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【インタビュー】妻夫木聡×北川景子 あるある! CM業界の裏側!?

妻夫木聡は本作の最初の印象を、初期の代表作を引き合いにこう語る。

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妻夫木聡×北川景子『ジャッジ!』/PHOTO:Naoki Kurozu
妻夫木聡×北川景子『ジャッジ!』/PHOTO:Naoki Kurozu 全 6 枚
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妻夫木聡は本作の最初の印象を、初期の代表作を引き合いにこう語る。

「『ウォーターボーイズ』の脚本を初めて読んだときと同じ感覚を覚えましたね。人を惹きつける温かい笑いがふんだんにあって、ここまでスカッとする映画は久しぶりだなって」。

北川景子は妻夫木さんと同じように物語に強い魅力を感じると同時に、もうひとつ本作に惹きつけられたポイントがあった。

「CMを作っている方々が映画にするということで、この面白い脚本をどういう風に撮影していくのかを想像しました」。

そう、映画『ジャッジ!』はソフトバンクの「ホワイト家族」やトヨタ自動車「ドラえもん」シリーズなどを生み出したCMプランナー・澤本嘉光の脚本を、CMディレィクターの永井聡がメガホンをとって映画化した作品であり、物語の舞台もズバリ広告業界。数多くのCMに出演し、業界の酸いも甘いも知り尽くした妻夫木さんと北川さんが、本作の魅力から映画にも描かれている業界の真実(?)まで語り尽くすロングインタビューをお届け!

落ちこぼれ広告マンの太田(妻夫木さん)は、上司の命令で国際広告祭の審査委員を務めることに。密かに下された指令は、取引先の社長のバカ息子が作ったヒドイCMを入賞させること。クビが懸かった状況で、ギャンブル好きだが優秀な同僚・大田(北川さん)を偽の妻として連れ添い、各人の思惑と謀略が跋扈する広告祭に乗りこむが…。

過去に澤本氏の手がけたCMに何本も出演してきた妻夫木さんだが、特に今回の撮影における、普段の映画の撮影との違いについて尋ねると「映画っぽくもCMっぽくもない、今回だけの特殊な現場だったと思う」という答えが返ってきた。

「CMの方が映画よりカット数は多いですよね。15秒、30秒といった短い時間の中で『泣きながら笑ってください』みたいなことを要求されるんです。今回の作品もカット数は多くて、正直、最初のスケジュールでは到底、撮りきれないだろう、どうするんだろう? って思ってました。でも今回は画にこだわる――CMは当然ですが画にこだわりがちです――というよりも、芝居でテンポよく見せるというのが監督の頭の中にあったと思います。いつもの映画っぽくないと言えばそうなんだけど、かと言ってCMっぽくもない。特殊な現場というイメージが強いです」。

北川さんも「特殊は特殊でしたね」と頷く。

「私にとっては映画というのが1シーン1カットの多い現場というイメージがあるので、撮影前にカット割りが出ていて、絵コンテに沿って進めていくという現場にいて『あれ? 私は今日、何の現場にいるんだっけ?』と感じるような(笑)、慣れない感覚は最初のうちはありました。芝居でも、普通の人間の感情なら『(相手に)フラれた』という出来事があったら、最初は受け入れられない感情や間があって、しばらく経ってから涙が出るものですよね。それがいくつかのカットの中で驚いて、涙を出して…というコンテの通りに自分たちが動かなくてはいけない。感情を早送りにして表現する難しさというのを感じたし、終わった後に鍛えられた気がして、参加できてよかったなと思いました」。

妻夫木さんが完成した作品を観て笑ったというのが、豊川悦司が演じる上司から太田が広告祭行きを命じられる場面。太田のツッコミに対し、豊川さんが異様に長い間を取るというやりとりがある。単に好きというだけではなく、このシーンに永井監督の凄みが表れているという。

「あの“間”がすごく好きですね。あれは監督に言われてではなく、豊川さんが自分で考えたんです。普段、監督は30秒のCMの世界で戦っていて、その人が2時間の映画を撮るということで芝居の“間”がどうなるのかは正直、心配ではあったんです。でも、ああいう間をきちんと残せるって、やはり永井さんはすごい人だなと感じました。あれを残すってすごいですよ。CMではあの5秒って死活問題ですから」。

食品から飲料、化粧品に自動車、カメラに至るまで、2人とも数えきれないほど多くの、そして印象的なCMに出演してきた。例えば妻夫木さんは、澤本氏の手がけたトヨタのCMでのび太に扮し、ドラえもんを演じるジャン・レノと共演するなど時にCMでは、映画やドラマではありえないシュールなシチュエーションも…。

CMの世界に身を置いてきて、妻夫木さんが強いインパクトを受けたというのが“ライティング(照明)”に対して、妥協することのない姿勢だという。

「映画で昔の黒澤(明)監督が『雲待ちするぞ』とか『今日はダメだ。明日だ』なんてことを仰っていたという話は聞きますが、いまはそんなこと言える時代じゃない。そんな中で、CMはいまだに天気待ちってありますから。やはり画に対する妥協のなさが一番。ライティングにかける時間も映画よりずっと長いです。カメラテストも映画でも多少はしますが、CMは前日や当日に全部現場を作りこんでテストしますからね。その分、当然、予算が掛かるので、ギュッとスケジュールを詰めて、スタッフさんによっては何日も寝てないって状況だったりする。華やかな世界だけど、やっていることは過酷。でも非常にクリエイティブという矛盾の中で成り立っている。そういうところは面白いなと思います」。

北川さんは、映画の中の太田たちのやりとりを見つつ「自分が出ているCMもこんな風に作られているのかな」と自らを重ねて見たシーンも多かったという。これまで参加してきたCMの現場をふり返りつつ、こんな感慨も。

「まず広告なので、その商品がよく見えないといけないんです。だから、食品や飲料でも美味しそうに見えるまで何度でも食べ続ける(笑)。私たちが飲んだりするのでなくても、滴(しずく)ひとつ落ちるショットを100回でも200回でも撮り直す。テイク38とテイク156の違いはなかなか分からないと思いますが、そこに意味が確実にあるんですよね。私は最初、未熟な素人でそれが分からなかったんですが、やっていく中で『いまの滴はちょっと跳ね方が足りないな…』と分かってくるようになりました(笑)。それは、それだけたくさんお仕事をやらせていただいたという誇りでもあります。

この映画もそうですが、普通の人からしたら『なんで?』と思うようなことに対して妥協しない人たちがクリエイティブなことをやってる。でも妻夫木さんが仰ったように、限られた時間や予算、天気といった条件の中でやらなくてはいけなくて、そこでどれだけ良いものを生み出せるか? 妥協のないストイックな世界だなと思います。TVで見ていた子どもの頃には分からなかったことですね」。

さらに映画の内容と比べつつ、2人の口からは次々と“CM界あるあるネタ”が飛び出す! 本作でも豊川さんが演じるいかにも業界人のクリエイター、各国の個性的な審査員など様々なタイプの広告マンが登場するが、映画では大げさに描かれてはいるものの、妻夫木さん曰く「変わった人が多いのは確か」とのこと。

「オタクっぽい人もいるし、変わったファッションの人も多い。映画の現場の人は絶対に着ないような服を着ている人や派手系の人、めちゃくちゃオシャレな人もいますね」。

北川さんも頷きつつ「柄のハーフパンツに柄のレギンスを合わせたり(笑)。ヒッピーっぽい人もいれば、とりあえずサングラスがヘアバンド代わりになってる人もいますよ」と明かしてくれた。

最後に、妻夫木さんのコメディアンぶりについて。シリアス、ハードボイルドからコミカルな役柄まで幅広く演じ分けられるのが妻夫木さんの魅力。本作の憎めないダメ男も『清須会議』でのバカ殿っぷりも堂に入っており、ごく当然のようにコメディの世界に生きる妻夫木さんを受け止めてしまうが、月9を始めトレンディ・ドラマの主役を張るイケメン俳優(という呼び方を当人がどう受け止めるかは別として)が笑いの中心に当たり前のようにいるというのは凄いこと。今回、初めて本格的に共演した北川さんは「やはり主役をやる方なんですよね。中心に妻夫木さんがいて、みんなが寄っていく」という言葉でその魅力を表現する。

妻夫木さん自身、自らの俳優としてのルーツとしてコメディを常に意識しており、何より日本映画界において、コメディがいかに重要な存在かを強く感じているという。

「元々僕は初めての連ドラが『お水の花道』で、戸田恵子さんや伊藤俊人さんといった三谷(幸喜)さんと関わりのある方が多くいる中で過ごさせていただいたんです。その後、三谷さんの『温水夫妻』を見て、コメディってこんなに面白いのか! って思いました。ふり返ってみると、僕がどういう映画が好きだったかというと『シコふんじゃった。』や伊丹十三監督の作品で、やはり根っこではコメディが好きなんです。

ただ日本ではコメディと呼んでいいのか? という作品が多いですよね。『ウォーターボーイズ』もそうだし、周防(正行)監督の作品もそう。胸張ってコメディと呼べるのは三谷さんの作品くらいで、それは三谷さん自身がそう仰っているから(笑)。でもそのハッキリとは言えないけど控えめなコメディの感じ、絶妙なバランスが油断してるといつの間にか感情移入して最後に涙をほろっと持って行かれちゃう。そういうのが日本のコメディの文化としてあるんでしょうね。だから、日本にコメディ作品が向いてないかというと決してそうじゃないと思う。山田(洋二)監督も最初は喜劇ばかり撮っていたし、『寅さん』だってそう。映画は娯楽だと考えたら、それは絶やしちゃいけないものだなと感じています」。

若い層に絶大な人気を誇る2人がボケて、ビシバシとツッコミ、惹かれ合うという日本のラブコメの王道を突っ走る姿をぜひともスクリーンで観て、コメディの面白さを体感してほしい。

《photo / text:Naoki Kurozu》

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