中野量太監督、園子温監督、非同期テック部(ムロツヨシ+真鍋大度+上田誠)、三木聡監督、真利子哲也監督という5組の監督が、「緊急事態宣言」をテーマにオリジナル映画を撮り下ろし。制作時のルールは、「感染拡大の防止を徹底的に守ること」の1つのみ。それ以外は、長さやジャンルなど、一切不問だったという。
自由度の高い環境で作られた本作は、各人の個性がほとばしる、「他では観られない」「今だからできた」内容に仕上がっている。
今回は、この『緊急事態宣言』の魅力を、3つの項目でご紹介する。
斎藤工、柴咲コウ、ムロツヨシ、岸井ゆきのら演技派俳優が1つのテーマに挑む
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本企画の出演者には、人気実力派がずらり。外出自粛期間中も精力的に活動を行ってきた斎藤工は『孤独な19時』(園子温監督)で「生まれてからずっと外出自粛してきた男」という難役に挑戦。「今が一番幸せ」と感じていた主人公が、他者との交流に焦がれるようになる“変化”を、全身全霊の演技で体現している。
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『DEEPMURO』(非同期テック部)の柴咲コウとムロツヨシは“本人役”を好演。意外な展開を見せるストーリーの中で、時に暴走し、時に我に返り……2人のコミカルな掛け合いが炸裂する。『ボトルメール』(三木聡監督)の夏帆が扮したのは、不倫騒動で干されてしまい、極貧生活を送る女優。人生への疲弊感が漂う“擦れた”姿が、新鮮だ。麻生久美子の登場も、「時効警察」などの三木監督の作品のファンには嬉しいところ。
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『愛がなんだ』や放送中のテレビドラマ「私たちはどうかしている」など話題作が続く岸井ゆきのは、外出自粛によって家族と会えない状況に陥った長女をリアルに演じた。ぶっきらぼうながら根底には家族への愛情があり、オンライン通話の中で哀しみや後悔が徐々ににじんでくる繊細な演技は、必見だ。
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このように、これまでの映画やドラマとは一味違う設定・撮影環境の中で新たな魅力を発揮した役者たちを観られる部分は、本作の大きな特長だろう。
日本を代表する5組の監督が描く、“緊急事態”とは?
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本企画に賛同したのは、日本映画を代表する一流クリエイターたち。『湯を沸かすほどの熱い愛』や、公開待機中の『浅田家!』で知られる中野量太監督は、『デリバリー2020』を発表。視聴者の外出自粛期間の“記憶”とも結びつく家族のドラマは、心にじんわり染み入ることだろう。
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『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』など、センセーショナルな驚きをもたらしてきた園子温の新作『孤独な19時』は、強烈なメッセージ性とディストピア感に圧倒される一本。ウイルス蔓延により「50メートルのソーシャルディスタンスが必要」というフィクションながら、観る者の中で現実とオーバーラップしていくさまが恐ろしい。
エンタメ性という点では、非同期テック部の『DEEPMURO』に注目だ。アニメ「四畳半神話大系」などの脚本も担当した劇団「ヨーロッパ企画」の劇作家・上田誠と、Perfumeのライブ演出等も手掛けるメディアアーティスト・真鍋大度、そして芸能界きってのエンターテイナーであるムロ。3人が仕掛ける新形態の“面白さ”は、まばたき厳禁だ。
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ゆるいギャグにちょっと毒を混ぜた世界観が魅力の三木聡監督は、新作『ボトルメール』でも本領を発揮。生活に困窮した女優が奇妙な仕事を受ける物語だが、「ソーシャルディスタンスを保つためにオーディションの列が異常に長い」「検温の結果が低すぎて嘲笑される」など、現代の世相にシニカルな目線が絡み、観る者をニヤリとさせる。
『ディストラクション・ベイビーズ』の真利子哲也監督による『MAYDAY』は、地球規模の物語。北米、アジア、アフリカ、ヨーロッパ……世界中の人々が緊急事態宣言の中、どう過ごしていたのかを追う。
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それぞれにアプローチが異なる、未体験の5作品を、堪能していただきたい。
中野量太監督が「現在の家族」を描く…『デリバリー2020』
最後に、『緊急事態宣言』のトップバッターを飾る『デリバリー2020』のあらすじ&レビューをお届け。
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コロナ禍の日本。自粛生活が続く中、離れて暮らす家族(母・娘・息子の3人)が、誕生日を祝うためにオンラインで集まった。「19時に帰宅予定」の父を待ちながら、3人はリモートワークから今日の夕食まで、各々の近況を共有するのだが……。
『緊急事態宣言』の見どころの1つは「名だたる映画監督が、このテーマをどう料理するのか」にあるだろう。『デリバリー2020』においては、「家族劇の名手」である中野量太監督が「現在の家族」をどう描くのか、が注目ポイントだ。
中野監督は制作発表の際に「コロナ禍の制限された条件の中で、いったい何を撮れるのか? 考え抜いた僕の結論は、やっぱり家族でした」とコメントを寄せており、“ライフワーク”へのさらなる掘り下げを誓っていた。
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そうして出来上がった作品は、温かく、泣ける話でありながらも、衝撃的な要素もはらんでおり、中野監督の新境地を感じさせる力作。序盤は微笑ましい母の姿や何の気ない家族の対話が描かれるが、さりげなく配置された“違和感”が次第に実を結び、隠されたテーマ性が立ち上がってくる。そこに、家族の想いが溶けだしていく感情のグラデーションが乗っかり、クライマックスには、「こんな話だったのか!」と驚かされることだろう。
まさに、正真正銘の「コロナ禍でしか描けなかった」物語だ。
「緊急事態宣言」を観る
<提供:Amazon Prime Video>