『オマールの壁』アダム・バクリ、“壁”越えたイケメン俳優の目標は“スパイダーマン”!?
あのマドンナが「観るべき!」と絶賛した『オマールの壁』が、4月16日(土)より公開され、初来日を果たした主演俳優アダム・バクリが
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本作は、分離壁をよじのぼっては、壁の向こう側に住む恋人のもとに通っていた真面目なパン職人のオマールが、イスラエル兵殺害容疑で秘密警察より拷問を受け、一生囚われの身になるか、仲間を裏切ってスパイになるか、ぎりぎりの二者択一を迫られるという物語。パレスチナのいまを生き抜く若者たちの日々をサスペンスフルに描き、「第86回アカデミー賞」外国語映画賞にノミネートされた。
坊主頭でパン職人を演じた劇中のイメージから一転、長めのカールした髪をまとめたヘアスタイルで登場したアダム・バクリは、今回が初来日。聞き手の現代アラブ文学者の岡真理から、「観客のオマールのイメージを壊したくない、と帽子を被っていたんですが、いまのカールした素敵なヘアのアダムさんをみなさんにみてもらいたいと思って」と紹介されると、「撮影から3年経っているから」と笑顔を見せ、ステージ上から満員の会場に感謝の言葉を述べた。
現在27歳のバクリは、本作が長編映画デビュー。この映画への参加について、「この作品は僕を変えた。出演できた経験はこれからも残ると思う。いまは観客としてこの作品を観ることができる」と感慨深げに回想。「初めてスクリーンで作品を観たときは緊張していて、自分の演技しかみていなかったけれど、とてもエモーショナルな体験だった。2回目にカンヌ国際映画祭で観たときも、客席で父(俳優のムハンマド・バクリ)と兄が観ていたので、震えていた。感想は直接聞かなかったけれど、観終わった後の彼らの感動した目を見て、合格点をもらえたと確信した」と述懐した。
イスラエル出身のパレスチナ人で、現在はニューヨークを拠点に活動するバクリは、パレスチナの市井の人々の暮らしを描く本作に「大きな責任を感じた」と言う。「主人公のオマールが経験したことを忠実に表現することが大切で、自分が経験しているように表現することが大事だと思った。この映画自体が、そしてこの壁自体がパレスチナの占領の暴力を象徴している」と、撮影時の心境を吐露。
実際に分離壁を前にしての撮影についても、「それまでも壁は遠くから見たことがあったけれど、映画を撮影したときに初めて近くで見て、パレスチナの葛藤を象徴しているようで心を揺さぶられた。太陽が隠れてしまうほどの大きさに圧倒された」と強烈なインスピレーションを受けたことを明かした。
また、分離壁を乗り越えたり、追手から逃れるために街中を駆けたりするなど、本作でのアクション・シーンを岡さんが絶賛すると、「次は『スパイダーマン』とか『スーパーマン』いいですね(笑)」とアクション俳優への意欲ものぞかせ、「いろんな役に挑戦してみたいのでオープンですよ。今回もトレーナーと一緒にトレーニングしましたが、それでも危険なシーンはプロデューサーはやらせてもらえなかった。壁を登るシーンも準備していたけれど、途中までしかのぼれず、あとはスタントに任せなければいけなかった。あれはサーカスの団員しかできないですね」と応じていた。
さらに、岡さんが「占領の暴力を象徴的に描いている。何度も繰り返し観ると、監督が込めた意味が見えてくる。占領下を知らない私たちもその痛みを知ることができた」と分析すると、「アブ・アサド監督の細やかなメッセージがあちこちにちりばめられていて、観れば観るほど微妙なニュアンスがみてとれる作品だと思う」とパクリも同意。そして「ラストシーンの意味など、観客の解釈にまかせるところが素晴らしいところだと思う」と、観た人それぞれの感想に委ねる点が本作の魅力であることを語ってくれた。
最後に、「日本の方々とパレスチナの人々は親切で暖かくて寛容、という共通点がある」と、緊迫の劇中とはまるで違う、爽やかな笑顔で目を輝かせていたバクリ。今度はもしかしたら、“アクション俳優”として来日を果たしてくれるかもしれない。
『オマールの壁』は角川シネマ新宿、渋谷アップリンクほか全国にて公開中。
《シネマカフェ編集部》
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