『ファインディング・ドリー』の世界ができるまで
シネマカフェが実施した現地取材レポート第5弾では、『ファインディング・ドリー』の舞台のデザインに関わった2人のアーティストのインタビューをお届けする。
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海の中の生き物たちの活躍を描いた『ファインディング・ニモ』の待望の続編として公開中の『ファインディング・ドリー』で、セット・アートディレクターを担当したドナ・シャンクがそう語るように、アニメーションの世界では、キャラクターたちが生活を営む世界そのものを生み出さなくてはいけない。これまでに、様々な人気キャラクターを生み出してきたディズニー/ピクサーだが、それらが生き生きとストーリーの中で動き回る姿に私たち観客が夢中になれるのは、美しくデザインされた背景やセットの存在があってのことなのだ。
シネマカフェが実施した現地取材レポート第5弾では、『ファインディング・ドリー』の舞台のデザインに関わった2人のアーティストのインタビューをお届けする。
本作で、映画の中の世界の撮影セット及び周辺環境を開発していくセット・アートディレクターを務めたドン・シャンクは、TVアニメの製作を経て、フリーランスのアーティストして長編作品『モンスターズ・インク』『Mr.インクレディブル』のデザイン開発に携わり、その後2004年よりピクサーに所属。引き続きデザイン開発班のアーティスト及びアートディレクターなどを務め、アカデミー賞受賞作『カールじいさんの空飛ぶ家』及び『インサイド・ヘッド』ではセットを担当した。
シェーディング・リードを担当したロナ・リューは、2011年に美術部門におけるスケッチ&シェーディングアーティストとしてピクサー・アニメーション・スタジオでのキャリアをスタート。『アーロと少年』や『ファインディング・ドリー』などの作品に関わり、主にキャラクターや風景、小道具の色付けやテクスチャーのデザインを担当した。10歳の時にカリフォルニアに引っ越してきたという中国生まれのロナは、小さい頃からディズニー映画のファンだったという。
「これから、『ファインディング・ドリー』の世界をデザインすることについて少しお話ししましょう」と、まずはドンがプレゼンテーションを始める。彼の仕事は、リサーチを元にコンセプトアートを描き、それを物語とカメラワークに合わせて洗練させていくことだ。
前回ミズダコのキャラクター、ハンクが生まれる過程をご紹介したが、今回のセット作成においても同様に、制作のはじめには緻密なリサーチが実施されたという。「僕らがリサーチ旅行に行ったとき、何千という写真を撮りました。特定の場所にだけにある、独自の、本物のディテールを、出来るだけ集めようとしたからです」。ここでも、モントレーベイ水族館の協力のもと、ケルプの森や人工水槽など様々な写真や映像素材を用意したという。スクリーンに映し出された美しいケルプの森の写真を眺めながらドンは話す。「ほとんど抽象画のようですね」。
その後、それらのリサーチをもとに、コンセプト画が作成される。本作のように規模の大きい作品の場合は、いくつかの分野に分けた制作が行なわれるようで、今回は、マーリンやニモたちが暮らすサンゴ礁をはじめ、魚たちにとって恐ろしいところでもある外洋の空間、ドリーたちが冒険していく中で訪れるケルプ(海藻)の森、そしてドリーがハンクと出会うことになる海洋生物研究所の4つにカテゴライズされて制作が進められた。取材陣が眺めるスクリーンには、プロダクション・デザイナーが作成したそれらの場面を描いた美しいグラフィックが映し出された。
それらのグラフィック画を元に、アーティストたちは「モデル・パケット」と呼ばれる、作品の中での舞台セットを作成する。コンピュータを使って繰り返し同じ背景が使われたような仕上がりにならないためには、一つのセットに対して、様々なバリエーションが作成されるのだ。「僕らは、ただどういうふうに見えるものになるかとか、それらをどのように作るかとか、どんな色にするかということを考えるだけじゃなくて、映画全体における、アーティスティックな影響を考えるということです」。そうドンが語るように、ディズニー/ピクサーでは、その空間を生きるキャラクターたちとの感情的な結びつきや、実際にストーリーの展開によってセットに変化を加えるという。「たとえば、ドリーがケルプの森で、水面に向かっていくとき、近づいていくにつれて、もっと希望に満ちてくるように感じたいわけです。多分、彼女は、彼女の疑問に対する答えを見つけようとしているんだ、とね」。
さらに、アーティストたちは様々なディテールを描くことにも決して手を抜かない。海洋生物研究所にける非常口のサインや、排水溝、天井、さらには、キャラクターの視点から見た世界など、ありとあらゆる細部にまで注意を払っていく。「たとえば、ここで働いている人々は、あの小さなフックに、ホースをかけたりします。そういう小さなディテールを探しているんです。出来る限りこういったアイディアをたくさん集めて、信ぴょう性があって、生き生きと感じさせるようにします」。
《シネマカフェ編集部》
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