【独女のたわごとvol.30】『聖杯たちの騎士』セリフが響く…“何でも試して、ためらわないで”
世の中がしあわせオーラに満ちることはとってもイイことですが、知り合いであっても彼らのリア充投稿を浴びすぎると、たださえ寒いこの季節に心も凍てついてしまいそうで…
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「四十を過ぎると身体のあちこち調子が悪くなるよ」と周りから聞いておりますが、まだ四十代の前半だから私は大丈夫、大丈夫~! と余裕のよっちゃん(こういう昭和言葉をつい思い浮かべて、そのまま書いちゃう自分がイヤ…)のつもりでしたが、少し前に10日ほど頭痛が続いてお医者さんに診てもらうことに。「肩こりからくる頭痛だと思いますが、念のため検査しましょう」とMRI検査を受けました。
短時間で終わるCTスキャンと違ってMRIは20~30分かかり、看護師さんから「閉所恐怖症じゃないですか?」「ずっと音がしていますけど、具合が悪くなったらボタンを押してくださいね」と説明を受けて検査室へ。狭い空間が苦手の人が多いようですが──「SF映画に出てくる宇宙船の脱出カプセルみたい!」私のなかでは映画のセットのようで、ちょっと心が躍っちゃったり…(こういう所でも妄想力、全開!)。
そして基本どこでも寝られる女。断続的に音がしているなかで、あの音のなかで何と! ほぼほぼ寝ておりました(信じられない…)。どんだけ神経太いんですか? と自分にびっくりです。アンタって…と。あ、検査結果は異常なし。毎日ストレッチをして肩こりをほぐし、ついでに周囲のしあわせに過剰反応しないように「よしっ、心もほぐそう!」と選んだ映画は『聖杯たちの騎士』です。
主人公はクリスチャン・ベイルの演じる脚本家のリック。映画界で成功を収め華やかな生活を送るリックは、ある日ふとした瞬間に自分の人生は「これでいいのか?」「なにか間違ってはいないか?」と疑問を抱き、いわゆる自分探しの旅に出て、その途中で6人の女性たちと出会います。
映し出される映像はエマニュエル・ルベツキ(※)の撮影なので文句ナシに美しいのですが、監督はテレンス・マリックですから、ストーリーはあるようでなくて、そう簡単に理解できる映画ではありませんでした。ただ、悩める人にはものすごく響くのでないないかと。リックという悩める1人の男が導かれるように1人、また1人…女性と出会い、その出会いと別れが描かれ、彼女たちが放つセリフが響いてくる。
セリフはもちろんリックに向けられたものですが、捉え方によっては観客がそのときに抱えている悩みに向けられているようでもあって。たとえば「何でも試して、ためらわないで」とか「愛は貴重なの、見つけたら迷っちゃダメ」とか。悩める四十路にはグサグサ突き刺さってきました。おそらくしあわせに満ち満ちているときに観たら、リックのことを「グズグズした情けない男だなぁ」とイラッとしたかもしれないですが、悩める者同士は共感するんですね、きっと。そんなこんなで来年こそは「愛をつかみ取るぞ!」と気合いをいれつつ、今宵はここまで。また来年。(text:Elie Furuyama)
※エマニュエル・ルベツキ……2013年『ゼロ・グラビティ』、2014年『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』、2015年『レヴェナント: 蘇えりし者』で、3年連続アカデミー賞撮影賞受賞。
《Elie Furuyama》
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