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健康不安説を一蹴、ジェット・リー波乱の半生をプレイバック

先日、一部で報道された近影から健康不安説が流れたジェット・リー。すぐに本人がFacebookの公式アカウントで「僕の健康状態についてみんなが心配してくれていることに感謝します」とまずお礼を述べてから、「僕はすごく元気だし、気分も最高です」とうわさを否定した

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先日、一部で報道された近影から健康不安説が流れたジェット・リー。すぐに本人がFacebookの公式アカウントで「僕の健康状態についてみんなが心配してくれていることに感謝します」とまずお礼を述べてから、「僕はすごく元気だし、気分も最高です」とうわさを否定した。

心配するファンに向けた素早く誠実な対応には、武術家として幼い頃から注目され、映画スターに転身後の活躍、チャリティへの尽力、闘病といった波乱万丈な半生に培われた優れた人間性が見える。

■ジェット・リー、トップスターへの道のり



ジェット・リー-(C)Getty Images
ジェットは1963年4月生まれで、先日55歳の誕生日を迎えたばかり。中国・北京市の出身(遼寧省出身説もある)で、生来の運動神経の良さを生かして8歳から体育学校に入学して中国武術を学んだ。少年時代から武術の親善ツアーで世界各国を周り、中国全国武術大会で5回連続個人総合優勝という偉業を成し遂げ、「中国武術界の至宝」と呼ばれた。1982年に中国・香港合作の『少林寺』(82)主演で映画デビューを果たす。この頃は本名のリー・リンチェイ名義で活躍していた。ダンスのように美しいアクションは、先達のブルース・リーやジャッキー・チェンと一線を画すものだった。また純朴な風貌でカンフー・アイドルとしても人気を博した。

1988年には24歳にして主演作『ファイナル・ファイター 鉄拳英雄』で監督デビューも果たした。だが、出演作に恵まれず低迷が続いた後、1991年、『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』など数多くのヒット作を手がけたツイ・ハーク監督の熱烈なラブコールに応えて『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地黎明』に主演。ジェットの端正かつ流麗なアクションと香港映画のエンターテインメント精神が見事に融合し、映画は大ヒット。同作はシリーズ化されてジェットの代表作となり、彼は一躍トップスターとなった。

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映画会社との契約問題や最初の妻との離婚など、トラブルに見舞われながらも自らの製作会社を設立し、現代劇にも挑戦した。熱心なチベット仏教徒である彼はこの時期、引退して出家を考えたこともあったが、1998年に、『リーサル・ウェポン』シリーズで知られるプロデューサー、ジョエル・シルヴァーに請われて『リーサル・ウェポン4』に出演してハリウッド進出を果たす。

■自身の被災…東日本大震災の義援金贈呈や救援活動に専念


メル・ギブソン演じる主役の無鉄砲な刑事の敵役で、正義の味方を演じ続けてきた彼にとって、その意味でも新境地開拓となった。1999年には10年越しの愛を成就させて女優のニナ・リーと再婚した。実は『グリーン・デスティニー』など大作の数々からオファー、『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』出演のうわさもあったが、妻の妊娠・出産のサポートを優先した。スターとしてのキャリアよりも、人として何を大切にするべきなのかに迷いがない。その信念は、2004年にはモルジブで家族との休暇中にスマトラ沖地震によって発生した津波で被災したことにより、一層強くなった。

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幸い、家族全員無事で九死に一生を得たジェット。このとき、国籍や人種を問わず救援活動に当たる人々の姿に感銘を受け、中国の赤十字と慈善団体「壹基金(One Foundation)」を設立。「1人+1ドル(1元)+1か月=大家族」をスローガンに、1人が毎月1ドルを寄付することで、人類という大きな家族を助けるという発想だ。

ハリウッドで活躍する一方、中国の巨匠、チャン・イーモウ監督と組み、トニー・レオン、マギー・チャン、チャン・ツィイー、盟友のドニー・イェンが揃う豪華キャストの『HERO』(’02)に主演するなど、世界中からオファーが引きも切らない状況でも、彼にとっての最優先事項は、苦しんでいる人たちを救うこと。2008年5月、四川大地震が発生し、5,000万近い被災者が出たときは、1年間映画出演せず救援活動に専念すると発表した。四川省では2013年、2017年にも大地震が発生し、このときも壹基金の迅速な救援活動が報じられた。

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2011年に東日本大震災が発生した際も、「深い悲しみと、不安の中にいる日本の皆さんのことを思い、とても心を痛めています。1日も早く、皆さんに笑顔が戻ることを願っています」とメッセージを発信、「壹基金」から被災者支援の義援金を送った。

■闘病中は俳優業をセーブするも新プロジェクトに励む


休業を挟みながら、アクション・スターの大御所が勢ぞろいする『エクスペンダブル』シリーズ、ジャッキー・チェンと夢のW主演を果たした『ドラゴン・キングダム』(’08)などエンタメ大作に出演しながら、『ダニー・ザ・ドッグ』(’05)や自ら製作も務めた『SPIRIT』(’06)といった主演作は、アクション作でありながら、平和の尊さや人としての矜持というメッセージが込められている。

『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』-(C) EX3 Productions, Inc. All Rights Reserved.
2010年には一切のアクションを封印し、自閉症の息子を男手ひとつで育てる父親を演じた『海洋天堂』が大きな評判を呼んだ。息子が21歳になるまで大切に育ててきた主人公が病に倒れ、余命わずかと宣告される。残された時間を、息子が1人で生きていけるように教えていく父の慈しみ深い表情は、もしかしたらこの役が最もジェット・リーその人に近いのかも、と思わせる。

この頃、自らも体重が激減するなど体調不良に苦しみ、甲状腺機能亢進と診断され、2013年に闘病中であることを公表。2016年に病を克服したと発表したが、今後はチャリティ活動を中心に据えて俳優業はセーブすると宣言している。

世間を騒がせた近影は5月中旬にチベット自治区を訪問した際にファンが撮った写真がネット上に拡散したもの。僧侶のような丸刈り頭でも白髪が目立つのは確かだが、同時期のほかの映像や画像に写る姿は55歳という年齢相応のもの。4月には2020年公開予定の実写版『ムーラン』への出演交渉が最終段階に入ったと報じられてもいる。健康不安説を一蹴したジェットの活躍を楽しみにしたい。

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《冨永由紀》

好きな場所は映画館 冨永由紀

東京都生まれ。幼稚園の頃に映画館で「ロバと王女」やバスター・キートンを見て、映画が好きになり、学生時代に映画祭で通訳アルバイトをきっかけに映画雑誌編集部に入り、その後フリーランスでライター業に。雑誌やウェブ媒体で作品紹介、インタビュー、コラムを執筆。/ 執筆協力「日本映画作品大事典」三省堂 など。

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