新時代を牽引する最旬女優と本作が遺作となった若手俳優、そして本作がデビュー作となる新人監督の手により生まれた『サラブレッド』は、そんなどこか聞き覚えのある物語を、スタイリッシュかつファッショナブルな新感覚サスペンスへと昇華させた。
ハリウッド次世代女優&演技派俳優
&新人監督によるコラボレーション
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幼なじみのティーンエイジャー2人を演じたのは、世界中の映画ファンから熱い視線を送られている2人の次世代女優。アマンダを演じるのは、スティーヴン・スピルバーグ監督作『レディ・プレイヤー1』('18)で、勝ち気だが繊細さを合わせ持つヒロインに抜擢されたオリヴィア・クック。
アルフレッド・ヒッチコック監督作『サイコ』(’60)前章となる海外ドラマ「ベイツ・モーテル」(’13~’17)で注目され、サンダンス映画祭グランプリ(審査員大賞)と観客賞に輝いた『ぼくとアールと彼女のさよなら』(’15)などで頭角を現してきた。11月にはヒューマンドラマ『ライフ・イットセルフ 未来に続く物語』(’18)公開も控えている。
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オリヴィアが本作で演じるアマンダは“無感情”を自覚し、社会からの疎外感を感じている変わり者の少女。その裏返しか、他人の感情の揺れには敏感だ。モノクロの犯罪映画『都会の牙』('49)を観ながらリリーの前で実演してみせる、彼女の感情表現の“テクニック”はドキッとするほどの不気味さと可笑しみがある。
一方、オリヴィアとは初共演ながら絶妙なケミストリーを見せるのが、アニャ・テイラー=ジョイ。“魔女”と疑われる少女を演じた『ウィッチ』(’15)がサンダンス映画祭監督賞など高い評価を受け、彼女自身は英国アカデミー賞ライジングスター賞にノミネート。M・ナイト・シャマラン監督の大ヒット作『スプリット』(’17)、続く『ミスター・ガラス』(’18)にも出演。ジェームズ・マカヴォイやブルース・ウィリスやサミュエル・L・ジャクソンら実力派俳優に対しても堂々とした演技を披露した。
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本作で演じるリリーは、名門校に通い、一流企業でのインターン経験もあり、順風満帆な暮らしを送っている(ように見える)“感情的”なお嬢様。アニャがまとう独特の神秘さはハイソな雰囲気にぴったりだ。アマンダの“無感情”ぶりと“全てお見通し”な鋭敏さには信頼と憧れと、脅威も感じている。
また、2016年に惜しまれつつ亡くなった若き演技派俳優アントン・イェルチンがドラッグの売人ティム役に。上流階級の若者相手に違法な金稼ぎをし、いつかのし上がってやろうとしている彼だが、2人からリリーの継父殺害を依頼され“共犯者”となっていく。
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監督は演出家・劇作家のコリー・フィンリー。元々は舞台劇を想定していたが、2人の少女の絡み合った友情は「映画にすべき」と本作で映画監督・脚本デビュー。サンダンス映画祭観客賞など、インディペンデント系作品を対象とする映画賞に多数ノミネートされた。
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全くの正反対ながら、“凶暴な友情”を育んでいく
2人の日常ファッション&ロケーション&サウンドトラックにも注目!
リリーが継父を憎んでいると分かったことをきっかけに、“凶暴な友情”を育んでいくアマンダ(オリヴィア)とリリー(アニャ)。対照的な2人の境遇や個性は彼女たちのファッションにも色濃く映し出されている。
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まず、久しぶりの再会に神経質な一面を覗かせるリリーは、アマンダから「変わったね」と言われるほど洗練されたハイカジュアルスタイルに。普段はショートパンツ姿だが、パーティでは髪をアップに、胸元のカットが大胆な深紅のロンパースとルージュを合わせて大人っぽく。いつも身につけているハチのネックレスは、胸の奥に抱える悪意を象徴している。
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一方のアマンダは、Tシャツやデニムのショートパンツなど、リリーの豪邸とは不釣り合いに映るほどシンプルでラフ、いかにも普段着といったスタイル。ほぼノーメイクで髪にも無頓着。物心ついたときから喜びや悲しみ、怒り、共感といったものを抱いてこなかったアマンダの内面が現れているかのようだ。
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また、もう1つの主人公ともいえるのが、リリーの住む広大な屋敷と感情に訴え掛ける無調音楽。瀟洒な内装や入り組んだ廊下、仄暗いワインセラーといった“舞台装置”を背景に見つめ合う2人の会話劇は、核心に迫るにつれ、不気味で混沌とした音楽も相まって緊張感がぐんぐんと増していく。
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特別な感情で結ばれた2人の女性を映し出す映画
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多感でありながら、ひとたびある考えに取り憑かれると一転、周りが見えなくなってしまう少女たち。2人がお互いを想うとき、それはときに単なる友情や姉妹愛の域を超え、抑えてきた感情が歪んだ形で暴発することだってある。
『乙女の祈り』(’94)2人を引き裂く者は許さない…
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現実よりも幻想の世界に生きたいポウリーンとジュリエットは、2人を引き裂こうとする大人を葬むるべく凶行に及ぶ。『ロード・オブ・ザ・リング』のピーター・ジャクソン監督がニュージーランドで実際に起きた事件をもとに映画化。オスカー女優ケイト・ウィンスレットの映画デビュー作。
『ゴーストワールド』(’01)似ているようで似ていなかった2人
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第三者の男性の出現によって、永遠だと思っていた2人の世界が少しずつ崩れていく様を描く青春コメディ。黒髪メガネっ子のイーニドを『アメリカン・ビューティー』のソーラ・バーチ、金髪でスタイル抜群のレベッカを「アベンジャーズ」シリーズのスカーレット・ヨハンソン(当時15歳)が好演。
『プラネタリウム』(‘16)“お互いしかいない”共存関係の2人
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霊感の強い妹ケイトと野心家の姉ローラのバロウズ姉妹が、降霊術ツアーで訪れたパリで映画プロデューサーと出会い、何不自由ない暮らしを得るもそれまでの日常が一変する。ナタリー・ポートマン&リリー=ローズ・デップの対照的な姉妹には、それを超えた特別な絆が感じられる。
『サラブレッド』予告編
『サラブレッド』公式サイトはこちら
『サラブレッド』は9月27日(金)よりシネクイント、シネマカリテほか全国にて公開。
(C) 2019 Universal Studios. All Rights Reserved.