日本映画インディーズの最前線を紹介する日本映画スプラッシュ部門。そこで今年は2本の大きなドキュメンタリー作品が上映されるのですが、そのうちの1本です。森達也監督作品。ワールドプレミア。
森監督がお客さんと一緒に映画を観ていて、その上映後でのQ&Aでした。

プロデューサーの河村光庸さん(クリーンヒットした『新聞記者』と同じプロデューサー、同作とは表裏一体のような関係なのですね)と一緒に登壇して、タイトルの「i」に込められた意味やお客さんからの質問に答えている中で、自身の作品がシネコンで、しかも東京国際映画祭で上映されることは初めてです、ということを言っていて、「そうなんだ」と驚くとともに、それを喜んでくれている感じがして、とても嬉しく思っていました。ま、ただ、こういうのはとりあえずのご挨拶という感じでよくあることなので、あまりぬか喜びしてはいけないと自分を律していました。
でも、お客さんの中に映画にも登場している籠池夫妻や伊藤誌織さんも来ていて、そのご紹介をしていく流れで森監督から最後の一言があったのですが、それにやられてしまいました。
「死ぬまで東京国際映画祭は僕には縁がない映画祭だと思っていたので、河村プロデュサーから東京国際映画祭で上映するぞと言われたときは、何たわごと言ってんだろうと思っていたけど、本当に実現して。まずは東京国際映画祭、もっと具体的にはプログラムディレクターの矢田部さん、あとスタッフのみなさんに感謝します。よくぞこの作品をこの映画祭にかけてくれた。普通無理ですよ、たぶん。ね。僕自身がま無理だろうと思っていたら、しっかりと仕事にしてくれた。感謝します。ありがとうございました。そして、お客さんにも感謝します」
こんなことを思ってくれて、かつそれをきちんと言葉で発してくれる製作者がいるなんて。
東京国際映画祭はマスコミには色々と厳しいご意見をもらうことも多いのですが、自分がスタッフになってみて、それが全て受け入れられるものではないこと、逆に受け入れて変えていかなければならないことがあることもよくわかってきたのですが、「お金をかけて映画を作った人」、「お金を払って映画を観る人」、こういう人たちに喜んでもらいたいと思うようになってきていました。そんな中での森監督のお言葉だったので、思わず胸が熱くなってしまいました。
もっともっとこういう瞬間を増やしていけば、それがきっと良い映画祭につながっていくということなんだと思います。これからもまだまだきっと色々なドラマがあるはず。
後半戦頑張ります。