「きっと、ファンは私が演じたデッカードが(前作のエンディングで)行方をくらましてから30年、一体どこで何をしていたのか、気になっているはずだ。ただ、俳優としては“空白の30年”について、あえて考えたりしなかった。俳優には、もっとやるべきことがあるし、謎は謎のままがいいんじゃないかな? まるで重要なピースが行方不明になった、パズルみたいなものさ。観終わった観客が議論をし、空白を埋めてくれればいい。それが大切だし、『ブレードランナー』という世界にとっても重要なんだ」。
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だからこそ1982年の公開以来、ファンは30年以上にわたって『ブレードランナー』を愛し続け、驚きと感動、そして謎に満ちた待望の新作『ブレードランナー 2049』を熱狂的に受け入れた。
「まさにその通りだと思うね。ユニークな世界観を舞台に、人間/レプリカントの区別を問わず、複雑な内面を抱えるキャラクターが苦悩する。『人間性って何だ?』ってね。この問いかけに、世代や文化の違いはない。特に前作をいち早く評価してくれた日本は、私にとって特別な国だよ。新たな物語もまた、SF映画としての醍醐味はもちろん、厚みのあるヒューマンドラマとして楽しめるし、その点を私自身も気に入っているんだ」。
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人間に代わる労働力として開発された人造人間<レプリカント>は度重なる反乱の末、人類に危険を及ぼす存在として、製造が禁止された。時は流れて2049年。人類と新型レプリカントが共存する米ロサンゼルスで、旧型レプリカントの“排除”に奔走する捜査官のK(ライアン・ゴズリング)は、世界の秩序を壊しかねない巨大な陰謀に巻き込まれる。真実へとつながるカギこそ、ハリソン演じる元凄腕捜査官のデッカードだった。
「撮影が始まる4年くらい前だね。リドリーから『また、デッカードを演じたくないか?』って電話がきたときは、正直『う~ん』って感じだった。まずはシナリオを読ませてくれって(笑)。で、実際届いた草稿を読んで、本当に心が熱くなるくらい感動したんだ。登場人物のエモーショナルな部分が深く掘り下げられていたし、彼らの関係性も興味深かった。映画の言語は、英語でも日本語でもなく、感情だからね。この物語なら、俳優として貢献したい。そう思えたことが、出演を決めた大きな要因だ」。
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メガホンをとったドゥニ・ヴィルヌーヴ監督に対しては、「賛辞するには、言葉が足りない」と全幅の信頼を寄せる。新感覚SF『メッセージ』で世界中を衝撃に包み、かつてスコット監督が手がけるはずだった超大作『デューン/砂の惑星』の再映像化にも取り組む俊英だ。
「ビジュアルで物語を伝える能力の持ち主。『ブレードランナー』という巨大なキャンバスを扱うだけの自信を持っていて、実際“自分の映画”にしてしまったんだから、すごいと思うね。もちろん、前作への敬意を忘れていない。ドゥニと何作かタッグを組んでいる、撮影監督のロジャー・ディーキンスの仕事ぶりもすばらしい。二人とも(指をパチンと鳴らしながら)一瞬の映像が、1000の言葉にも勝ることを熟知しているんだ」。
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テクノロジーの進歩によって、現実世界はどんどん『ブレードランナー』化している。
「環境破壊や貧富の格差など、暗示的なモチーフは確かにたくさん登場する。2049年のロサンゼルスは、急激な気候変動で海抜が上がったせいで、巨大な壁で守られているし、底辺で暮らす人々は遺伝子組み換え植物で、何とか生きながらえている…。でも、どうかな。私自身はあくまで映画の中の話だと捉えているし、予言だとは思わない。繰り返しになるけど、大切なのは、そこに生きる人々の感情のドラマだからね」。
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