【シネマモード】“ギャップ”で掴まれた心、その先に感じるものは…『きっと、星のせいじゃない。』
世の中には、自分が勝手にイメージしていることと現実との間にギャップがあったということは多いものです。そのギャップはネガティブなショックを与えもすれば、忘れられない素晴らしいインパクトを残すことも。
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主人公は、末期ガンの女の子、ヘイゼル・グレース。制限の多い、退屈な日々を送っていました。そんなある日、ガン患者の会に出席した彼女は、一人の素敵な男の子、ガスに出会います。同じ苦しみや不安を抱える二人は、お互いに共感を覚え、素顔のままでいられることに喜びを見出し、急速に接近していくのです。
患者ならではの本音を吐きだし、ときに笑い合う様子からわかるのは、私たちにはなかなか知ることができなかった、ストレスの正体。“病”そのものだけでなく、病を理由に気を使われる寂しさや、人々が寄せる同情が引き起こすやるせなさが、大きな理由なのかもしれません。普通でいたいというごく当たり前の願いが、二人をより強く結びつけたのでしょう。互いを腫物に触るように扱うのではなく、対等に接することができることが何よりも嬉しかったのかも。病を抱えているということ以外は、ごく普通のティーンエイジャーのカップルなのですから。
もしかすると、本作の魅力は“普通”であることかもしれません。ガンに侵された余命わずかな者同士の組み合わせを、先入観なく普通に描くのは至難の業。しかも多くの観客は、同情をひくようなエピソードや、私たちがイメージするガン患者の日常などが描かれていると思って映画を観るはず。ところが、そこには驚くほどの明るさや羨ましくなるほどの希望さえある。それを観客がいくら意外に思おうが、これこそまさに原作者が実際に見聞きした、ガン患者たちの普通で愛おしい日々。困難の中にあっても普通に笑い泣く日常があるということを、コミカルなタッチも織り交ぜながら伝えてくれるという意外さは、本作の魅力のひとつなのです。
普通と言えば、主人公たちのファッションもごく普通。とってもスタイリッシュというわけでもなく、どこにでもいそうなアメリカの男女のカジュアルスタイルが披露されています。デニム、Tシャツ、スウェット、コンバースのハイカットにUGGブーツ…。ところが、キュートなこのカップルは、大好きな作家の招待でオランダ・アムステルダムに行ったとき、素敵なギャップを見せてくれます。
二人は最高にロマンティックなディナーを体験するのですが、そこで彼らが見せたのは若々しい中にも、フォーマル感を出したスタイル。ガスはスウェットからスーツへ。ヘイゼルはデニムからワンピースへ。いつもカジュアルなガールフレンドがおしゃれしたときに、ボーイフレンドがはっと息を飲み、目を細めるというシーンは、恋愛映画では定番ですが、やはり女性としてはキュンとしてしまうのです。
ここぞというときにも、ばっちり決められない人って、男性でも女性でもかなり野暮。そんな相手とデートするのは、興ざめですからね。いつもは素顔を見せていても、ここぞというときはばっちり決める。そのギャップは、かなりポイントが高いのです。
ギャップを上手く操りつつ、私たちの心に何かを残してくれる本作。その何かが、あなたにとって大切なものとなりますように。
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