【インタビュー】クリント・イーストウッドの息子が語る、父と作る“映画音楽”
ジャズ・ベーシストとして活躍するカイル・イーストウッドは、アメリカを代表する名優にして名監督、さらにジャズファンとしても高名なクリント・イーストウッドを父に持ち、精悍なルックスも譲り受けたサラブレッド。
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「ピアノを始めたのは7~8歳のときで、父に教わっていたんだ。その後、『Honkytonk Man(センチメンタル・アドベンチャー)』に出演することになってギターを覚えた。ベースにたどり着いたのはその後なんだけれど、なぜベースだったのかその理由は僕自身も分からなくて。ただ、ベースがしっくりきたんだよね。そして、17~18歳の頃に仕事として追求するなら“音楽だ”と、この道を選んだ。両親ともに音楽が好きで、楽器も演奏する人たちだったらから応援はしてくれた。と同時に、やるんだったら本気でやれとも言われたよ(笑)」。
幼い頃から音楽に触れ、現在は仕事として音楽の世界に生きる彼にとって、今回の映画『ジャージー・ボーイズ』で描かれる「ザ・フォー・シーズンズ」はどういう存在だったのだろうか。
「昔からジャズを始めR&Bやポップス、50~60年代のものをよく聴いていたこともあって、とりわけ僕自身が生まれる前の音楽が好きなんだ。もちろん、『ザ・フォー・シーズンズ』も好きだよ。『Oh, What A Night』なんかは、子どもの頃、ラジオから流れていたのをよく覚えている。だから、父が『ザ・フォー・シーズンズ』を映画化すると聞いて、この映画はきっと面白いものになるだろうと思ったし、『ザ・フォー・シーズンズ』というバンドが結成される様子やミュージシャンとしてのキャリアがスタートするところから始まる物語にも興味を持ったんだ」。
映画の歌曲作曲の中心になっているのは、「ザ・フォー・シーズンズ」のメンバーであり、数々の大ヒット曲を世に送り出したソングライターでもあるボブ・ゴーディオ。そのなかで、カイルは「よりドラマティックにシーンを盛り上げるための音楽を担当した」と語る。
「楽曲自体はすでに作られていたし、ボブも含めて『ザ・フォー・シーズンズ』の音楽が基盤になっていて僕はそこには関わっていないけれど、映画の最初と最後に出てくる『Oh, What A Night(あのすばらしき夜)』はホーンとストリングスを加えてアレンジしているんだ。映画音楽の仕事は、映画のなかに綴られている感情を音楽で伝えるということではあるけれど、大袈裟なことをしたくないなとも思っている。父は“過度なものは必要ない”という考え方だからね。なおさら音楽で感情を操作してしまうことはしたくないと思った。今回の自分の役割としては、『ザ・フォー・シーズンズ』のすでにある曲からヒントをもらい、それを加味したような曲を入れて繋いでいくことだった」。映画に寄り添う音楽という形は、そのまま父を支える息子という形に重なってくる。
映画音楽に携わってはいるものの、現在のカイル・イーストウッドはジャズ・ベーシストとしての活動が中心。『ジャージー・ボーイズ』公開の少し前には、ブルーノート東京でライヴを行っている。ステージ上のミュージシャンとしてのカイルと映画音楽などのコンポーザーとしてのカイルと、同じ音楽でも取り組み方は「ぜんぜん違うんだ」と言い、異なる2つの音楽の在り方を説明する。
「ジャズは何でも好きなことができる自由な音楽で、ライヴではほかのミュージシャンとのインタラクションを楽しみながら毎晩異なる演奏をするという即興の要素もある。瞬間に生まれる音楽を楽しんでいるんだ。対して映画音楽はピアノの前に座ってああでもないこうでもないと作ったものを練りに練って、編集をして、最終的にはきちんとハマるところに持って行く。まったく違う作業ではあるけれど、それぞれにやり甲斐がある。どちらも楽しい」。そして、その両方の音楽を形成する大きな要素となっているひとつが、パリの街だという。
「2002年に転住して、いまもパリに住んでいるよ。年間、かなりの日数でヨーロッパツアーに出ていることもあって、基地としてもパリはとてもいい位置なんだ。しかも、フランスに限らずヨーロッパ全体に言えることだけれど、世界各地からさまざまなミュージシャンが集まっていて、彼らから受ける影響はとても大きい。いろんな人たち、異文化を持った人たちとプレイすることによって、こちらのプレイも変化していく。すごく勉強になる。ただ、僕はパリ、父はカリフォルニアだから、会いたいと思ったときになかなか会えないのが寂しくもあるけどね…。でも、今回の来日の前にカリフォルニアに立ち寄って父と母に会ったし、帰りもカリフォルニアに寄る予定なんだ」。
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■撮影:ブルーノート東京 Bar BACKYARD
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