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町医者からの招待で、音楽会に参加することになったメアリー(ケイト・ウィンスレット)とシャーロット(シアーシャ・ローナン)。部屋で身仕度をしているシャーロットの様子を見に来たメアリーだが、不意に目にした背中が大きくあいた下着姿に戸惑いを隠せない。目で合図を送り、着替えを手伝ってもらいたいと訴えるシャーロットに近づき、コルセットの紐を縛るメアリー。
そのお礼にとシャーロットはメアリーの手首に香水をつける。普段は力仕事ばかりで、めかし込むことのないメアリーは不慣れな様子で、ぎこちない笑顔を浮かべる。そこへ母親の呼ぶ声が響き渡り、メアリーは部屋を去り、少し残念そうなシャーロットが1人取り残される――。
メアリーの戸惑いとときめき、そしてシャーロットの心の変化も、一切の台詞なしで表現されたこのシーン。たった1分程度の1シーンだが、表情と動きの演技によって観客は2人の心になにかが芽生え始めているということを知ることになる。
フランシス・リー監督は、この実力派二大女優との仕事について、「本作の撮影は思い出深い瞬間がたくさんあった。その中でも深く感動し強く印象に残っているのが、ケイトとシアーシャの演技だ。2人はそれぞれの方法で役にのめり込み、身も心も別人になり切っていた」とふり返る。
「2人の演技には真実と強く激しい感情が込められている。そして、私やお互いに最大限の敬意を払い、私の考えていることを形にしてくれた。驚くほど心が揺さぶられ、美しい関係を表現してくれた」と大絶賛を贈る。
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さらに、「本作はキャラクター主体で非常にのめり込みやすい。観客は彼女たちと一緒に物語を体験しながら、画面から生の感情を感じることになる。そして最後には希望を感じてもらいたい。人は人との出会いでこんなにも変われるんだとね」と、2人の演技を通して感情を共有できる作品となっていることをアピールする。
また、ケイトは“静かにすること”が撮影中、最も難しかったことだったと語り、「メアリーは冷静沈着で感情を抑え込むタイプだけど、素の私は声が大きく活発で、動き回るタイプ。だからフランシス(・リー監督)は私を身体から変身させた」と言う。
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「シーンに合った体の動きエネルギーレベルを把握し私を静めてくれた。撮影中は1日のほとんどを動作、呼吸、発話のリズムを抑えて過ごした。意思疎通に焦点を当てたシーンだから、表情や視線のわずかな動きで感情を伝えなければならない。当時は異性間の恋愛しか認識されてなくて、同性間の関係や恋愛感情はひた隠しにされてきた。内に秘めた愛を表現するのが私にはとても難しかった」と明かし、監督の演出に助けられたと撮影をふり返る。
言葉に頼らずとも、役者の演技と映像の力を存分に引き出し物語が展開されていく本作。動作、呼吸、発話のリズム、そしてエネルギー、全ての絶妙なコントロールの果てに2人の名演が生まれている。
『アンモナイトの目覚め』は4月9日(金)よりTOHO シネマズ シャンテほか全国にて順次公開。