【イマ旬!ハリレポ】現地目線!第90回アカデミー賞レース特集~入門編

今年で記念すべき90周年を迎えるアカデミー賞レース。今回の「入門編」では、作品賞候補の声が高い作品の中から、確実にノミネートされそうな厳選5作品を分析してみた。

最新ニュース コラム
『ダンケルク』&『シェイプ・オブ・ウォーター』&『ゲット・アウト』
『ダンケルク』&『シェイプ・オブ・ウォーター』&『ゲット・アウト』 全 12 枚 拡大写真
今年で記念すべき90周年を迎えるアカデミー賞レース。今回の「入門編」では、作品賞候補の声が高い作品の中から、確実にノミネートされそうな厳選5作品を分析してみた。

■確実にノミネートされそうな5作品



『ダンケルク』


まずはクリストファー・ノーラン監督の戦争映画『ダンケルク』。とにかくこの作品はテンションが高い。だが戦争映画でもっとも血糊が少ない映画と言ってもよく、映像とサウンドのみで観客を矢継ぎ早に窮地、また窮地に追い込み、戦地の兵士同様に絶体絶命な気分に追い込んでいくノーラン監督の手腕は凄い。映像も素晴らしくこの作品はノミネートほぼ確実いえる。

『ダンケルク』(c) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.『ダンケルク』(C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』


次に作品賞ノミネート必至と思われるのが、スティーヴン・スピルバーグ監督・主演トム・ハンクス&メリル・ストリープの『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』。実話を基にしたサスペンス・ドラマで、ベトナム戦争激化の当時に、女性経営者のワシントン・ポスト紙が政府の脅迫、出資者の反対、世間の性差別に屈せず、当時の米国政府がいかにアメリカ国民を嘘で操って泥沼化していたベトナム戦争を30年間にも渡って長引かせてきたかを暴露するまでの壮絶な“バトル”が描かれている。現在、トランプ政権で大揺れに揺れているアメリカ、そして様々なセクハラ問題などから女性の社会立場が何かと話題になる最近の世相において、まさにタイムリーな映画で、作品賞候補にノミネートされること請け合いの作品だ。

『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』 (C)Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』(C) Twentieth Century Fox Film Corporation and Storyteller Distribution Co., LLC.

『ゲット・アウト』


そして次のノミネーション確率大の作品は、こちらも世相を反映したユニークなエントリーでホラー映画『ゲット・アウト』。アカデミー賞候補にホラー映画のタイトルが挙がるのは非常に珍しい。アカデミーは「ホラーとSFが嫌い」という定説はいまだ根強いのだが、この『ゲット・アウト』の強みはただのホラーではなく、ここ数年アメリカに吹き荒れている人種問題に、非常に賢い風刺を効かせたストーリーであるという点だ。黒人監督、黒人ライターそして黒人男優主演による本作は、現在ハリウッドで注目されている業界での多様性を具現化している作品ということでも特出している。これまであまりに白人優位で問題になったアカデミーにとって本作をノミネートすることは、心機一転・汚名挽回のいいチャンスとなるだけに候補確率はかなり高い。

『ゲット・アウト』 (C)2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved『ゲット・アウト』(C) 2017 UNIVERSAL STUDIOS All Rights Reserved

『レディ・バード/Lady Bird』(原題)


今年のダークホースで、こちらもノミネーションほぼ確実と思えるのが『レディ・バード/Lady Bird』。これまで女優業中心だったグレタ・ガーウィグの監督デビュー作で、自分がティーンエイジャーだった頃の経験を基に執筆したストーリーとのことで、映画祭などでこの作品をすでに見た人々からはその質の高さに新米監督の作品とは思えないと言う声が上がっているほどの話題作だ。主役クリスティーヌこと“レディ・バード”を若き演技派シアーシャ・ローナン(『ブルックリン』)が演じ、彼女の名演もアカデミー賞主演女優部門でノミネーション間違えなしとの下馬評が高い。

『レディ・バード/Lady Bird』(原題)(C) Getty Images『レディ・バード/Lady Bird』(原題)(C) Getty Images

『シェイプ・オブ・ウォーター』


5本目にご紹介の『シェイプ・オブ・ウォーター』も以前であればアカデミー賞候補になるには少々異色すぎると言われていたかもしれない。日本ではまだ未公開の本作だが、ギレルモ・デル・トロ監督が製作・脚本も兼ねたこの作品は、彼お得意の美しくもダークなファンタジー・ドラマで、謎の人魚男と口のきけない女性とのロマンスを描いている。ひと昔前に人魚姫がトム・ハンクス演じた普通の男性に恋をしてしまう映画『スプラッシュ』を男女逆にしてもっとダークにしたのがこの作品である。口のきけないヒロイン(サラ・ホーキンス)が、愛する人魚を邪悪な科学者から守ろうと、命がけで救出を試みる様には思わずエールを送ってしまう。

『シェイプ・オブ・ウォーター』(原題)(C)2017 Twentieth Century Fox『シェイプ・オブ・ウォーター』(C) 2017 Twentieth Century Fox

■今年のアカデミー賞は女性主人公の作品がポイントに?


今年のアカデミー賞作品部門のノミネーション予想をしていて気がつくことは、女性を主人公にした作品がこれまでになく目立つことだ。2017年はハリウッド映画業界で「セクハラ」に苦しめられた女性被害者たち立ち上がり、権力乱用の大物を次々に暴露していったたことがキッカケで、ある意味で女子パワーの年となった。現在、オンラインでもアカデミー賞レースの上位を走っている上記5作品中、『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』、『レディ・バード』、『シェイプ・オブ・ウォーター』の3作品が女性を主人公にした映画で、これは特筆に値する。

ここ数年において、会員の年齢、性別、人種が多様化したと言われるアカデミーだが、『シェイプ・オブ・ウォーター』のような作品をノミネートしてしまうかもしれない新世代アカデミーには、これまでにはなかった新しい何かを期待できるかもしれない。(text:Akemi K. Tosto)

《text:明美・トスト/Akemi Tosto》

この記事の写真

/

特集

友だち追加