■海外映画祭に続々出品!
映画『ゴーストマスター』は、黒沢清監督に師事し、アメリカ人の父と日本人の母を持つヤング・ポール監督の長編デビュー作。名前だけ巨匠監督と同じである黒沢明(三浦貴大)が、いつか自分の映画を撮ろうという思いのもと、魂を込めて書き連ねていた「ゴーストマスター」というタイトルの脚本に悪霊が宿ってしまう……。
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長編デビュー作でありながら、ブリュッセル・ファンタスティック映画祭や、シッチェス・カタロニア国際映画祭など、海外映画祭への出品が続々と決定している状況だが、ポール監督は企画を提出したときは「暇だし(映像の現場に対して)うっぷんがたまっていた」と語ると「撮影現場ってものすごく過酷で、労働環境はいまだに悪い。だからと言って好きだからやめられない……。そういう思いが根本にあったので、劇中に出てくる描写は結構リアルです」と作品のあらましを説明する。
企画の段階では、低予算のホラー映画を作っている人たちの話で、現場でオカルト現象が起こるも、ホラーを作っているから「大丈夫でしょ」と言っているうちに、大惨事になるという話だったが、脚本家の楠野さんのアイディアで「壁ドン映画」が舞台になったという。それだけに楠野さんは「『壁ドン』のシーンで笑ってもらえるかどうかが不安だった」と話していたが、客席の反応は上々だったようだ。
■ホラー、コメディ、SF、ラブストーリー……。一筋縄ではいかない作品

ホラー、コメディ、SF、ラブストーリーなどなど、さまざまな要素が詰まった作品だが、ポール監督は「テーマはつぎはぎ。いろいろ組み合わさっているけれど、根本は青春映画だと思う。映画に憧れていた青年の光と影。抑圧され、日々不満を抱えている人の思いがスパークされる映画にしたかった」と述べると、楠野さんも「トーンでいうと、サム・ライミの世界観が面白いと思えるか」と作品のポイントを挙げていた。
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イベント中盤には、黒沢の上司である監督役の川瀬さんがトークショーに飛び入り参加。トークショーを見ていたという川瀬さんは「調子よくしゃべっていましたが、撮影初日に緊張で倒れたんですよ」と裏話を暴露。さらに「(部下が三浦演じる助監督の黒沢なので)ずっと『黒沢!』って絶叫するのは、黒澤明さんもいるし、黒沢清さんもいるし、後ろめたさでいっぱいだったんですよ」と発言し、客席を笑わせていた。
ポール監督は「まじで倒れて、これで仕事なくなる、別の仕事やることになるなと思いました」と話していたが、川瀬さんは「この映画は、僕はポールくんの物語だと思っていました。彼の船出として大事な映画。是非よろしくお願いします」と愛のあるメッセージを送っていた。
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