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【インタビュー】能年玲奈×登坂広臣 『ホットロード』への決意「自分の軸はぶらさない」

晴れの場にふさわしいドレスアップした姿も、演じた役について語る様子も、全然『ホットロード』の主人公2人と違う。なのに、語るその言葉に耳を傾けていると、やっぱり“和希”は彼女、“春山”は彼なのだと思わせる。

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能年玲奈×登坂広臣『ホットロード』
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晴れの場にふさわしいドレスアップした姿も、演じた役について語る様子も、全然『ホットロード』の主人公2人と違う。なのに、語るその言葉に耳を傾けていると、やっぱり“和希”は彼女、“春山”は彼なのだと思わせる。そんな説得力がある能年玲奈と登坂広臣。80年代半ば、当時の十代の心を鷲掴みにした不朽の名作コミックの満を持しての映画化で、2人は母親との関係に悩み寂しさを抱えた少女・和希と、無鉄砲に生きる不良少年・春山を演じている。

互いの第一印象について尋ねると、まず能年さんが言葉を一つ一つ丁寧に紡ぐように語り始める。「初めてお会いした時は、この人が春山なんだと思って。そのイメージを頭に入れよう、と必死でした。でも、撮影が始まったらすごい現場を明るくして下さる方で。和希が春山を殴るシーンがあったんですけど、そういう時に『思い切りやって下さい』って言って下さる優しい方だったから。思いっきり(笑)できたなと思って」と言うと、隣りに座っている登坂さんに「本当にありがとうございます」と改めて感謝を示す。

それを受けて、登坂さんはリハーサルで初めて対面したときの印象を語る。「その時には原作も脚本も読み込んでいらっしゃると思ったので、“和希だな”という印象を受けました。撮影中は、今おっしゃったように、殴るとか頭突きするシーンでもすごくストイックな方だというイメージがすごく強いです」。

世代を超えて読み継がれている原作の映画化に、主演というプレッシャーはやはりあった。能年さんは「私はただ驚くばかりという感じでした(笑)。本当にたくさんの方に愛されている原作なので、原作ファンの方を裏切らないように、忠実に和希を演じなければいけないのは大前提としてありました。それを私が演じるうえで、どうすればいいのかすごく悩みました。でも、忠実に和希を演じる中で、自分の軸をぶらさないでできたらいいなと決めて臨みました」。

映画初出演の登坂さんは「初めてだったので不安もありましたし、自分の中で葛藤もありました」とふり返る。

「でも、原作者の紡木たく先生、監督をはじめ映画関係者の皆さんにもお会いさせていただいて、自分を求めて下さっていることにすごく心打たれたというか。もちろん、自分も原作を読ませていただいてファンになっていたのも大きな理由ですけど、そうやって思っていただける気持ちに応えたいと思いました。紡木先生にお墨付きをいただけたのが何より、僕の中の不安を取り払ってくれたような、背中を押してくれたと思います」。能年さんも「原作者を始め、関係者の方に選んでいただくのは、それはすごく嬉しい、喜ばしいことだなと思いました」と表情をほころばせた。

物語の舞台は、能年さんにとっては生まれる前の80年代。「本当に知らない世界がそこにあって」と正直に語る。

「監督から『今の人たちにも通じるようにしたい』と言われました。時代背景が今とは違うので、どう溝を埋めるかという点で悩んだんですけど、親への反抗心は今の子にも通じるのかなと思って、そこを大事にしました」。和希については「すごく一生懸命なところに共感できる女の子です」と言う。

「お母さんに構ってほしくて、自分のことを見て欲しくて、でもそれを素直に吐き出せないから、悪いことをしてしまう子なのかなと解釈をしました。和希が春山に惹かれたのは、お母さんとの冷たい関係があったからじゃないでしょうか。和希は春山と初めて会った時にもう惹かれ始めていたと思ったので、むかつく! という部分と惹かれる気持ちが同時にある、その流れがもう一瞬で見えたらいいなと思います」。

登坂さんは春山について「最初はどこか人間らしくないというか、命を大事にしてない部分がすごくあったと思うんです。性格も不器用だし。でも、仲間を大切にする気持ちも、“この人を大事にしたい”と熱くなる思いがある」と分析。「共通点はたぶん不器用なところだと思います。素直に言えばいいものを違う言い回しにしてしまったり、少し逆のことを言ってしまったり。共感というか、理解できました」。

決してセリフの多い作品ではないが、印象的な言葉が数々ある。登坂さんはラスト近くの春山のセリフが印象深いという。映画を楽しんでもらうためにここでは敢えて明かさず、理由だけをお伝えしよう。「和希と出会うまでは死すらも恐れていなかった春山が、実際にそれに直面した後の第一声です。本当に心の声だと思います。たったひと言で、春山が変わったというか、より人間らしくなるのが分かるんです」。

能年さんは「和希が直接しゃべってる言葉ではないんですけど、あのセリフが結構好きで」と前置きして、和希と春山が出会うきっかけを作った親友・絵里を指す「私の友だち」というひと言を挙げた。「自分ができることが何にもなくて、やるせない中で、友だちだって確認することで絵里を大事にしている感じが、すごく素敵だなと思いました」

2人とも演じる役と物語の芯を的確にとらえるチョイスを瞬時にしてみせる。この豊かな感受性が、不可能と言われた映画化を見事に実現させた大きな原動力だ。

《冨永由紀》

好きな場所は映画館 冨永由紀

東京都生まれ。幼稚園の頃に映画館で「ロバと王女」やバスター・キートンを見て、映画が好きになり、学生時代に映画祭で通訳アルバイトをきっかけに映画雑誌編集部に入り、その後フリーランスでライター業に。雑誌やウェブ媒体で作品紹介、インタビュー、コラムを執筆。/ 執筆協力「日本映画作品大事典」三省堂 など。

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