台湾南部のろう学校で実際に起きた、性的暴行・セクシャルハラスメント事件。被害総数は分かっているだけで128件にのぼる、この題材を映画化した台湾映画『無聲 The Silent Forest』が東京フィルメックスで上映され、日本映画界を代表する藤井道人監督、三島有紀子監督がコメント。また、90秒日本版トレーラーが解禁された。
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台湾本国では、教育者や政治家をはじめ多くの観客が事件の深刻さを問題視して話題となり、台北の週間興行収入1位を獲得や、台湾の金馬奨では8部門ノミネート、性暴力の被害者を演じたチェン・イェンフェイの最優秀新人俳優賞など2部門を受賞。2021年度の台北映画祭では最多7部門8ノミネート、チェン・イェンフェイの最優秀新人俳優賞など3部門のほか、観客賞を受賞した。
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メガホンをとったのは、本作が長編初監督作となるコー・チェンニエン。事件について綿密な調査を行い、事実を1人でも多くの観客に伝えるため、映画化に踏み切った。
本作は普通学校からろう学校に転校してきた主人公チャン(リウ・ツーチュアン)の視点をメインに描かれている。チャンは、仲良くなった同級生ベイベイ(チェン・イェンフェイ)が、スクールバスの中で男子生徒から性暴力を受けている場面に遭遇してまう。信じられないことに、その後もベイベイや生徒たちは、何事もなかったかのように一緒に遊んでいるのだ。その実態に困惑するが、ワン先生と共にベイベイを救おうとするチャン。聞き取り調査を進めていくうちに、隠されていた事実が明らかになっていく――。
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この作品を鑑賞した『ヤクザと家族 The Family』『新聞記者』の藤井道人監督、『幼な子われらに生まれ』『Red』の三島有紀子監督からコメントが到着した。
藤井道人 映画監督
声のない世界を、圧倒的な強度で描き切った意欲作。
彼らの叫びが、スクリーンを突き破って観る人の心を鷲掴みにするだろう。
台湾からまた一人、素晴らしい映画監督が誕生した。
三島有紀子 映画監督
「知る」という行為は恐怖のひとつだ。
ある者は事実を知り、ある者はその行為を知る、ある者は痛みを知り、ある者は悦びを知ってしまう。
われわれがこの映画で知ってしまった、人間に対する「嫌な気分」をどうしてくれよう。
だが、この「嫌な気分」の奥にあるものを見つけられるのも、AIではなく動物でもなく、われわれ人間なのだと、この映画は信じさせてくれる。
『無聲 The Silent Forest』は2022年1月14日(金)よりシネマート新宿ほか全国にて順次公開。