「最初に結婚詐欺師と聞いたときは、結婚詐欺師か…どうなるんだろうな…ってドキドキしました。犯罪者のカテゴリーだと思うので、もちろん『真似してはいけません』という注釈が入るキャラクターだと思っていますけれど」。そう言い終わると、口角を上げてにっこり微笑む。この笑顔を向けられたら、劇中で次々と古海に陥落した女性たちのように、骨抜きになるのもわかってしまう、気がする。
『結婚』は、直木賞作家・井上荒野による同名長編小説の映画化。都会のキャリアウーマン、市役所で働く真面目な女、家具店の販売員など…実に様々なタイプの女性を翻弄しては結婚をちらつかせ、心と金銭を奪った段階で姿を消す。愛し合った時間、通じ合えたと思った言葉たちは全部うそだったのか―狐につままれたような気になる、まさに結婚詐欺師の常套手段を華麗にやってみせる古海。彼がそうしなければ生きていけない事情は何なのか。波紋を呼びそうな展開が、観る者を刺激する。
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結婚詐欺師は一般的な職業ではないため、取材をすることもできず、想像力をかきたてる必要があった。手に入ったと思った瞬間に忽然と姿を消してしまう古海を表現するため、「ひとつひとつにシンボルを作り上げていき、メタファーをたくさん集約させていく感じ」で、作っていったというディーンさん。衣装や小物、所作など、こだわりが散りばめられている。「例えば、つかもうとするとスルッといってしまう感じが、生地のテクスチャーでも表現できたらいいなと思い、黒のロングコートを選びました。ほかにも、古海のジェスチャーがほしいと思い、髪をなでつけている、髪を押さえつけるところをシンボリックに使おうとしました。髪をなでる仕草を後ろから撮ってもらうカットで、情緒を植え付けられるところまでやりたかったんです」。
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