【シネマVOYAGE】建物が語りかける不思議体験…『もしも建物が話せたら』
建物のドキュメンタリーというと、その建物はどうやって出来たのかとか、有名な建築家について語られているとか、でもこのジャンルにそれほど興味を持っていない人に…
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そんな中、とても面白い映画と出会いました。『もしも建物が話せたら』は6つの建築についてのオムニバス・ドキュメンタリー。「面白い」理由は6つの建物を“擬人化”していることです。その建物がどれだけ素晴らしいか、どれだけ美しいか、どんなきっかけで立てられたのか、どんな人がそこに生きているのか──を建物“自体”が語りかけてくる。とても不思議な体験です。この映画はトータルで165分ありますが、眠くなるどころかもの凄い興味を抱かせてもらいました。
6つの作品で取り上げている建物の種類も国も監督も異なる、そういう面白さもあります。最初に登場するのはドイツの「ベルリン・フィルハーモニー」(ヴィム・ヴェンダース監督)。大ホールでの演奏シーンももちろん描かれますが、それもやはり建物から見た描かれ方。この1つ目の作品によって観客は、もしかすると本当に建物には意思があって、人間と同じように何かを感じて生きているんじゃないかと思わせてくれる。ですからその後に続く5つの作品は、彼らに会いにいく旅のようでもあります。
ドイツのベルリンからロシアの国立図書館へ、ロシアからノルウェーのハルデン刑務所へ、そしてアメリカ・サンディエゴのソーク研究所、再びノルウェーに戻りオスロのオペラハウス、最後はフランスのパリにあるポンピドゥー・センターをめぐる旅です。中でも興味深かったのは、ハルデン刑務所(マイケル・マドセン監督)とソーク研究所(ロバート・レッドフォード監督)。観光ではなかなか訪れることのできない建物に秘められた、その建物が担う役割と影響力に驚かされます。
研究所と刑務所は難しいですが、いつか彼らのいる街を訪れ、彼らがどんなふうに語りかけてくるのか会話をしてみたと思ってしまう──。『もしも建物が話せたら』は建物に対する概念を変えてくれる、想像力を膨らませてくれる、出会ったことのないドキュメンタリーでした。
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