【インタビュー】『ラ・ラ・ランド』は学生時代に企画していた!映画界の風雲児デイミアン・チャゼル監督
デイミアン・チャゼル監督。彼の名前が世界中に知れ渡ったのは2年前、長編1作目にして大ヒットを記録した『セッション』がはじまりだった…
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『セッション』では名門音大に入学したドラマーと伝説の鬼教師の師弟関係を、『ラ・ラ・ランド』はジャズピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と女優志望のミア(エマ・ストーン)の夢と恋を描いているが、どちらにも共通するのは音楽だ。実は『ラ・ラ・ランド』は『セッション』よりも前に企画していた映画であり、ハーバード大学中にアイデアを思いついたと語る。
「大学生のときにジャズミュージカル『Guy and Madeline on a Park Bench』(2009年/監督・脚本・撮影・編集・製作)を作りましたが、それが私にとっての最初の映画制作でした。そのときの作曲家がジャスティン・ハーウィッツ、それ以降ずっと一緒に仕事をしています。彼と『Guy and Madeline~』を作った後に“またジャズミュージカル映画を作りたいね”と企画したのが『ラ・ラ・ランド』。ですが、あまり商業的な映画ではないという理由でLAのスタジオからはお金が出なかった。そこで、それよりも低予算の『セッション』から撮ろうということになったんです」。
幼い頃からいつか映画を作りたいと興味を持ち続け、中学~高校ではジャズを学びジャズミュージシャンに憧れ、最終的には映画監督の道を歩むことになる。
「ずっと昔からジャズに触れてきたこともあって、個人的にとても意味があるものだから映画にしました。前回の『セッション』はジャズ全体を語っているのではなく特定のビッグバンドの話、自分が演奏してきたジャズの話です。今回の『ラ・ラ・ランド』でセバスチャンがジャズについていろいろと発言しますが、彼に言わせているセリフは必ずしも私自身の見解ではありません。セバスチャンにとってのジャズとは40~50年代の伝統的なジャズ、それ以外はジャズとは認めていないけれど、私自身はそうは思わない。ジャズは時代と共に動いていくもの、いまの時代と折り合っていかなければならないと思っています」。
その言葉からもわかるように、この映画には古き良きものと現代とが素晴らしいバランスで描かれている。チャゼル監督が好きだというミュージカル映画『雨に唄えば』『シェルブールの雨傘』『ロシュフォールの恋人たち』に通じるクラシカルさがありつつも現代らしさがある。さらに、歌・音楽・ダンス・物語、すべてがオリジナルであることもチャゼル監督の凄さだ。
「『セッション』はかなり自伝的な作品ですが、『ラ・ラ・ランド』は直接的な自分の体験談ではないですね。ただ、仕事や恋愛、個人的な人生の浮き沈みを少しずつ物語に散りばめています(笑)。そしてバランスについては──昔は良かったね…と言っている人たちはいますよね。絵描きでいうとルネッサンス時代が一番よかったとか、フィルムメイカーでいうと40~50年代のLAが最高だったとか、そうやってある特定の時代を理想化してしまっている人はいますが、僕にとって大事なのは、いまの時代に通じるものを作ること。ですからこの『ラ・ラ・ランド』に関して言うと、クラシカルな映画といまの映画、昔のLAといまのLA、昔の音楽といまの音楽…そういったバランスで撮りたいと思ったんです。もしもそのバランスが必要ないのであれば、時代劇として年代を設定して映画を作ればいいわけですから…。40~50年代の映画のプリズムを通して、現在のLAを描きたかったんです」。
《text:Rie Shintani/photo:Nahoko Suzuki》
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