※本サイトはアフィリエイト広告を利用しています

【MOVIEブログ】2018東京国際映画祭 Day6

30日、火曜日。8時40分起床。本日も晴天なり。なんと気持ちのよい朝。眠い以外は体調も万全、映画祭も後半に突入だ。

最新ニュース スクープ
注目記事
『半世界』(c)2018 TIFF
『半世界』(c)2018 TIFF 全 1 枚
/
拡大写真
30日、火曜日。8時40分起床。本日も晴天なり。なんと気持ちのよい朝。眠い以外は体調も万全、映画祭も後半に突入だ。

午前中はいくつか調整ごと。そして見直し必要の作品をパソコンで見る。11時半にお弁当が届き、本日ランチはパスタ弁当4種から基本のボロネーゼショートパスタ。このタイミングのパスタはナイス!

11時50分に劇場に行き、コンペのメキシコ映画『ヒストリー・レッスン』のQ&A司会へ。マルセリーノ監督は(当たり前だけど)カラオケナイトの疲れも見せずスッキリとした顔で製作背景を語ってくれる。主演のベロニカ・ランガーさんとの信頼関係で成立している作品であり、2人の絆の強さが伺えて心が温まる。ヒロインの細かい所作への演出の付け方や、歴史と個人史のふたつをかけたタイトルの解釈など、充実のQ&A内容。

事務局にもどり、1時間ほどパソコンに向かう。

13時45分に劇場に戻り、14時からスプラッシュ部門『漫画誕生』の上映前舞台挨拶司会へ。大木萠監督、イッセー尾形さん、篠原ともえさん、秋月三佳さん、嶺豪一さん、櫻井拓也さん、祁答院雄貴さん、江刺家伸雄さん、榎本桜さん、木下愛華さんが登壇。一言ずつご挨拶を頂いて、直ちにフォトへ。

続いて14時40分からコンペの『ホワイト・クロウ(原題)』のQ&Aへ。プロデューサーのガブリエル・タナさんがお相手。彼女はレイフ・ファインズ監督作全てに参加しており、Q&Aのお相手として最適任者だ。そして期待通りの素晴らしいQ&Aになった!

レイフにとって映画を監督するには俳優業を始め多くの犠牲が伴うことに始まり、新作の主題にヌレエフを取り上げた理由、全生涯でなく若き日々に焦点を絞った理由、直前でロシアから資金が出なくなってしまったこと、実際にヌレエフに会ったことがあるというガブリエルさんの思い出、そして有名な亡命劇の場に実際にいた人々から話を聞いて状況を正確に再現したことなどについて語ってもらう。

レイフ・ファインズ監督は緻密な正確性を重視し、妥協のない姿勢にはプロデューサーも大いに苦労したよう。ヌレエフの性格、芸術至上主義的人生、そして女性に対する姿勢なども言及され、実に内容の濃いQ&A。前回のレイフ・ファインズ登壇時Q&Aももちろん貴重だったので、2回を合わせると完璧だ。しかし2回見られた観客はほとんどいないわけで、申し訳ない…。しかしいずれの回も満足度はかなり高かったはず!

事務局で40分ほどパソコンに向かう。

シネマズに戻り、16時15分から『漫画誕生』のQ&A司会へ。大木監督、イッセー尾形さん、篠原ともえさんが登壇。イッセーさんが「大木監督、どうしてこの映画を撮ろうと思ったのですか?」という質問からスタートし、場内爆笑。さすが。イッセーさんと監督のやりとりに篠原さんが時おり茶々を入れるというぜいたくな展開で、僕は全く不要!

実在した人物を描くにあたり、大木監督は史実と映画的フィクションの使い分けについて語ってくれる。その人物の存在を伝えることが目的なのであり、そのためには周辺事実の「調整」も辞さない。もちろんそれは映画がついていいウソなわけで、正確を重視したレイフ・ファインズの姿勢も、大義のために映画的効率性を追求する大木萠の姿勢もそれぞれが映画であるのだ。

そして、北沢楽天について、明治期に実在した日本初の職業漫画家でありながら、現在では忘れられた存在であるという点が市井の人間を演じ続けてきているイッセー尾形さんの琴線に触れたよう。イッセーさんは大木監督を「書生さんみたいです」と称し、どういう意味ですか?と僕が尋ねると「お金はないけど夢がでかい」。なるほど、大木監督はまさにそういう存在だ(いや、お金がないかどうかは知らないけれど)。大木監督の志の高さに敬服するものとして、活動を追いかけ続けたいと思う所存。

みなさんがフォトセッションの準備をしている間に僕は退場。シネマズ内を移動して、5分後に別スクリーンにてコンペのトルコ映画『シレンズ・コール』のQ&A司会へ。ラミン・マタン監督、主演のデニズ・ジュリオウルさん、女優のエズキ・チェリキさん、プロデューサーのエミネ・ユルゥドゥルムさんが登壇。主演のデニズさんは1回目上映時には来日していなかったので「(映画の内容が街から抜けられない男の話なので)やはりイスタンブールから出られないのかと思ったら、来られたので安堵しました」と壇上で話しかけると場内ウケた。よかった!

「トルコやトルコ映画に我々が持つイメージと少し違うのだが、この映画のイスタンブールがリアルなイスタンブールと思っていいのですか?」という質問に、「まさしく」という監督の答え。時に厳しい大自然の中の人間の営みを多く描いてきた(そして多くの国際映画祭で評価を受けてきた)昨今のトルコ映画から一線を画し、都市生活者の憂鬱を描く『シレンズ・コール』は新しいトルコ映画への先導を果たす存在だ。

トルコ行進曲の転調が抜群の効果を発揮する音楽、キャラクターが成長したのかどうかについて、タイトルの「シレン」とは神話のサイレンに関係するのか、などなど、的確で有意義な質問が続き、これまた良き空間だ。都会を出た女性シレンは夢を追い(ゆえに成功し)、都会から出ようとする主人公はファンタジーを追う(ゆえにうまくいかない)。夢とファンタジーとは違うのだ。面白い!

続いて、間髪入れずにスプラッシュの『月極オトコトモダチ』の上映前舞台挨拶司会。 徳永えりさん、芦那すみれさん、野崎智子さん、山田佳奈さん、音楽の入江陽さん、そして穐山茉由監督が登壇。一言頂いて、フォトセッションへ。今日のQ&A司会は僕が出来ないので残念。穐山監督は積極的に交流を図る方で、映画祭に来たからには何でも吸収してやろうという貪欲な姿勢が伺え、主催者側としては本当にご招待のしがいがある監督だ。今回ご縁が出来てよかった。今後の活動から目が離せない。いや離さない。

大木萠監督の大きなスケールと、穐山監督の等身大な世界。どちらも映画なのだ。若手監督作品でこのコントラストを提示できたことも今年のスプラッシュの大きな特徴であり、成果であると確信する。

3連続登壇を無事乗り越え(=司会がQ&A途中で姿を消すこともなく)、やれやれと事務局に戻り、18時。まずは生姜焼き弁当をペロリと美味しく頂く。とにかく、睡眠で体力を回復できないのだから目の前に弁当があればその瞬間に食え、が僕の映画祭乗り切りモットー。もっとも、真似している人はいないけど。まあでもおかげさまで十数年こんなペースで映画祭をやっているけれど、鼻カゼひとつひいたことないから、弁当重視もまんざらはったりではないかも。

一息ついてから、気合いを入れ直してシネマズに戻る。本日の緊張物件、コンペ日本映画の『半世界』の上映前舞台挨拶司会へ。19時開宴、登壇。スクリーン7に一歩足を踏み入れる。完璧な満席。そして、パキパキの緊張感が漂っている。これは久しぶりの空気だ。スクリーン7はシネコンの中でも格調を誇るスクリーンであることを、痛感させられる。僕が前説を話し、通訳のKさんが英語に訳してくれる。すると、なんとKさんの声が少し上ずっている! 今年の映画祭でKさんとは何度となく登壇を共にしているけれど、緊張している声を聴くのは初めてだ。Kさんでも緊張するのか!

僕は大きく息を吸って、阪本順治監督と、稲垣吾郎さんを壇上に呼び込む。呼び込み順に一瞬混乱があってヒヤッとしたけど、何とか大丈夫だったかな? そして、スクリーン7の空気がぐわん、と揺れるのが分かる。すごい。

阪本監督と稲垣さんにそれぞれご挨拶を頂く。稲垣さんは国際映画祭の英語通訳入りの舞台挨拶を珍しがって楽しんでくれている様子。僕から2つほど質問をすると、右に立っている僕に正対するように話を聞いて下さる姿が印象的だ。ちょっと考えるときの「んー…」という少し高めの迷い声が最高。圧巻の素敵さだ。

半世界というタイトルに対する監督と稲垣さんのコメント、そして稲垣さんは撮影中にほかの役者陣と過ごした思い出や、先日のレッドカーペットで再会したときの印象などを語ってくれる。僕は少し舞い上がってしまってリアクションがあまり取れなかったのが情けない。取材カメラがたくさん入っていたので、撮影の時間を長くとり、あっという間の舞台挨拶は終了。ちょっと夢の中のような時間だった…。

舞台挨拶終わり、事務局に戻って所用をこなし、再び上映後の劇場へ。

阪本順治監督とのQ&A。こちらも素晴らしい内容だったのだけど、またまた報告を書くには力尽きてしまった…。Q&A終了後、作品ゲストを招いた居酒屋パーティに顔を出し、ウーロン茶片手にご挨拶。本日到着したゲストもいるのでみなに紹介をしつつ、(僕は遅れて到着したので)早々にお開き。0時半に事務局に戻り、酢豚ならぬ酢鳥弁当を美味しく頂いて、所用の続きを済ませてからブログをここまで書いた時点で、3時。限界到来。あがります!

《矢田部吉彦》

特集

関連記事

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]