フランスの名匠フランソワ・オゾン監督が国民的俳優ソフィー・マルソーと初タッグを組んだ『すべてうまくいきますように』が2月3日(金)より全国公開。オゾン監督の『まぼろし』(02)で脚本を手掛けたエマニュエル・ベルンエイムの自伝的小説を基にした本作は、“安楽死”を巡る父娘の葛藤をユーモラスに描き、“人生の終(しま)い方”に着目した作品。
このほかにも、いわゆる老々介護を描いたミヒャエル・ハネケ監督の第65回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作『愛、アムール』、“75歳以上が自らの生死を選択できる”架空の制度を描いた早川千絵監督の『PLAN 75』など、“人生の終(しま)い方”を主軸に置いた映画に着目、6作品を紹介する。
◆『すべてうまくいきますように』(2023)
誰にでも訪れる家族との別れ――それが安楽死だとしたら?
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ソフィー・マルソー演じる主人公エマニュエルが、右半身不随になってしまった父・アンドレ(アンドレ・デュソリエ)から、自分らしく一生を終えるために、自身の“安楽死”を手伝ってほしいと頼まれることから物語が始まる本作。
ベースとなっているのは、脚本家エマニュエル・ベルンエイムによる自伝的小説「Tout s'est bien passé」。自身と父親が実際に経験したことを基に執筆され、ドキュメンタリーのような内容となっている。
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彼女はフランソワ・オゾンと『まぼろし』『スイミング・プール』『ふたりの5つの分かれ路』、さらに『Ricky リッキー』で脚本を共同執筆するいわば盟友関係だったが、本作映画化企画中にがんと診断され、映画完成を待たずして旅立ってしまった。
オゾン監督はインタビューで、「エマニュエルはこの本の映画化に興味があるかと僕に尋ねたんです。美しい映画になる確信があったけれど、あまりにも彼女自身に密着した内容だったし、その時点では、どうやって自分のものにできるか僕にはわからなかった」と一度、映画化権を別の人間に託したことを明かしていた。
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しかし、「エマニュエルの死、彼女の不在によって、もう一度彼女と共にいたいと感じたんだ。それにたぶん、人生経験を積んで彼女の物語により深く没頭できるようになったと感じたからかな。映画化する本については時間が必要なことが少なくない。熟成させ、どうすれば自分のものにできるか考えるためにね」と、親しき友の死をきっかけに心境の変化があったことを教えてくれた。
娘を演じるのは、『ラ・ブーム』(82)の世界的大ヒットでスーパーアイドルとなりハリウッド大作にも出演、フランスの国民的俳優として愛され続けるソフィー・マルソー。オゾン作品に深みを与えてきたシャーロット・ランプリングと共演を果たす。
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最期の日を決めた父と娘たちの前に、様々な人々が立ちはだかる本作。緊迫感に満ちた展開の先に、オゾン監督はどんな結末を用意しているのか注目だ。
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◆『PLAN 75』(2022)
架空の制度<プラン75>を媒介に、皆に生き方を問う
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夫と死別して1人で慎ましく暮らす角谷ミチ(倍賞千恵子)は78歳。ある日、高齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を突然解雇され、住む場所も失いそうになった彼女は、ついに<プラン75>の申請を検討する。
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また、市役所の<プラン75>申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)と、死を選んだお年寄りをサポートするコールセンターのスタッフの瑶子(河合優実)は、このシステムの存在に強い疑問を抱いていく。幼い娘の手術費を稼ぐためフィリピンから単身来日したマリアは、高給の<プラン75>関連施設で複雑な思いを抱えながら遺品処理などの作業に勤しむ。
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<プラン75>に翻弄される人々を描きつつ、決して架空の出来事ではないことを突きつける本作。第75回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品され、早川監督がカメラドール特別表彰を授与。第95回米アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作品。
◆『君がくれたグッドライフ』(2014)
難病に侵された友と向かうのは尊厳死の認められた国・ベルギー
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年に1度、自転車で旅に出る6人の仲間たち。今年の行き先はハンネスとキキの夫婦によりベルギーになったが、チョコレート以外に何があるのかとボヤく友人たち。しかし、ハンネスの選択にはある理由があった。ALS(筋萎縮性側索硬化症)と宣告された彼は、尊厳死が認められている国ベルギーを目指すことだった。
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真実を知った仲間は大きなショックを受けるが、ハンネスの思いを受け入れ、旅を続けることを決意する。親しい人々に自分の選択をどう受け止めてもらうかを問うとともに、命の輝きを改めて実感できるはず。
◆『愛、アムール』(2013)
誰しもが避けて通ることのできない「老い」と「死」
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パリ在住の80代の夫婦のジョルジュとアンヌは高級アパルトマンで悠々自適の老後を送っていた。ある日、教え子が開くコンサートに出向いた2人だが、そこでアンヌが病に倒れてしまう。病院へ緊急搬送され、かろうじて死は免れたアンヌだったが、半身麻痺という重い後遺症が残ってしまう。彼女の強い願いから、自宅で介護を始めるジョルジュだが、少しずつアンヌの症状は悪化していき、ついに死を選びたいと考えるようになっていく。
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来るべき日を観客に否応なく突きつけるだけではなく、ひとりの男とひとりの女が共に生きてきた道のりの確かさや尊厳、それゆえの気高さを描いた本作で、ミヒャエル・ハネケ監督は第65回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞。
◆『終の信託』(2012)
患者の最期の願いだった「尊厳死」を叶えた医師は?
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折井綾乃は、患者からの評判も良い呼吸器内科のエリート医師。しかし、長く不倫関係にあった同僚の医師・高井から別れを告げられ、失意のあまり自殺未遂騒動を引き起こしてしまう。そんな彼女の心の傷を癒したのは、重度の喘息で入退院を繰り返していた患者・江木秦三の優しさだった。互いの心の内を語り合い、医師と患者の関係を越えた深い絆で結ばれていく2人。
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やがて、病状の悪化によって自分の死期が迫っていることを自覚した江木は、綾乃に“信頼できるのは先生だけだ。最期のときは早く楽にしてほしい”と懇願する。2か月後、江木が心肺停止状態に陥り、綾乃は決断を迫られる。
現役弁護士・朔立木の同小説を周防正行監督自ら脚本化。草刈民代、役所広司、大沢たかお、浅野忠信らが豪華共演した。
◆『最高の人生の見つけ方』(2007)
一生分笑うために、二人は最期の旅に出た
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仕事に人生をささげた大富豪エドワードと、家族のために地道に働いてきた自動車整備工のカーター。入院した病室で出会った2人は、共に余命6か月の宣告を受けた。やりたいことを全てやり尽くそうと決意した2人は“棺おけに入るまでにやっておきたいこと”を書き出した“バケット(棺おけ)リスト”を作り、無謀にも病院を脱出。リストを実現すべく、様々なことに挑戦する人生最後の旅に出発する。
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ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンという名優コンビを主演に、『スタンド・バイ・ミー』のロブ・ライナー監督が爽やかなユーモアで描き、2019年には吉永小百合と天海祐希を主演に日本リメイク版が公開された。
『すべてうまくいきますように』は2023年2月3日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマほか全国にて公開。