平林:そうですね。先ほどの別所さんのお話にもありましたけど、いまは企業が個々の商品を売り込む、というよりは、消費者側が「このブランドだから買いたい、利用したい」という意識が強くなっていると思います。ですから『上田家の食卓』に関しても、企業の姿勢を打ち出すことを意識しています。純粋に“自分の作品”とは違う緊張感がありましたね。
一方、お題(今回はネスレ日本の健康支援ビジネス「ネスレ ウェルネス アンバサダー)があるので、いままで経験のない作品づくりの面白さも感じましたね。
――“家族”をテーマに選んだ理由を教えてください。
平林:逆に今回のテーマで考えると、家族ドラマしかないなと(笑)。自分にとっては経験のないジャンルですが、これはもう強制的に(笑)。ただ、おかげで自分の新しい面を引き出してもらえたと思いますね。(クリエイターとして)新しい発見があるのも、ブランデッドムービーの醍醐味。
出演者の皆さんも、カメラが回っているとき、そうでないときも、同じようにワイワイ盛り上げってくれて、いい雰囲気でした。その楽しさが自然と伝わるような計算もありましたし。

――1話およそ5分という時間も、いい意味で気楽に楽しめますし、それに最後には“気づき”もある。
平林:5分前後で、ご覧になる皆さんの興味を引き付けつつ、伝えるべきことを伝えるというのは難しいこと。参考というよりは、いつもスゴイなと思うんですけど「人志松本のすべらない話」ってありますよね。あの番組は人の顔だけを映して、それこそトークだけで5分以上(画面を)持たせるじゃないですか。あの感覚を上田家の面々でできたらいいなと思って。
よくよく考えると、原始時代から人類は焚火を囲んでストーリーを語ってきたわけですし、それがいまの時代は“食卓”になるのかなと。

――当事者である、お2人はブランデッドムービーの未来にどのような期待を寄せていますか?
別所:ショートフィルムがこの20年で、ごく当たり前の存在になったように、ブランデッドムービーにもそうなってほしいですよね。映像作家の皆さんが、表現技法に対する試行錯誤を楽しんでくれているように見えるし、例えば、映画業界とCM業界がタッグを組んで、異業種格闘みたいに、それぞれの答えを見つけてくれるのも楽しみ。
エンターテインメント、カルチャー、そしてコミュニケーション。それらが変化し“ワクワク”が渦巻く状況で、ブランデッドムービーを楽しんでもらえる環境が生まれることに期待しています。僕らの映画祭も、それを恒常的に支える“場”でありたいと思っています。
平林:ブランデッドムービーが広がることで、ショートフィルム全体への興味が広がるとうれしいですね。企業が製作する映像に加えて、作家性が高い作品が、日本はもちろん、世界中にたくさんありますからね。そして、これまで短編映画を作って来た僕のことも注目してもらえれば(笑)、これほどうれしいことはありません。

『上田家の食卓』は、無料のWEB映画館「ネスレシアター」で、全5話を順次配信。