※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【MOVIEブログ】2018東京国際映画祭 Day4

28日、日曜日。昨夜4時就寝で8時半起床。薄曇り。気温は昨日より低めだけど、むしろちょうどいいくらいで気持ちいい。

最新ニュース スクープ
注目記事
『愛がなんだ』(c)2018 TIFF
『愛がなんだ』(c)2018 TIFF 全 1 枚
/
拡大写真
28日、日曜日。昨夜4時就寝で8時半起床。薄曇り。気温は昨日より低めだけど、むしろちょうどいいくらいで気持ちいい。

9時15分に事務局入りし、本日の自分の登壇予定と、来場ゲストを入念に確認。それから再見が必要な作品をパソコンで見る。

10時半に劇場へ行き、『月極オトコトモダチ』の上映前舞台挨拶司会へ。穐山茉由監督、そして役者陣の徳永えりさん、橋本淳さん、芦那すみれさん、野崎智子さん、山田佳奈さん、師岡広明さんが登壇。明るく軽やかな面々が揃い、朝にぴったりの爽やかさだ。そして橋本さんと師岡さんは山内ケンジ監督『アット・ザ・テラス』でお招きして以来の再会で嬉しい。師岡さんの抜群ジョークで場内が沸き(さすが)、最高の雰囲気の中上映スタート。

事務局に戻ってパソコンに向かっていると11時半にお弁当到着! 今年の運営チームのお弁当セレクションが本当に素晴らしい。数種類のエスニック弁当の中から迷わずガパオライスをチョイスし、チンして食べたら感涙もののおいしさ!

12時に劇場に向かい、『月極オトコトモダチ』のQ&Aへ。穐山監督の話が分かりやすくて面白い。脚本準備の取材体験談や、密かに施した仕掛けを明かしてくれて、なるほど!と思わず膝を叩く。女性の観客がヒロインの衣装についてとあるコメントをしたところ、客席の女性たちがうんうんと頷く一方で、男性客は一様にあれ、そうだった?という顔をしているのが壇上から見えて最高に面白い。男女の関係に友情は存在するか?という普遍的なテーマに新鮮なアプローチを試み、楽しませながらも様々な感想を許す余地を残すこの作品、やはりうまい!

続けて12時45分からシネマズ内を移動し、スクリーン7でコンペの『ザ・リバー』のQ&A司会。エミール・バイガジン監督のアーティスト気質が存分にうかがえる独特の空気が流れるQ&Aで、とても刺激的だ。34歳とは思えない芸術家の佇まい。前回のQ&Aでは海外を移動しまくっている疲れの色が少し見えたけど、今日はもっとリラックスしているみたいで時おりニヤっと笑う姿がたまらない。

近作では精神の進化を主題としてきたと語り、劇中のカギとなる登場人物に関する解説が深い。隔絶された場所で暮らす兄弟たちの調和を乱す都会から来た少年の存在は、「例えて言えば風である」。「風は室内にカオスをもたらすこともあるが、淀んだ空気を入れかえることもある。破壊と創造。それは神の行いでもある。あるいは悪魔かもしれないが」。若きアーティスト、エミール・バイガジンの創作には今後も大注目していきたい。

劇場を出て、改めて秋の好天の空気を吸って気持ちいい。知り合いにあったので話し込む。あっという間に時間が経ち、14時にシネマズに戻る。コンペの日本映画『愛がなんだ』の上映前舞台挨拶司会へ。

今泉力哉監督、岸井ゆきのさん、若葉竜也さんの3名が登壇。満席のスクリーン7に立つ興奮は何度経験してもたまらない。詰めかけて下さった観客に大感謝。今泉監督と岸井さんとは何度も壇上でご一緒しているのだけど、毎回異なる作品だから毎回違う体験になる。その積み重ねが嬉しい。若葉さんにもっと話を聞きたかったのが唯一の心残りで、フォトコール付き15分ではなんとも時間が足りない。

そして、今泉監督が本作について「個人的なことを描くことが世界を描くことに繋がることもある」と発言なさり、僕が今年のコンペ16作品に通底すると考えてきた「世界と個人の距離を測る作家たち」という見立てに見事に応えて下さった形となり、胸の奥が熱くなる。

事務局に戻り、作品DVDを見直しつつ、一瞬休憩。スケジュールの都合で予定していた司会業が1件キャンセルになったので、突然訪れた空白時間。有効利用しなければと思いつつ、結局あまり何も手につかず、もったいない。そして平穏な時間が訪れると、トラブルの前の静けさではないかと身構えてしまう。映画祭的貧乏性だ。

そういえば、あまりブログに書いたことがないことだけど、映画祭スタッフが詰めている事務局を来場ゲストが訪問してくれることがある。アテンド担当がゲストの了承を得た上で連れてきてくれて、スタッフはみんな一瞬仕事の手を止めて大歓迎するのだけど、普段は映画祭の裏側を見ることがない監督や役者さんたちが逆に大層感激してくれることがある。「数多くの映画祭を訪れているけれど、映画祭が作られる現場を見せてくれる映画祭はトウキョウが唯一で、とても感動した」と昨夜のパーティで某監督に言われて、僕も感激する。

というわけで、本日は16時にフルーツ・チャン監督が事務局に顔を出してくれて、スタッフ一同大拍手!

16時半に劇場に戻り、『愛がなんだ』のQ&A司会。登壇は今泉力哉監督。今泉監督にサシでじっくり片想い論を語ってもらう幸せ。片想いをし続け(られ)ることは幸せなのか残酷なのか。いつまでも話していたいテーマだ。主演の2人をどのような関係として描いたか、その周辺のエピソードを充実させることで逆に主演を際立たせる演出意図、そして食事のシーンの多さの意味、などなど、硬軟取り混ぜた質問が飛び交い、とても充実した時間にドキドキする。

そして、僕から最後にとても気になるシーンについて質問し、その答えに感動して、ぬあー、と唸ってしまった。これは映画が公開されるまで書けないかな。なんと役者とはすごい存在であることか。次回のQ&Aでは俳優陣についてもっと掘り下げて聞いてみよう。そして、僕としては『愛がなんだ』の根幹となる(と思っている)考えについて質問してみたい。この作品が恋愛映画を超えていると僕が感じている点を監督がどう思っているのか、聞いてみたい。観客との貴重なQ&Aの場を、僕の質問を確認する場にしてはいけないので、出しゃばりすぎないようにそっと挿入してみよう…。

続いて17時20分からスプラッシュ部門『漫画誕生』の上映前舞台挨拶司会へ。大木萠監督の新作は志の高い野心作で、心から応援したい作品だ。大木監督、イッセー尾形さん、吉岡睦雄さん、芹澤興人さん、中村無何有さん、瓜生真之助さん、亀岡孝洋さん、福永マリカさん、坂口彩さんが登壇し、豪華で賑やかな舞台挨拶! 僕の司会は舞台挨拶だけなので、次回Q&Aの司会をした際に『漫画誕生』について詳しく書くつもり。

続けて18時から、「ユース部門」出品『ジェリーフィッシュ』のQ&A司会へ。非常にタフで、激しい青春映画。高校生に見て欲しい映画であるけれど、いささかヘヴィーな内容でもある。でも、高校生にはヘヴィーかなと根拠もなく遠慮するよりも、自信を持って見せたい作品を推すべきだと信じ、選んだ次第。実際に若者がどのくらい来てくれたか定かではないのだけど、刺激を受けてもらえたと思いたい…。

ジェームズ・ガードナー監督が作品の舞台となるイギリスの港町の説明をし、不況にあえぐ土地で暮らす人々のリアルを映画に反映したと語ってくれる。15歳のヒロインは、彼自身の物語でもあるという。映画で描かれる状況は現実であるといい、そしてヒロインの生きざまに絶望を重ね、一縷の希望を最後に残す…。ヒロインを演じた女優はBAFTAにノミネートされ、今後の飛躍が期待される存在だ。ああ、もっと『ジェリーフィッシュ』を多くの人に届けたい。

ちなみに、ジェームズ・ガードナー監督(英国)は長身のハンサム青年でとてもかっこいい。昨夜のゲストパーティ後、仲良くなったばかりの『アマンダ』(仏)チーム、『シレンズ・コール』(トルコ)チーム、『テルアビブ・オン・ファイア』(イスラエル/パレスチナ)チームと連れ立ってゴールデン街に繰り出したそうな。素晴らしい! 本当にこういう作品どうしの交流が生まれることが何よりも嬉しい!

Q&Aが終わり、僕はヒルズ内のレストランに向かい、19時開宴の「イスラエル特集」記念パーティに顔を出す。イスラエル大使館の方々、日本の映画関係者、そして特集の監督や俳優たちが集まるパーティ。半分がオープンテラスのレストラン、天気がいいので今夜は最高だ。『テルアビブ・オン・ファイア』を始めイスラエル作品は軒並み好評で、大使館の文化担当官の方も今回の特集をとても喜んで下さる。もちろん、僕もとても嬉しい。マイクを渡され、お礼のスピーチをして、25分ほど滞在して座を辞す。

EXに向かい、19時40分からコンペのイタリア映画『堕ちた希望』の2度目のQ&A司会へ。エドゥアルド監督と、主演のピーナさんが前回に続き登壇。楽屋でにこやかに会談していたエドゥアルド監督は、登壇すると一転して固い表情になり、舞台となる土地と、そこで暮らす人々の苦境を語る。

そして、監督は厳しい状況を描きながら、自分がこうあってほしいという希望を託したと語り、浮ついたところのない、真摯で落ち着いた語り口に僕は心底感動してしまった。確固たる理念と、美学と、実現力を備えた素晴らしい監督だ。そして、本日の上映を見た方に、前回の上映時に監督がエンドクレジット後のシーンについて聞かれた際の回答を共有したい。「寝ている間に誰かが毛布を肩まで引き上げてくれるって、いい希望ですよね」。なんと素敵な答え!

続けて、20時半から21時半まで、来日している海外映画祭のプログラマーと、映画祭に出品している日本映画監督たちを引き合わせるパーティへ。見事にごった返している! 大層な盛り上がりで、ナイス。

21時半から、「TIFFとファンの集い」的な交流会を同僚が中華レストランで企画したので、顔を出してみる。初めての試みなので少人数であったけれども、今後育って行きますように。20分ほどお話しして座を辞す。

22時半から、シネマズに戻り、「イスラエル特集」の作品『靴ひも』の上映後Q&A司会。ここで、司会者生涯において2度目となる恥ずかしい事態となった! 最初は簡潔だった監督の答えが、後半に向かうに従って徐々に長くなり、最後の質問では相当に長くなり、予定終了時刻を5分以上過ぎ、ついに僕が次の予定に間に合わない危険性がマックスとなってしまった!

これはダメだ、と諦め、通訳のKさんに「ごめんなさい、中座しなければなりません、あとをお願いします」と告げてスクリーンから失礼することになってしまった。Q&A中に司会が消えるという異常事態! ああ、やってしまった! 客席は苦笑…。すみません…。ここは少し無理がありました…。猛省します!!(実は監督と通訳さんにはこの可能性を少しだけ事前に伝えていた…)

ダッシュでEXシアターに向かい、ギリギリでセーフ。息を整え、壇上へ。

コンペのフランス映画『アマンダ(原題)』、ミカエル・アース監督とプロデューサーのピエール・ガイヤールさん。ミカエル監督も独特の雰囲気を持った人で、ぬっとした長身に帽子をかぶり、基本的にもの静かで穏やかな雰囲気の持ち主。作る作品のタッチと同じ雰囲気をまとった監督だ。

愛さずにいることは不可能な作品なので、客席の空気も最高。僕は導入の質問も不要と感じ、すぐに客席にマイクを渡す。至福のQ&Aになったのだけど、ここでブログ執筆時間切れ。詳細は明日に。

事務局に0時に戻り、内部調整事が発生したので事実関係などを整理して、そしてブログを書いていたら4時になってしまった。4時を回るとさすがに焦る。本日はここまで!

《矢田部吉彦》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]