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レトロおしゃれにアップデートされた“映える”政治コメディドラマ「ザ・ポリティシャン」の3つの挑戦

「glee/グリー」「アメリカン・ホラー・ストーリー」など、FOXで次々とヒット作を生み出した人気クリエーター、ライアン・マーフィーのNetflix移籍後初作品「ザ・ポリティシャン」が満を持して配信開始となった。今回は本作を通してNetflixの新たな3つの挑戦に注目したい。

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「ザ・ポリティシャン」Netflixにて配信中
「ザ・ポリティシャン」Netflixにて配信中 全 48 枚
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今年の11月にはDisney+、Apple TV+なども参入が控え、ストリーミング業界は競争が激化する中、常に動向が注目される業界のパイオニアNetflix。直近では相次ぐ人気シリーズの制作終了も発表され転換期を迎える中、「glee/グリー」「アメリカン・ホラー・ストーリー」など、FOXで次々とヒット作を生み出した人気クリエーター、ライアン・マーフィーのNetflix移籍後初作品「ザ・ポリティシャン」が満を持して配信開始となった。


9月末に配信されたばかりの本作は、これまで幾度となく描かれてきた政治風刺を土台にしながらも、パイオニアとしてさらなる挑戦を続けるNetflixらしさも十分に感じられる作品だ。今回はその中でも3つのポイントに注目したい。

1.かつての政治風刺ドラマにはない徹底したレトロ可愛い映像




舞台はロサンゼルスにある裕福な家庭に育った学生も多く通うある高校。そこに通う、世界を代表する富豪の息子(養子)である主人公ペイトンが、大統領になるという幼い頃からの夢を叶えるため、まず登竜門である生徒会長選挙に挑む。この生徒会長選挙はかなり気合が入っており、立候補者ペイトンと、幼なじみであり参謀のジェームズとマカフィー、そして将来ファーストレディを目指すペイトンの彼女アリスたちは、生徒会長の座を得られるならどんな犠牲もいとわないという姿勢で選挙戦を繰り広げる。


支持率を常に学生たちのSNSでの発言から計測しポイントとして数値化し、ポイントアップを誘うイメージ戦略のために、ガン治療中の女子生徒をあえて副会長候補にし同情票を誘おうとするなど本物の政治家顔負けの行動を積極的に取る。正直、かつてアメリカで多くの支持を得た「ハウス・オブ・カード」や「Veep」といった伝説の政治風刺ドラマでもすでに描かれてきたため、舞台が高校になった以外のストーリーとしての目新しさはない。ただ、徹底的に出てくる人物がみんなオシャレであることが全く新しい。


とにかく、一つ一つのシーンが洗練されており、まるでどこかのハイブランドのインスタグラムを見ているようだ。コスチュームデザイナーであるクレア・パーキンソンは、1960年代~70年代の米社交界を撮影した写真家スリム・アーロンズの作品を参考にしたとIndependent誌に語っている。


かつての米富裕層の暮らしにインスパイアされたどこかレトロで、かつ現在にも通用するオシャレで可愛いファッションの一部は、実在の人物に影響を受けたものもある。主人公ペイトンとその彼女アリスのファッションはジョン・F・ケネディ大統領とその妻ジャクリーン・ケネディから影響を受けたそうだ。ケネディ夫妻と言えば当時のアイコニック的な存在であり、今作もそのような大統領とファーストレディになろうとする二人にはぴったりである。ドラマを観終わったらついつい同じような服がないかネットで探したくなるほどに、主要人物のファッションは小物に至るまで“映える”クールさである。



2.ほかの作品にはないトランスジェンダー俳優の起用方法


ペイトンの参謀であり幼なじみであるジェームズ役を演じたテオ・ジャーメインは本作がメジャーデビューとなるトランスジェンダー俳優である。


彼の本作での役柄は今後のハリウッド作品の転機としても注目を浴びている。ジェームズに限らず本作に登場するキャラクターの性別および性的志向について説明的な表現はほとんど登場せず、ジェームズに関しても自然な描き方でヘテロセクシュアルの青年として登場する。


トランスジェンダー俳優がこのような役柄を演じることはこれまでほかにあまり例がない。Indiewireによると、テオはインタビューで「いつもオーディションに胸を高鳴らせていたが、制作側が欲しいのはまだホルモン治療をしていない、もしくはまだ上半身を手術してない誰かか、すごくセクシーでひげが生えている誰かだ。自分はどこに属するのかわからなかった」と語ったそうだ。役者とは本来どんな役柄も演じることができる職業でありながら、依然として多くの制約も伴う現状はある。その中で、テオはとても自然に一人の男子学生を演じ、本人にとってもそして業界にとっても大きな一歩を踏み出している。


3.異例のシーズン1配信開始直後にシーズン2撮影開始というスピード感




通常、Netflixオリジナル作品は、配信開始後のアメリカ国内外の視聴数次第で次シーズン制作が決まる。しかし「ザ・ポリティシャン」については例外だ。主演でありエグゼクティブプロデューサーでもあるベン・プラットはMTV Podcast Networkのインタビューで、ライアン・マーフィーから一番最初に本作の構想を聞かされた時、5シーズン構成で、2シーズン分の制作はすでに決まっていると聞かされたという。


9月27日に全世界配信後、29日からシーズン2の撮影を開始している。Amazonオリジナルドラマではこのような手法をよく取るがNetflixでは珍しい。ヒットメーカーであるライアン・マーフィーの信頼と実績によるものかもしれないが、政治風刺劇であるならば時代性が非常に重要であるため、スピード感をもって制作しなければ一瞬で旧時代のものになってしまう。「ザ・ポリティシャン」シーズン1はシーズン2への大きな期待を残し一旦幕を閉じる。出だしはこれまでの政治風刺の域を出ない部分もあるが、シーズン1を通してみると、政治は決して大人たちだけのものではなく若い人たちこそ政治に関心を持ってほしいという思いが見え隠れする作品である。


大統領への道に執着するペイトンを冷ややかに見る学生たちもしっかりと描かれ、若い視聴者の目線に合わせ描かれる点も見逃せない。混迷するアメリカ国内の政治劇を背景に、これからの未来を担う若者たちの政治風刺劇は、彼ら自身のこれからを代弁する作品に飛躍するポテンシャルを秘めていると感じる。おそらく1年後配信されるであろうシーズン2はどのようにドラマとしてアップデートし時代を語るのかいまから期待が高まる。

《キャサリン》

海外テレビシリーズウォッチャー キャサリン

Netflix、Amazonプライムビデオ等のストリーミングサービスで最新作を追いかける海外テレビシリーズウォッチャー。主に欧米の映画、ドラマ、ドキュメンタリー、トーク番組、スタンドアップコメディなどを中心に視聴。現在作品レビューなどをwebメディア・雑誌などで執筆。

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