【MOVIEブログ】2015カンヌ映画祭 Day8
20日、水曜日。映画祭はまだまだ後半戦に入ったばかりなのに、マスコミ以外の映画関係者は続々帰国を始めているので、ちょっと寂しい…。
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本日も8時半の上映からスタート。「批評家週間」の『Mediterranea 』(写真)という作品で、監督はアフリカ系イタリア人の新人。アフリカのブルキナ・ファソからイタリアに密入国を図った者たちのもがきを描く「越境もの」あるいは「(不法)移民もの」で、現代ヨーロッパで頻繁に描かれるテーマだ。
確かに危険を冒して国境や海を渡る冒頭は既視感を拭えないのだけれど、主人公の魅力に気づくにつれて映画に引き込まれる。必死の思いで辿り着いたイタリアの地でオレンジの収穫の仕事にありつき、真面目に仕事に取り組むことで現状を打破しようとする主人公の姿勢には、監督の希望が込められているに違いない。
もちろん、現実の壁は厚く、思った通りにはいかない。忍耐の果ての爆発が説得力を持つ。絶望と希望が入り混じったエンディングもいい。きちんとかけるべきところにお金もかかっており、どうしてこのような作品を新人が作ることが出来るのか。国際的な新人育成プログラムを確実に経てきているはずであり、日本人にとしては学ぶことが多い。
上映終わり、10時半。11時から13時まで4件ミーティング。もうマーケット会場は閑散としていて、正式には金曜日まで開催しているものの、事実上は既に終了の模様。
上映会場に移動して、サンドイッチを食べながら列に並び、14時からコンペのフランス映画で『Marguerite and Julien』へ。監督は『私たちの宣戦布告』のヴァレリー・ドンゼリ。とても楽しみな監督なのだけれど、昨日の業界誌に載った批評が意外に悪かったために心配を抱えながら見てみると、んー、やはりダメだった…。
16世紀の王政時代を背景にした、兄妹の禁断の愛の物語。時代劇に現代的要素を自由に取り入れる(自動車やラジオやヘリコプターが登場)スタイルが特徴であるはずなのだけれど、「大胆な遊び心」というよりは「ああ、監督好き勝手にやっちゃったなあ」という痛い感じが先行して、意図が空回りする。仕掛けに効果がないとなると、兄妹の禁断の愛という物語にあまりに何のヒネリもないので、映画としては見所が無くなってしまった。残念。
いや、残念だろうがなんだろうが、見られればそれだけでありがたい。トホホだった昨日に比べたら、格段に幸せです。
18時半からのコンペの入場券を入手していたので、いったん宿に戻り、着替えて蝶ネクタイを締め、メイン会場に17時くらいから並び、割り当てられているブロックの中では最良の席を確保し、やれやれ。見るのは、待望のパオロ・ソレンティーノ監督新作『YOUTH』。そして、事前の高い期待をゆうに上回る圧巻の素晴らしさだった!
スイスの超高級リゾートホテルを舞台に、引退した音楽家と、新作の脚本に取り組むベテラン映画監督との友情を軸にして、人生の意味を問うていくドラマ。そのドラマを、甘美でカタルシスに満ちた音楽と映像が包んでいく。マイケル・ケインとハーヴェイ・カイテルの奇跡の競演。至福の映画体験。 ソレンティーノの圧倒的なイマジネーションに体中の細胞が震える。圧巻。
1本も見られなかった昨日とはうって変わり、本日は次の21時半も引き続きコンペ。ジャ・ジャンクー監督新作『Mountains May Depart』(英題)。三部構成の展開で、冒頭の三角関係の描写にいささか乗り切れないまま見続けていると、やがてジャ・ジャンクーのさすがの仕掛けとダイナミズムに持って行かれる。さすがだ。
悪い日の後には良い日が来る、というのは映画祭の経験則だけれども、その通りの一日になりました。本日もそろそろ2時を回る。ダウンです。
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