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【MOVIEブログ】2019カンヌ映画祭 Day6

19日、日曜日。6時半にきっちり起きて支度して外へ。今朝も雨。でも気温はそこまで下がっていないのが救い。

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19日、日曜日。6時半にきっちり起きて支度して外へ。今朝も雨。でも気温はそこまで下がっていないのが救い。

本日は8時半のコンペ『The Whistler』でスタート。ルーマニアのコルネイユ・ポロンボイユ監督の新作で、予習ブログにも書いたように僕が偏愛する監督の一人だ。今回のカンヌで個人的に最も楽しみにしていた1本。しかし、ちょっと本作ではポロンボイユの個性は発揮しきれていなかったかもしれない…。

捕らえられたドラッグディーラーの大物を出所させるべく、ベテラン警察官が裏組織から買収の誘いを受ける。ファム・ファタール的な美女の誘いに応じ、警察官はカナリア諸島に伝わる口笛(というか指笛)を用いた会話を習得し、大物救出作戦を手引きするが、もちろん予定通りには進まない…、という犯罪映画。

指笛会話の設定はとても面白いのだけれど、残りは犯罪映画へのオマージュは見られるものの、突出した面白さには至らず、いささか普通のまま終わってしまった感じ。商業映画を視野に入れることは悪いことではないけれど、ポロンボイユの作家としての個性が薄まってしまった感は否めず、ここは次作に期待することとしよう。

外に出ると雨は止んでいる。よかった! 会場を移動して、10時半から「ある視点」部門、スペインの鬼才アルベール・セラ新作『Liberte』へ。まあ鬼才とはよく呼んだもので、今回も問題作であった…。

フランス革命前の時期、自由主義を標榜して王宮を離れる貴族の集団が、森の中でSM行為に耽る…、という内容。ミニマルなアートと極端な性描写の組み合わせが見る人を極端に絞るのは当然で、今年のカンヌで最大途中退場者を記録する作品になるのは間違いない(満席で始まったのに最後まで残ったのは3分の1くらい)。

んー、これをどう解読すればいいかな…。かつて、セックスを知的に語れないとバカだとみなされる風潮に対して「たかがセックスじゃないか」と突き放した内田樹氏に深く同感した僕としては、もう尻尾を巻いて逃げるしかないほど手に負えない。

とはいえ、反逆罪で文字通り八つ裂きの刑に処せられた男の噂話を貴族たちが語る場面から映画が始まるだけに、貴族たちは自らの悲惨な運命を予感しており、その恐怖を快楽に昇華させようとSM行為に浸っていくのだ、と解釈できるかもしれない。だけれども、2時間に亘って小枝のお尻叩きや聖水プレイ…and more! の連続(もちろん局部モロ出し)にどう付き合ったら良いものやらで、ここはちょっとほかの方にお任せします…。

13時に上映が終わり、次まで1時間空いたので、ここぞとばかりに簡易中華屋さんに駆け込み、ほぼ1週間ぶりとなる温かい食事(肉野菜とチャーハン)を頂く! パンやサラダがいくら続いても平気だけれども、やはり暖かいものを食べると気持ちが和らぐものだなあ。

14時から、「ある視点」部門のアメリカ映画で『Port Authority』へ。ダニエル・レソヴィッツ監督の長編1作目。彼が脚本を手掛けた作品が良かったために監督作品を注目したのだけれど、やはり好感の持てる仕上がりで処女長編としては立派な作品だった。

メンタルに少し問題を抱えた20歳の白人青年がNYに赴き、ヴォーギング・ダンスに興じる黒人女性と恋に落ちるが、その女性がトランスであったと知って動揺してしまう物語。ありがちな青春+LGBT作品に聞こえてしまうかもしれないけれど、NYのクールなシーンを切り取る粗いタッチの映像や、何よりも誠実さが感じられる物語に大いに共感できる佳作だ。

上映終わり、15時半のミーティングに少し遅れて駆け付け、それから数社と18時までミーティング。ミーティングが終わり、ともかく薄着しか持参していなくて夕方以降になると毎日凍えていたので、もう我慢してもしょうがないので上着を買うことにした。鹿革でなくて残念だけど、大きめのスーパーの紳士服売り場で適当なものがあったので即購入。セール価格で6千円くらい。なんだかもったいないけど、まあしょうがない。

そして20時半開映の「監督週間」のアメリカ映画『Lighthouse』(写真)を見るべく、少し早めに並びに行ってみる。主演がロバート・パティンソンとウィレム・デフォーなので、かなりの人出を予想して19時には「監督週間」の会場「クロワゼット」に到着してみると、既に長蛇の列だ!一応優先度の高いパスを持ってはいるのだけど、その列でさえ今まで経験したことのないところまで伸びている。これは…。

しかもいったんやんでいた雨がまたパラつき始める。そのまま並んで待つこと1時間半。会場のキャパ800人に対して、おそらく倍近い数の人が並んでいる。予定時刻を過ぎて、ようやく開場となるものの列はじりじりとしか進まず、これはもうダメかもと覚悟を固めると、まさに僕の直前で入場が打ち切られてしまった。ああ、と天を仰ぐ…。

すると「あと2人いける!」とシーバーを耳にした係員が大逆転の宣言。本当に最後の最後の1人で入場を果たし、天に感謝。連日睡眠時間3時間で活動していると、天も味方してくれたかな!

入場すると、もう上映前の舞台挨拶が始まっている。ウィレム・デフォーに引き続きロバート・パティンソンが登壇し、割れるような拍手! ちなみに、カンヌの舞台挨拶の基本パターンは、キャストも登壇するけど挨拶するのは監督だけ、というもの。なので、今回も監督の挨拶のみで、せっかくデフォーもパティンソンも壇上にいるのに、彼らはひと言も発しないで降壇してしまう。日本人からすると何とも贅沢な話で、長年カンヌに通っていてもこれだけはもったいなくて仕方がない…。

作品は、ホラーという先入観があったけれど、ホラーではなかった。何というか、究極の人間のぶつかり合いのドラマに、クラシックで表現主義的なテイストを交え、大音量のノイズとともに味わう新感覚映画、だろうか。ともかく、スタンダードのモノクロ、そして最小限の照明しか使っていないはずの映像のインパクトが半端ではない。

地の果てのような場所の灯台に新たに赴任した青年を、上司がいじめ倒し、やがて嵐が灯台を襲う…。もちろん、青年がパティンソンで上司がデフォー。時代設定は19世紀終わりで、ロバート・エガース監督は中世を舞台にした前作『ウィッチ』(15)に続いて、やはりクラシカルな雰囲気にスリラーを交える手腕が冴える才能だ。今後も要注目のひとり!

上映終わって22時40分。時間的に次の1本には間に合わないので、いさぎよく諦めてケバブサンドイッチを買ってホテルに戻り、ブログを書いて、今日は久しぶりに2時前に寝られそうだ! 嬉しい。おやすみなさい!

《矢田部吉彦》

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