そんなふうに映画が当たり前のように作られて、当たり前のように鑑賞できる現代だが、そもそも映画はいつ作られたのか、誰が作ったのか? フランスのリュミエール兄弟が“映画の父”であることは知っていたとしても、彼らがどんな映画を作ったのかは意外と知らないのではないだろうか。『リュミエール!』は、映画のルーツを旅する映画だ。
この映画で何が観られるのか、どんな旅ができるのか──それは、ルイ&オーギュスト・リュミエール兄弟が発明したシネマトグラフで撮影した映画108本!
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シネマトグラフとは、動く写真を理想とし、撮影し、現像し、それを上映できる画期的な装置。リュミエール兄弟がシネマトグラフを発明する以前に、アメリカのトーマス・A・エジソンがキネトスコープを発明しているが、キネトスコープは覗き式で1台に1人しか観ることができなかった。それを映写式にしたのがシネマトグラフだ。
本作では、リュミエール兄弟が1895年から1905年にかけて製作した1,422本のシネマトグラフ作品の中から、厳選された108本を観ることができる。その数に驚くかもしれないが、1本は約50秒、90分の旅だ。その50秒の世界がどれも素晴らしい。
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リュミエール工場の門から従業員たちが次々と出てくる『工場の出口』、水撒きをしている大人に子どもがいたずらを仕掛ける『水を撒かれた撒水夫』、赤ん坊を中央にして夫婦が食事をする『赤ん坊の食事』など、舞台はフランスだけでなく、スイス、イギリス、イタリア、ロシア、アメリカ、エジプト、スペイン、メキシコ、カナダ、ベトナム、カンボジア、日本…世界各国にわたり、その国の人々を撮影している。
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どれも日常の出来事を記録した映画だが、わずか50秒のなかにドラマがあり、躍動感があり、そして構図が美しい。1作品ずつ構図の素晴らしさについての解説があり、まるで映画講座を受けているようで面白い。『リュミエール!』を観ることで、その後に観る映画はもっと面白くなるだろう。(text:Rie Shintani)
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