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【シネマモード】「レズビアンではなく、トランスジェンダー」“本当の自分”を伝える自己表現とは

自分の思いがなかなか正しく伝わらないというもどかしさ、誰にでも覚えがあるのではないでしょうか。『アバウト・レイ 16歳の決断』の主人公は、女の子としての自分の身体に違和感を覚える16歳のトランスジェンダーの男の子です。

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『アバウト・レイ 16歳の決断』(C)2015 Big Beach, LLC. All Rights Reserved.
『アバウト・レイ 16歳の決断』(C)2015 Big Beach, LLC. All Rights Reserved. 全 8 枚
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自分の思いがなかなか正しく伝わらないというもどかしさ、誰にでも覚えがあるのではないでしょうか。

『アバウト・レイ 16歳の決断』の主人公は、女の子としての自分の身体に違和感を覚える16歳のトランスジェンダーの男の子です。自分自身に素直に生きるため、身体的にも男の子になろうとホルモン治療を始めたいのに、母親は混乱。しかも、離婚してから何年も会っていない父にも同意のサインをもらう必要があるのです。

『アバウト・レイ 16歳の決断』(C)2015 Big Beach, LLC. All Rights Reserved.
そもそもトランスジェンダーが理解できないレズビアンの祖母は、「レズビアンでいいじゃないの」と言います。当人以外にとって、それほど大きな違いがないと感じられたとしても、当人にはその違いには天と地ほどの違いがあるにもかかわらず。

誕生日にはいつも「男の子になれますように」と願っているレイ。それは、「男に生まれればよかった」とか「男の子になりたい」とは本質的に違います。だって、レイは男の子なのだから。レイという名前も、後から自分で決めました。両親はもっと女の子っぽい響きの名前をつけていたのです。きっと、身体と心に違和感がある者にとって、名前とか服装とか、他者からの異性としての扱いとか、そういったものから生まれるちょっとした傷が、積み重なって大きくなっていくのでしょう。

『アバウト・レイ 16歳の決断』(C)2015 Big Beach, LLC. All Rights Reserved.
レイは男の子らしい服装をしていますが、それは当たりまえのこと。きっと、彼にとって服というのは、私たちが思う以上に大切な体の一部なのでしょう。それは、やるせない状況にある現実を少しでも自分自身の“あたりまえ”に近づけるために必要なもの。彼にとってファッションはもはや、おしゃれや自己表現を超えて、自己実現の手段。それについては、エディ・レッドメイン主演の映画『リリーのすベて』にも詳しく描かれています。

最近は、映画でもTVでもトランスジェンダーが登場する作品が増えてきました。いま、NHKで放映されている『女子的生活』(1月26日金曜日が最終回の第4話目)もそのひとつ。男性として生まれたトランスジェンダーの女子がヒロインです。故郷を離れ、大都市で女性として暮らしているのですが、他者からの心ない(でも何気ない)言動に傷つきながらも、自分の道を歩こうとする姿が清々しく描かれているとても素敵な作品です。主人公ミキを演じる志尊淳の女子っぷりも話題ですが、身体は男性、心は女性というヒロインの世間へのツッコミぶりは、なかなか聞くことのできなかったトランスジェンダーの本音の一端を知る大きなのきっかけにもなっています。

ちょっと前に、ある男女共学の学校が、女子生徒にブレザー×スカートだけでなくブレザー×パンツという選択肢も与えると規則を変えるとの報道がありました。すると各所から、なぜ男子も女子も同様に、ブレザー×スカート、ブレザー×パンツを選べるようにしないのかとの声があがっていました。まだ男子、もしくは男子の身体を持った人がスカートをはくことに違和感を覚える人の方が一般的だからということなのか、そこまで想像が及ばなかったということか。レイやミキの意見も聞いてみたい気がします。

いずれにしろ私たちができることは、当事者たちの声に耳を傾け、対話し、相互理解を深めていくこと。レイを、“男の子になりたがっているボーイッシュな女の子”ではなく、トランスジェンダーなのだと、その違いを正しく知ること。この映画を通して、そのための素敵なきっかけが生まれるといいなと思います。

《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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