【シネマ羅針盤】1年越しのリベンジ果たしたアカデミー賞、90年目で“新たな一歩”踏み出す

第90回アカデミー賞授賞式が3月5日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞の最多4部門に輝いた。

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第90回アカデミー賞(C)Getty Images
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第90回アカデミー賞授賞式が3月5日(日本時間)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催され、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』が作品賞、監督賞、作曲賞、美術賞の最多4部門に輝いた。

■とにかく無事に終わって、良かった…


昨年に引き続き、司会を務めたジミー・キンメルが授賞式の冒頭、「今年は受賞しても、すぐに席を立たないで!」と前回の“悪夢”を皮肉ったが、とにかく無事に終わって、良かった…というのが一番の感想。悪夢の主役であるウォーレン・ベイティ&フェイ・ダナウェイの『俺たちに明日はない』コンビに再び、作品賞のプレゼンターを任せるという演出も笑えたが、封筒を手にしたデル・トロ監督が一瞬、中身を確認する姿がかわいらしかった。


作品賞は『スリー・ビルボード』、監督賞はデル・トロ…という予想も根強かったので、改めて、オスカーの行方を正確に言い当てることの難しさを痛感する結果だった。作品賞と監督賞が一致するのは第87回以来で、2010年代では4度目となる。

ジミー・キンメル&ギレルモ・デル・トロ監督/第90回アカデミー賞(C)Getty Images

■女性、黒人、移民…多様性が生み出したサプライズな結果


こうして1年越しのリベンジを果たしたアカデミー賞だが、主演女優賞に輝いたフランシス・マクドーマンドが「女性の候補者は皆さん、立ち上がって!」と呼びかけた圧巻のスピーチが象徴するように、授賞式では、これまで不利な立場を強いられた女性たちに対し、エールを送る瞬間が何度もあった。


その上で「これからは女性の時代!」という、いかにも男目線で紋切り型のメッセージではなく、女性や黒人、移民といった“多様性”の重要さを、絶妙なバランス感覚で訴えた点を評価したい。黒人差別を題材にした社会派スリラー『ゲット・アウト』が脚本賞を受賞。デル・トロ監督はメキシコ出身だし、長編アニメ賞を受賞した『リメンバー・ミー』もメキシコが舞台になっている。さらに、トランスジェンダーが主人公の『ナチュラルウーマン』(チリ)が外国語映画賞を獲得した快挙も、記憶に留めておきたい。

■原点に立ち返り、映画ファンへの感謝を示した



第90回アカデミー賞(C)Getty Images
今年で90回目の開催を迎えたアカデミー賞が、原点に立ち返り、映画ファンへの感謝を示した点も印象深かった。特に、授賞式の途中にジミー・キンメルをはじめ、アーミー・ハマー、ガル・ガドット、ルピタ・ニョンゴ、アンセル・エルゴート、マーゴット・ロビー、エミリー・ブラント、マーク・ハミル、ギレルモ・デル・トロ監督らが会場を抜け出し、近所のチャイニーズシアターをサプライズ訪問し、スナック類を配る粋な演出はさすが!

劇場ではディズニー映画『A Wrinkle in Time』が上映中だったが、スターの乱入に怒る観客は皆無で、それどころか、自分たちがアカデミー賞受賞式の生中継に映っているシュールな現実に興奮気味だった。やはり、映画は観客がいてこそ成立するもの。そんな当たり前に気づいたアカデミー賞が“新たな一歩”を踏み出した一夜でもあった。

《text:Ryo Uchida》

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