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東京・明大前駅で終電を逃した、大学生の山音麦(菅田将暉)と八谷絹(有村架純)。初対面の2人は、時間をつぶすために朝までやっている店に入り、意気投合。好きな本や音楽、映画などの趣味が共通する麦と絹はすぐに恋に落ち、大学卒業後に同棲生活をスタートする。
2015年から2020年にかけての5年間を舞台に、喜びも悲しみも、恋のすべてを瑞々しく描いた“いま”のラブストーリー、『花束みたいな恋をした』。本特集では、本作の魅力を3つのポイントで解説する。
「生きた言葉」が刺さる“リアル”な5年間、
恋愛映画の傑作が誕生
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本作が珠玉の恋愛映画である理由――それはやはり、描かれる“中身”への共感度が抜群に高いからであろう。その最大の要因といえるのが、坂元さんが紡ぐセリフの数々だ。
麦と急接近した絹が心の内でつぶやく「何かが始まる予感がして心臓が鳴ったけど、ドライヤーの音がかき消してくれた」は、恋の予兆を見事に伝えている。
大学を卒業した絹と麦が、ため息とともに漏らす「普通になるのって難しい」や、麦が就職したことで生活習慣や価値観にズレが生じ、絹の口からこぼれる「好きで一緒にいるのに、なんでお金ばっかりになるんだろう」は、私たちの多くが経験してきた「生きた言葉」と言えるのではないか。
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このように、恋愛を軸にしながら「刺さる」セリフを多数積み上げているのが、本作の大きな魅力。坂元さんが「21歳で出会った2人の恋の5年間に嘘が混ざらないようにと、ただただ真っ直ぐに映し出しました。それこそが何よりせつなくもあり、コミカルでもあり、美しく、心を震わせてくれるものと信じています」と語っているように、『花束みたいな恋をした』は何気ない日常の連鎖こそがドラマティックだと教えてくれる。
菅田将暉×有村架純、
2人のケミストリーが“私たちの物語”へと近づける
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坂元さんは本作を執筆するにあたり、菅田さんと有村さんを想定して「当て書き」を行ったそう。「問題のあるレストラン」や「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」で坂元作品を経験してきた2人の見事な調和ぶりで、作品をより“私たちの物語”へと近づけている。
菅田さんが演じた麦は、イラストレーターを目指す大学生。卒業後、フリーターとして暮らしながら創作活動を続けるが、絹との将来を考えて流通系の会社に就職することに。生活は安定したものの、すれ違いが生じていく。好青年が一変、社会に流され、疲弊していくさまをビビッドに演じ切った菅田さんの演技が出色だ。
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有村さんが扮する絹は、カルチャー好きの大学生。実家で共に暮らす両親に就職を強く勧められるが、圧迫面接でストレスを抱えてしまう。麦の提案で同棲を始め、就職したあとも“趣味活”を続けるが、麦が仕事に忙殺される様子に心を痛める。麦を気遣いつつも、寂しさが大きくなっていく微妙な心の揺れを、繊細に体現している。
恋に救われ、恋に悩む麦と絹の姿は、どの瞬間を切り取っても「わかる」の連続。あの日の、いやいまの私たち自身が、そこにいる。
「リアルで身近にもありそう」…人生の本質を突いた物語への共感
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リアルで切なく、心にじんわり余韻が広がっていく本作。1月12日に行われた試写会で、ひと足早く作品を観賞した人々は、どんな感想を持ったのだろう? Twitterに寄せられた花束みたいな想いの数々を、いくつかご紹介する。
やはり多かったのは、「5年の関係性がとってもリアルで身近にもありそう」「一言でいうとリアル。ラブストーリーというより人生ストーリー」といったような、坂元さんが紡ぐ人生の本質を突いた物語への共感。「どっちにも共感できるし、あぁこういうこと言っちゃってるなあっていう反省もあった」など、“自分事”として受けとめた鑑賞者も多数見られ、「俳優陣の演技が自然で素敵」と、菅田さん・有村さんの自然体の演技に称賛の声が上がった。
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そのうえで、「切ないけど見たあと素敵な気持ちになれる」「見終わった後、極上の心地良さがあった」「作中に出てきた文学作品や音楽、ご飯まで全てに自分自身も触れたくなる」「恋のはじまりのワクワクと生活していくなかでの現実が、しっかり刺さった」と、映画としての完成度の高さに、多くの人々が感激していた。
観る者の心をぎゅっとつかみ、恋の記憶をよみがえらせる『花束みたいな恋をした』。ぜひ劇場で、かけがえのない時間を過ごしていただきたい。
『花束みたいな恋をした』劇場を調べる
『花束みたいな恋をした』は2021年1月29日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開。