の中では憂いを帯びた表情と軍人らしくピンと伸ばした背筋が印象的だったが、インタビューの場に現れた彼は柔らかい笑みを浮かべ、長い手足を組んでリラックスした様子でソファに腰かけた。社会現象ともいえる人気を博した海外ドラマ「LOST」で主演を務め、日本でも高い人気を誇るマシュー・フォックス。彼が主演を務める映画『終戦のエンペラー』が公開中だ。戦後の日本の行く末を決定する上で、極めて重要な役割を果たした歴史上の人物を演じたことは、彼に「LOST」とはまた違った感慨をもたらしたようだ。

終戦直後にあのマッカーサー元帥らと共に来日したGHQ内きっての知日派であるフェラーズ准将は、「あの戦争の真の責任者は誰なのか? 天皇陛下に戦争に対する責任はあるのか?」という難題を調査するようにと極秘指令を受け調査を進めていく。

フェラーズ准将はれっきとした実在の人物だが、映画ではそれに加え、彼が戦前、ひとりの日本人女性と激しい恋に落ちていたというラブストーリーの要素を回想と共に織り込み、戦後の日本で彼女の消息を追う彼の姿を描き出していく。

終戦直後の知られざる史実という縦糸、時代に翻弄される男女の物語という横糸を絡み合わせ、物語を紡いでいく重要な役どころを担ったマシュー。戦前、戦後とわずか数年を挟んでの全く異なる時代が描かれるが、「その時代ごとに求められる役割、引き出さなければならない部分が違った」とふり返る。

「まず戦後の彼はとにかく“真実”を追求しなくてはいけない。マッカーサーに無理難題を吹っ掛けられて(苦笑)、真の戦争責任者は誰なのか? というのを調べていくけど、どう決断するかによって、その影響たるや…彼自身もその重みを十分に分かった上で任務を遂行しなくてはという強い責任を帯びている。一方で戦前の彼はもっと若く、そして無垢で、アヤという魅力的な女性に文字通り取り憑かれたように恋をしている。そこは叙事詩的に、一生に一度の恋をロマンティックに表現したかったんだ」。

揺れ動く時代の中で文化や言葉の壁があるにもかかわらず、どうしようもなくアヤに惹かれていくフェラーズを演じる上では、自身の経験が役作りの上で大きな助けになったと語る。

「というのも僕自身、妻はイタリア人で、20歳のときに恋に落ちたんだ。僕はイタリア語が話せず、彼女は英語が話せなかったんだけど、それでもどうしようもなく互いを求め合ったというのがあって、個人的にも映画の中でこの2人の関係には心が惹かれたよ」。

アヤ役の初音映莉子との間にも「言葉の壁は確かにあった」と言うが、映画の中の2人さながらにそれを乗り越えて信頼関係を築いていった。

「恋仲を演じるという意味でのある種の緊張感も必要で、監督(ピーター・ウェーバー)からは『2人で映画を観に行け』という指示が出て、スピルバーグの『戦火の馬』を2人で観に行ったよ。実際、決して多くはない時間の中で互いを信頼できる関係を作ることができたと思う。僕自身、以前から日本の演技の一種独特のスタイルに興味があって、撮影に入る前から日本の俳優陣と、緊張感のある仕事ができるのは楽しみでもあったんだけど、実際に彼らはみんな、語り尽くせないほど素晴らしかった。多くを学ばせてもらったよ。マサ(フェラーズの通訳を演じた羽田昌義)も本当に素晴らしい俳優だったね」。

緊張感という意味では、マッカーサーを演じた20歳年上の名優トミー・リー・ジョーンズとの共演シーンもざぞや張りつめた空気の中での撮影だったのでは?

「もちろん。でも彼との共演は本当に素晴らしい体験だったよ。実はトミーが撮影に参加したのは終盤の3週間だけだったんだ。彼の存在が多くのものをもたらしてくれること、あれだけの経歴を持つ彼が来ることで現場の空気が一変するだろうことは予想していたけど、まさにその通りで現場に緊張が走ったよ。ただ、フェラーズとマッカーサーという絶対的な上官との関係を演じる上ではそれは良いことだったと思う。トミーは綿密に準備を整えて現場に入り、ちゃちゃっと終わらせ、スッと家に帰るという(笑)、とにかく徹底したプロフェッショナルな人で、テキパキと物事を進めていくのが好きな俳優。彼の姿を見ているだけでも、それは素晴らしい経験だったね」。

マシューが俳優として最初に注目を集めたのは、1994年から2000年まで放送され、メインキャストのひとりを務めたドラマ「サンフランシスコの空の下」。その後、2004年に始まった「LOST」で大ブレイクを果たしたが、これまで出演した映画は10本に満たない。ドラマ出身の彼が感じる映画とドラマの違いを尋ねると、またしても“緊張感”という言葉が口をついて出た。

「やっぱり一番の違いは、TVは長期間にわたるので、演じる側もこの先のストーリーがどうなるのか分からないまま続けないといけないというところだね。その点、映画や舞台はあらかじめ構成が決まっているから、自分なりのコントロールを利かせることができる。それから、TVでは長ければ6年もの間、同じ人たちと顔を合わせて撮影に臨まなくてはいけない。その意味では映画は常に新しい環境――今回はニュージーランドに投げ込まれて、2か月半という凝縮された時間を共演者たちと過ごすことができた。限られた濃密な時間の中で緊張感を感じられるのは俳優として堪らなく楽しい瞬間だよ」。

《photo / text:Naoki Kurozu》

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