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大手出版社・薫風社を舞台に、権力争いや雑誌の廃刊などを巡って、自らの守るものをそれぞれに抱えたクセモノたちが生き残りをかけた壮絶な騙し合いバトルを繰り広げる本作。出版業界や書店業界を舞台にしていることから、今回のコラボトークショーが実現した。

原作小説に惹かれた点について吉田監督は、「出版業界の中でのサバイバルをかけた争いを借りて、俳優のドラマチックな表情を見せることのできる物語だと思った。そこを軸に考えたときに、僕の大好きな映画『仁義なき戦い』をやるくらいの気持ちで脚色しました」と名匠・深作欣二監督の傑作実録路線映画をイメージしたという。
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大胆な脚色も施されているが「小説を読んだ方にも映画を楽しんでもらいたいという思いがあり、原作ファンの期待に添いながらも、いい意味で気持ち良く“騙し”たかった」と監督。「ぜひ先に原作を読んでいただき、出版社の知識を入れてもらえれば、より映画を楽しんでもらえると思う。映画も原作小説もそれぞれ独立した楽しみ方ができるはず」と狙いを明かした。
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また、新人編集者・高野役の松岡茉優とは映画『桐島、部活やめるってよ』以来約8年ぶりのタッグ。「脚色をする中で高野の年齢も、速水との関係性も変わってきて、原作よりも年齢を若くして新人編集者という設定にしました。その設定になったときに松岡さんに声をかけることができると思ったし、速水役の大泉さんと松岡さんだったら面白いという結びつきで実現しました」とキャスティングの舞台裏を紹介。
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これに三浦さんも「松岡さんの設定がしっくりくると思ったし、高野のような人が出てこないと出版業界は良くならないと思った。僕は大泉さんの速水よりも、松岡さんの高野に感情移入が出来て応援しました」と共感を寄せた。
また、三浦さんは「出版業界のことが上手く描かれているし、提言のようなものもあり、出版に携わっている人は観た方がいいとおススメしています。プロから見ても『なるほど!』と腑に落ちるところが沢山ある」と、リアリティを高評価。
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吉田監督は「出版関係の方々にリサーチしたし、その中で協力はするが名前は伏せてくれと言われたこともあります。相当にセンシティブなところに触れていると思ったけれど、僕自身もそこまで踏み込まないと面白くないと感じた」と綿密な取材の成果に胸を張る。
オールスターキャストの座組も話題だが「僕も一同が揃ったポスターを見た時はビビりました(笑)。でも撮影時はそんなことは気にせず、目の前のことだけに集中していました」と笑わせつつ、初顔合わせとなる佐藤浩市については「お会いするまでは緊張したけれど、やはり映画を愛する方ですし、作品をよくするために乗ってくれる方。実は可愛い瞬間もあって、好きになってしまいました」とベテラン俳優の映画愛に感謝していた。
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最後に吉田監督は、「映画館で知らない人と一緒に映画を観る経験は家では出来ないもの。その意味では映画館には大きな可能性がある」と語り、「作り手としても映画の内容を含めて、体験として意味のある作品が作れるのか否かが問われてくる。映画館という体験の場所の可能性も捨てたものではないはず」と、コロナ禍における映画館という場に大きな期待を寄せていた。
『騙し絵の牙』は3月26日(金)より全国にて公開。