健さん主演で温めていた…降旗康男監督、幻の新作企画を明かす
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015」で2月20日(金)、昨年亡くなった高倉健を偲んで、北海道で撮影された主演映画『鉄道員(ぽっぽや)』が上映され、同作の監督を務めた降旗康男が上映後のトークに出席。
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『鉄道員(ぽっぽや)』は北海道南富良野の駅で撮影され、1999年に公開。日本アカデミー賞「最優秀作品賞」「主演男優賞」などに輝いた。雪の日も、ひとり娘が亡くなった日も、愛する妻が息を引き取った日もホームに立ち続けた一本気な駅員のドラマをファンタジーを交えて描き出した作品。
降旗監督は公開当時、本作が“癒し”として受け止められたと語り「2000年前後にグローバリゼーションが日本を覆う中で、そこから取り残された男の寂しさを思って作りました」と語る。
この日のトークにはプロデュースを務めた坂上順も出席。坂上氏によると、当初は健さんは本作への参加に乗り気ではなかったが、苦楽を共にしてきた東映のスタッフ陣が、映画の主人公・乙松同様に定年退職を控え、高倉さんとの最後の仕事を熱望していることを知り「最後に東映東京撮影所のスタッフとやろうじゃないか」と引き受けたという。
坂上氏は「“パーフェクト”と言うと監督は嫌がると思うけど、どのシーンもどのカットも計算というよりも誰かの力でできたんじゃないかと感じる。プロデュースとは『作る』という意味ですが、『授かった』と感じた」と語る。
劇中で使われている楽曲「テネシーワルツ」は高倉さんの元妻であり、すでに当時亡くなっていた江利チエミの代表曲。当初、高倉さんは「自分にとって『テネシーワルツ』は特別」、「テネシーワルツじゃ(思いが強すぎて)芝居できない」と語っていたそうだが、降旗監督は「『テネシーワルツ』しかない」と決意し高倉さんを説得。撮影現場の駅のホームで「僕にとって、あるいは健さんにとってこれが最後の作品になるかもしれない。だからいいじゃないか。個人的なことが入ってるけど、であるが故に余計にいいんじゃないか? 個人的な感情は押し殺してやりましょうと言いました」と健さんと2人で交わした会話を明かした。
高倉さんとは降旗監督が助監督だった頃からの付き合いで20本もの作品を共に送りだしてきた。だが、作品や企画について話をするときも「世間話の中からお互いに言いたいことをくみ取る、まどろっこしい関係だった」とふり返る。
『鉄道員(ぽっぽや)』の後も『ホタル』、そして高倉さんの遺作となった『あなたへ』でも監督と主演俳優として現場を共にしたが、その後も新作の企画を温めていたそう。「去年、『来年の3月には撮影できるのではないか?』と本を作っていましたが、ダメでしたね。いつもの世間話で『あと2本はいけるかな?』『1本がせいぜいでしょ』などと会話していたのですが…」と無念をにじませる。
ちなみに、その幻の企画だが「健さんが寒いところより温かいところがいいと言って(笑)、前作(『あなたへ』)は長崎の平戸でしたが、今回も(九州の)阿蘇山を中心に。テーマは(前作と)同じで、人間はどうやって歳をとっていったらいいか? と考えていただけるといいなと思って作っていました」とその内容を明かした。
改めて健さんとの仕事について「一緒の方向を歩んでいるなと思いつつ前進していたつもり」と語り「いつも『健さんは僕のアイドル』と言ってましたが、アイドルがいなくなってどうなるか分かりませんが、僕一人で最後の作品を1本ずつ撮っていけたらいいなと思います」と新作への意欲を口にし、客席からは期待を込めた熱い拍手がわき起こった。
「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015」は2月23日(月)まで開催中。
《シネマカフェ編集部》
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