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【MOVIEブログ】2019東京国際映画祭 Day3

10月30日、水曜日。8時半起床、5時間熟睡できたのでスッキリ。支度して外に出ると美しい快晴! 昨日とうって変わって完璧な好天に心が躍る。

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『動物だけが知っている』(c)2019 TIFF
『動物だけが知っている』(c)2019 TIFF 全 1 枚
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10月30日、水曜日。8時半起床、5時間熟睡できたのでスッキリ。支度して外に出ると美しい快晴! 昨日とうって変わって完璧な好天に心が躍る。

9時から本日の予定を細かく確認して、パソコンに向かって溜まったメールに少し返事して、そして少し憂鬱な件についてミーティング(その後、同僚たちが細かい検討を行い夕方に解決案を練り、一応落着)。

11時30分にシネマズ控室に赴き、『ヒックとドラゴン』の上映前舞台挨拶司会へ。「特別上映」の枠なので、普段であれば僕が司会をやることはないのだけれど、『ヒックとドラゴン』が大好きなのでわがままを言ってやらせてもらってしまった。ごめんなさい…。

ディーン・デュボア監督、そしてサプライズゲストの中島かずきさんをお迎えしての上映前トーク。デュボア監督はとても暖かい雰囲気の方で、お会い出来てとても嬉しい。『ヒックとドラゴン』シリーズが世界中で愛される理由や、キャラクター作りについてなど、とても丁寧に語ってくれる。これからスクリーンで見られるお客さんが羨ましい!

12時30分に事務局に戻って、豚肉チリビーンズ弁当を5分で飲み込んで(美味しいのだけど味わっている時間がない)、速攻で劇場に戻る。

12時45分からコンペのフランス映画『動物だけが知っている』(写真)のQ&A司会へ。ゲストは主演のドゥニ・メノーシェさんとナディア・テレスツィエンキーヴィッツさん。この映画の面白さが十分に客席に伝わったことが確信できる雰囲気で素晴らしい。

メノーシェさんはネイティブ級の英語を操り(こんなに英語が上手いフランス人俳優は初めて会ったかもしれない)、ジョークを交えながら映画のエッセンスを存分に説明してくれて、来日できなかったドミニク・モル監督の穴を完璧に埋めてくれた。なんと素敵な人だろう。そしてとてつもなく頭の回転が速い。ナディアさんもコケティッシュな魅力を振りまいてくれて、まさに最高のふたり。

外に出るとサインを求める長い列が出来ていたのだけれど、おふたりともとても楽しそうに付き合って下さって、本当に幸せな上映だった!

13時半から14時半まで1時間空いたのでパソコンに向かう。

14時35分にシネマズに行き、「ワールドフォーカス」部門の『チェリー・レイン7番地』Q&A司会へ。ヨンファン監督が颯爽と客席から登壇し、大拍手。おそらく70歳を越えていらっしゃるはずだけど、本当におしゃれでチャーミングなヨンファン監督。Q&Aをご一緒できてとても光栄だ。嬉しそうに手を振る監督に対する観客の拍手がとても暖かくて、広いスクリーン7がアットホームな雰囲気に包まれるのが不思議で楽しい。

67年を舞台にした本作は、監督の自伝的要素を含んでいるのはもちろん、あらゆる登場人物に(ネコにまで!)自分の一部が投影されているので、超自伝的な作品と言えるかもと話されて面白い。どうしてアニメーションという手法を選んだか、スローペースである意図、絵画と映画との関係、67年という時代背景の意味するところなど、次々と話が尽きない。客席の反応もとてもよく、今年見たアニメでベストだというコメントも。そしてインディペンデントな反骨スピリットを失わないアーティストのヨンファン監督、最高にカッコいい。

ああ、それにしても本作をスクリーン7の巨大スクリーンで見られたお客さんが本当に羨ましくて仕方がない!

終わって外に出ると知り合いにあったので、しばし話し込む。『ディスコ』がとても良かったと言われて嬉しい。

16時からコンペのウクライナ作品『アトランティス』Q&Aへ。こちらも待ちに待った瞬間だ。昨日来日したヴァレンティン・ヴァシャノヴィッチ監督とQ&A直前の打ち合わせで初対面を果たし、冷静だけど人懐こいところもありそうなお人柄に、たちまち惹かれてしまう。

戦争が進行中のウクライナの現状を知ってもらうべく作った作品であるため、Q&Aの空気はかなり緊張感で引き締まったものになった。主演のアンドリー・リマルークさんがロシアとの紛争に1年半従軍した元兵士である点も、聞いていいこととためらわれることとの境に確信がもてないため、おのずと緊張感も増していく。

どうして設定を2025年という近未来にしたのか、という僕の質問に対して、「オプティミストだからです」と即答されたので、僕は思わず微笑んでしまったのだけど、これは全く笑いごとではないのだ。本作は2025年の「終戦後」が舞台になっていて、つまりは現在のウクライナ東部における戦争が2025年には終わっている、ということを想定しているわけで、それを「楽観的」と発言するのは、実際には2025年までに終わるわけがないと考えられるからに他ならない…。

戦争映画というものは、通常は戦争が終わってから10年や15年経過してから作られるけれども、そんなに待っていられない。であれば近未来に設定を置いて、現在のウクライナ戦争を描きながらも、より普遍的な形で戦争のもたらすカタストロフィーを描く選択をしたという監督の言葉が重く響く。その言葉に続いて監督が発したフレーズに僕は体が硬直するほど感動し、その後の言葉に詰まってしまったほどなのだけれど、それは2度目の上映が終わってから書こう。

この作品はヘヴィーであるだけでなく、様々な切り口があるので、とても30分では語りつくせない。僕は少し雰囲気を軽くしようとして、あるシーンについて質問してみたのだけど、これもサプライズに関わるので次回に書くことにしよう。

16時40分に終わり、すぐにスクリーンを移動して「日本映画スプラッシュ」部門の『猿楽町で会いましょう』の上映前舞台挨拶司会へ。登壇ゲストは、児山隆監督、金子大地さん、石川瑠華さん。監督からは製作のきっかけ、キャスティングの経緯を語ってもらい、金子さんと石川さんからはどのような姿勢で本作に取り組まれたかを話してもらう。非常に新鮮で斬新な空気を映画に吹き込んでいるふたりの若手俳優が初主演作を紹介する場に立ち会えることは、映画祭関係者としてはとても大きな喜びだ。

17時30分に事務局に戻り、カルビ弁当! 今回はレンジでチンしてとても美味しく頂く。最高の弁当チョイスを今年も続けてくれている我が運営チームに大感謝!

18時半に、コンペとスプラッシュとアジアの未来の審査員たちが一同に会するディナーの場に一瞬だけ顔を出し、なぜか乾杯の音頭を取り(チャン・ツィイーさんの前で乾杯の音頭を取る日が来るとは)、カンヌのクリスチャンさんと業界裏話で一瞬だけ盛り上がり、しかし滞在可能時間が30分しかなかったので残念ながら早々に退席。

19時から、『猿楽町で会いましょう』の児山監督とのQ&A司会へ。「初長編の初上映後という瞬間は、2度と経験することのない最初で最後の瞬間ですが、現在の心境は?」と僕が尋ねてみると、「これで始めて『監督』というものになれたと思います。自分の作品を観客に見てもらえてはじめて、自分も監督になれたのだなあ、と」という返答に力と実感がこもっていた…。

キャラクターの肉付けの仕方、役者たちとの接し方や演出方法、そして好きなシーンや美術に関して、淀みなく語っていく児山監督は新人離れしているというか、もはや完全にプロだ(逆に失礼な言い方になってしまうかもだけど)。役者の魅力、美しい映像など、様々な魅力を備えた本作は、まずはストレートな恋愛映画であるので、次回のQ&Aでは監督の恋愛感にももっと迫ってみよう。今日はそれが足りなかった! 楽しみ。

19時40分に終わり、すぐ隣のスクリーンに移動して、19時50分から『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』のQ&A司会へ。本日は『ヒックとドラゴン』、『ヒックとドラゴン2』、『ヒックとドラゴン 聖地への冒険』の3本が上映され、1本目の前と3本目の後にトークがサンドイッチ的についているという構成。僕はその両方に立ち会わせて頂いたという次第。

満席の客席は興奮の拍手でディーン監督を迎え、監督もまた丁寧で詳しい解説を加えていき、刺激と祝祭感と多幸感に包まれた素晴らしい時間。そして本作の結末に込めた監督のコメントを聞いて、とても感動した…。ただしこれはネタバレになるので、しばらくは封印しよう。

20時15分に終わり、海外の作品ゲストを中心にしたディナー・パーティーの会場に行く。今度は1時間半滞在できるので、ウーロン茶片手に各テーブルを回って少しずつお話しする。知り合って3日目ともなると、徐々にゲストと深い話が出来るようになってくるのも嬉しい。

23時にEXシアターに移動し、デンマークのコンペ作品『わたしの叔父さん』のQ&A司会へ。23時の終映時間にも関わらず、かなりの数の観客が残ってくれた。登壇して、あ、と思ったのだけど、確実に客席が余韻に浸っているのが分かる。こういうのは、なぜか分かるものなのだ。たちまち嬉しくてたまらなくなる。

これもラストに関わることなので書かないけれど、監督が込めた思いを聞いて、ちょっと涙が出そうになって困ってしまった。叔父と姪のシンプルな物語が、ここまで人の胸を打つ映画になるとは。フラレ・ピータゼン監督の暖かいまなざしと、演出のセンスは際立っており、僕は全幅の信頼を寄せたい。

上映終わって携帯を見ると、知人から絶賛のメールが届いている。ツィッターにも熱いコメントが続々と上がっている。素晴らしい(トークの詳細をもっと書きたいのだけど、ちょっと力尽きてきた…。2回目の上映が終わってからまた書こう)。

事務局に戻り、0時20分から「TIFF スタジオ」で本日の出来事報告と、明日以降のおススメ作品情報を生配信。まだまだ元気で話せるみたい。0時50分に終わり、サムギョプサル弁当をペロリで美味なり。

少しボケっとしてから、1時半からブログを書き始めて、そろそろ3時を回ったので上がらねば。目の前にビビンバ弁当があるのだけど、いくら食べられる時に食べるのが映画祭サバイバルの秘訣と信じているとはいえ、逆に睡眠に支障を来たしそうなので自重しよう!

なかなか順調な序盤3日間。いい日々が続くと信じて、中盤戦も頑張ろう。

《矢田部吉彦》

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