【インタビュー】『ルパン三世』黒木メイサ 自称「おっさん」が“峰不二子”になるまで
おそらく、彼女がこのオファーを蹴ったところで、それを非難するファンはいなかっただろう。一方で不安と重圧ならばあり余るほどあった。それでも黒木メイサは『ルパン三世』に出演すること、峰不二子を演じることを選んだ。
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「うーん…」。
これが、最初にオファーを受けたときの彼女の反応、偽らざる思いだったという。
「何とも表現しづらいですが…。正直、『よっしゃ!』という気持ちもありましたよ。でもやっぱり怖かったですね、ぶっちゃけ。どうしようかな? まず何からやろう? 『ぜひやらせていただきたいです!』という思いと、『何をどう始めたらいいのか?』という思いがあって、本当にいろいろ考えました」。
余人には計り知れないプレッシャーと不安、恐怖があった。だが彼女はそれを受け止め、役に向き合った。そして、かけがえのない仲間たちの存在が彼女を強くした。
「最初の打ち合わせに入るまでは孤独――“峰不二子”を背負って、ひとりぼっちでいるような気持ちでした。でも北村(龍平)監督をはじめ、スタッフさんとの打ち合わせがあり、衣裳についても話をして、撮影の前には他のキャストのみなさんとアクションの練習をする時間もあった。そこで、少しずつみんなで時間を過ごしていく中で、私だけでなく、みんなもそれぞれにプレッシャーを背負っているということに気づいて『この人たちと戦っていこう』という楽しみに変わっていきましたね」。
誰もが認めるセクシー美女。同性からも憧れの女性像に挙げられるアイコン。そんな峰不二子に黒木さんは具体的にどのようにアプローチしていったのか? これまでのアニメシリーズを見返す中で、黒木さんは不二子について「魅力的な女性らしさと同時に、意外と“陰”を感じさせるところがあった」と語る。クランクイン後の現場で、カメラが回ってないところも含め「いままでに経験したどの現場よりも“女”でいることを意識した」と明かし、冗談めかしつつこう語る。
「私、おっさんなんです、ホントは(苦笑)。サバサバしているといいますか…。(撮影で)ずっとタイにいて、トレーニングや食事でみんなと一緒に過ごす時間が多かったので、そうした時間も含めて“おっさん”が出ないように言葉遣いや佇まいも気を付けてました(笑)。そうしていると、なかなか言葉が出てこなくなるんですよね。食事に行って、みんなが『今日の撮影はこうだったね、ああだったね』と話しているのを聞いている方が多くなって、それを男性陣はいい具合に勘違いしてくれて『メイサは、何ひとつ文句を言わない』と(笑)。途中からみんな、私のことを『姫』と呼んでくれるようになって、『しめしめ』と思ってました(笑)」。
アニメシリーズを彷彿とさせるルパン(小栗旬)と不二子の2人のコミカルなシーンは、不二子のセクシーな魅力の見せどころでもある。黒木さんは「好きなシーンのひとつになった」と笑顔を見せる。
「パンツ一丁のルパンが不二子に飛びかかっていくようなシーンは、(アニメで)みなさんの印象にも残っているおなじみのところですよね。今回の映画ではあまり多くは描かれない部分だったので、その分、なおさら大事にしたいと思ってました。不二子の部屋で2人きりでダンスして、アクション…というシーンですが、実は、撮影に入ってわりとすぐだったんです。『小栗さんとの距離を縮めなきゃ』という思いもありましたが、小栗さんがすごくスマートにリードしてくださいました」。
プレッシャーや不安があっても、峰不二子という女でいる限りはそんな弱気や迷いを微塵も感じさせずに堂々と振る舞わねばならない。峰不二子を演じる自信や手応えを掴んだ瞬間は? という問いへの答えにも、彼女なりのアプローチの跡が垣間見える。
「逆にと言いますか、『これでいいのかな?』と思わないようにしてましたね。また現場に入ると小栗さんが、絶妙にアニメのルパンを匂わせつつも、実写の“小栗版”ルパンを成立させてるんです。そういうのを見て、変に考え過ぎずに身を任せられたというか、本当に違うことをやったら、監督なり共演者のみなさんなりがちゃんと言ってくれるはずだと信頼もしていたので、思う通りにやらせてもらいました」。
つい忘れてしまいそうになるが、彼女は一児の母である。2012年の出産後、本作を含め、以前にも増して次々と挑戦的な作品、役柄へと臨んでいるように見える。
「少しお休みをいただいた後でも、こうしていろんなことにチャレンジさせていただく機会をいただけるのはありがたいですね。以前は、ありがたいことではあるんですが、映画やドラマ、舞台と同時進行でいくつもの作品を詰め込むことが多かったんですが、いまは1本ずつに集中して臨ませていただいてるので、その分、目の前の1本により強い思いで打ち込んでいるし、やりがいを感じています」。
挑戦を続けてこそ、黒木メイサは美しく輝く。
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