ピクサー・アニメーション・スタジオに訪問!チームワークが生まれる職場とは
現地取材レポート第6弾となる今回は、カリフォルニア州エメリービルに位置する、ピクサー・アニメーション・スタジオ訪問記をお届けする。
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レポート第3弾にて、“ブレイントラスト”と呼ばれるディズニー/ピクサー流のストーリー構築方法についてご紹介したが、ストーリー部門のクリエイターたちが複数人集まり、アイデアを出し合うことでストーリーがブラッシュアップされていくその過程は、チームメイト間の共通認識や意思疎通はもちろん、スタッフたちが自由にアイデアを出し合えるフラットな関係性がなければ成立しない方法である。果たして、ピクサー・アニメーション・スタジオのクリエイターたちは、どのようにしてそのチームワークを育んでいるのだろうか?
現地取材レポート第6弾となる今回は、カリフォルニア州エメリービルに位置する、ピクサー・アニメーション・スタジオ訪問記をお届けする。数多くの傑作が生まれたこの場所で、彼・彼女たちのチームワークが育まれる秘密に迫った。
美しいフォントで綴られた大きな「PIXAR」の文字が飾られたゲートをくぐると、右手には豊かな緑が広がっている。左右に生い茂る樹々に囲まれた緑道を歩くと、目に飛び込んでくるのはピクサーの作品の冒頭に必ず登場する「ルクソーJr.」と「ルクソーライト」の巨大オブジェ。それらの向かい側に、ピクサー・アニメーション・スタジオのメインビルディングである「THE STEVE JOBS BUILDING」の美しいガラスの壁面が視界いっぱいに広がる。アップルの社屋をはじめ、アップルストアの建物の美しいガラス張りのデザインにこだわったジョブズの哲学がここにも表れている。「THE STEVE JOBS BUILDING」という名称は、スティーブ・ジョブズが亡くなった2011年の翌年、彼への追悼の意を込めて名付けられた。
建物に入ると、まずその空間的な広がりと開放感に驚かされる。広い天井に、左右に分かれた2階部分のオフィス、1階のカフェテリアや、ショップ、ソファ、カフェテーブルなど、全体の様子が一望できるアトリウムの天井からは光が差し込み、空間全体に風通しの良い雰囲気が感じられる。それぞれ別のプロジェクトで働くスタッフの間でも、1階に訪れば、偶然の対話や自然なコミュニケーションが生まれるような空間としてデザインが施されている。
広々とした1階ラウンジの右手には、ソファスペースにディズニー/ピクサーのグッズショップ、スタッフのメールボックス、テーブルが並べられた休憩スペースが配置され、左手には受付、ビリヤード台やテーブルフットボール台などが並べられたリフレッシュスペースらしき空間、カフェテリアが配置され、奥側の正面のスペースにもゆったりとしたソファが並べられいる。全体としてたっぷりと幅をとった余裕のあるレイアウトであり、リラックスした雰囲気が漂う。また、奥側の左右の上空には幾つものスピーカーが縦に積まれており、仕上がった作品が上映される際などに使用されるようだ。
そして何より目を引くのは、訪れた者たちを明るく出迎えるように並べられたピクサー作品に登場するキャラクターのオブジェの数々。エントランス周辺に並べられた『カーズ』のルイジ&グイド、『インサイドヘッド』のビンボンをはじめ、受付横のレゴブロックでできた『トイ・ストーリー』のウッディ&バズ、ビリヤード台の横には『Mr.インクレディブル』の一家が並び、スタッフたちがキャラクターたちを身近な存在と感じているような印象だ。ほかにも、壁面にかけられた巨大な『ファインディング・ドリー』のコンセプトアート、トイレの表札にこっそり忍ばされたウッディとブルズアイのシルエットなど、至るところに作品の数々が散りばめられ、エントランス横に並べられたトロフィーの数々からは、アニメーションスタジオとして自負と気概が感じられる。
大きく左右に分けられた2階スペースは、それぞれ“右脳”と“左脳”をイメージしされているようで、右脳部分を司るのは、キャラクターやデザインなど芸術的なクリエティブを担当する部門であり、左側の左脳部分には、作品におけるテクニカルなパートに携わるクリエイターたちの仕事場となっているようだ。2階の右脳部分に足を運ぶと、アートスペースのごとく壁一面には『ファインディング・ドリー』のアートワークの数々が飾られていた。キャラクターたちが生まれる原型となったスケッチやコンセプトアートをはじめ、立体のオブジェや美しいグラフィックに至るまで、作品の制作過程における膨大な量のアーカイブが展示されており、まるで美術館の特別展のような佇まいが感じられる。また、これらの展示は新作の公開ごとに入れ替わるようで、これまでの作品分のアートワークがアーカイブされているかと思うと、あまりの贅沢さにため息が出る思いだった。
《シネマカフェ編集部》
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