【特別映像】ベネディクト・カンバーバッチ、奴隷制度のもどかしさを痛感…『それでも夜は明ける』
先の本年度アカデミー賞で「作品賞」「脚色賞」「助演女優賞」と3部門を獲得した、ブラッド・ピット製作、スティーヴ・マックィーン監督の『それでも夜は明ける』…
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アカデミー賞授賞式のレッドカーペットでは、U2の写真撮影中に“フォト・ボム”を仕掛けようと必死にジャンプするお茶目な一面を見せていたベネディクトだが、その歴史的価値からアメリカの高校で教材として使用されることにもなった本作での役柄への思いを、真摯に語ってくれた。
『それでも夜は明ける』は、愛する妻と幼い子どもたちに囲まれ、音楽家として幸せな日々を送っていたソロモン(キウェテル・イジョフォー)が、ある日突然誘拐され、家族も、財産も、名前さえも奪われ、遠く見知らぬ地へ奴隷として売られてしまうという衝撃の実話を基にした物語。奴隷制度というアメリカの歴史の裏側をたどりながら、自由のため、家族との再会のために、生きることを諦めなかった男の勇気と希望を描き出していく。
本作でベネディクトが演じるのは、誘拐されてきたソロモンを奴隷商人から最初に“購入”するフォード。牧師であるフォードは、奴隷制がキリスト教徒の道理に相反していることを頭では理解していても、何もできない。頭が切れ、飲み込みの早いソロモンを気に入り、優しく接してはいるが、基本的には奴隷制を支持しているのだ。
ある日、フォードは借金の返済のため、非情な奴隷主エップス(マイケル・ファスベンダー)にソロモンを引き渡すことになる。「フォードにとって最も苦渋のときは、自分の借金を清算するため、エップスに権利を手渡すところだ」とカンバーバッチは言う。
「ある意味それはローンのような、抵当権のようなものだ。彼は、借金を返す代わりに、この価値ある人間を担保にする。恐ろしいことだ。自分がしていることは百も承知で、それが彼の魂をひどく苦しめる。でも彼はやめない。そこが境界線だ」と、自身の演じた牧師フォードの“良心”に思いを馳せる。
「フォードがどれほど善良でも、それを分かってやっているなら、彼は本当に善良にはなれない。21世紀の目で彼を判断するのはとても簡単だ。ソロモンでさえ、ああいう環境に生まれたからと同情するのは簡単だ。でも客観的に言えば、あの時代に人間の中の善良さを見るのは難しい」と語り、人道的に振るまいながら、弱さも隠せない二面性を演じ上げたことをふり返った。
この問題作でメガホンをとったマックィーン監督は、前作『SHAME -シェイム-』でもセックス依存症の男の孤独と葛藤を赤裸々に描き、映画界を挑発した。ベネディクトも「スティーヴは素晴らしい監督だ」と絶賛する。
「彼の映像美学は、観客としても俳優としても楽しめる。演技空間とカメラの間には純粋な目的しかなく、とてもシンプルに保たれている。非常に経済的だ。視野を絞れる。そこが素晴らしいんだ」と語り、監督には全幅の信頼を寄せていたようだ。
真摯な瞳で丁寧に質問に答えるベネディクト。彼が本作での出演で得たものは、今後の作品にも生かされていくに違いない。
『それでも夜は明ける』は全国にて公開中。
《シネマカフェ編集部》
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