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驚きの宝庫、世界中の視聴者の心をつかんだドラマ「THE LAST OF US」の魅力

2013年にPlayStation3専用タイトルとして発売され、全世界で200部門以上のゲームアワードを受賞した大人気作「THE LAST OF US」(ラスアス)。“映画を観ている感覚”という触れ込みの本作が、ドラマ好きの信頼が厚いHBOによって実写ドラマ化された。

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「THE LAST OF US」©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc.
「THE LAST OF US」©2022 Home Box Office, Inc. All rights reserved. HBO® and all related channels and service marks are the property of Home Box Office, Inc. 全 5 枚
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2013年にPlayStation3専用タイトルとして発売され、全世界で200部門以上のゲームアワードを受賞した大人気作「THE LAST OF US」(ラスアス)。“映画を観ている感覚”という触れ込みの本作が、ドラマ好きの信頼が厚いHBOによって実写ドラマ化された。

2020年に行われた実写ドラマ制作発表時から既にファンを熱狂させていたが、日本時間2023年1月16日に第1話が放送/配信されると、HBOオリジナル作品として歴代2位の視聴人数をたたき出し、1月28日には早くもシーズン2の制作が発表。一大ブームの到来と言っていい盛り上がりだ。

ドラマ「THE LAST OF US」が驚異的な人気を誇る理由の一つが、ゲームプレイ済みのユーザーはもちろんのこと、未プレイの新規層をも歓喜させる要素がそろっている点。本稿では双方の目線で「THE LAST OF US」の魅力を語っていきたい。

まずはクリエイター。本作、ゲームシリーズのクリエイティブ・ディレクターであるニール・ドラックマンが脚本・製作総指揮を務めており、“生みの親”が実写版も担当するため安心感が違う。原作愛が強ければ強いほどファン的には「余計なことをしないで……」となってしまうものだが、本作においてはその心配が皆無なのだ。主人公のジョエルを任されたペドロ・パスカルの激似具合を見ても「完璧な実写化!」と思えるのではないか。

そして、ドラマ・映画好きからするとドラックマンと組んだのがクレイグ・メイジンという点が重要。あの人気ドラマ「チェルノブイリ」の脚本・製作総指揮を務めた才人の加入によって、ゲーム×実写の盤石な布陣が出来上がった。メイジンとドラックマンは共にエピソード監督も務めており、さらにカンヌ国際映画祭受賞作『ボーダー 二つの世界』『聖地には蜘蛛が巣を張る』の監督アリ・アッバシも参加。この顔ぶれ時点で作品の“強度”は保証されたようなものだが……実際の本編は驚きの宝庫。ここからは具体的なシーンと共に見ていこう(なお、原稿執筆時点で放送/配信済みの第4話までの内容にとどめる)。

ゲーム版経験者からすると、実写ドラマ版「THE LAST OF US」は「再現度が異常」「補完が完璧」の2つの魅力を備えている。前者は言わずもがな、ゲームをプレイしているときの感覚が蘇るような映像の“強さ”だ。未知のウイルスの蔓延により凶暴化した感染者が爆発的に増え、荒廃してしまった世界が実写で観られる喜び、「クリッカー」や「ランナー」と呼ばれる感染者たちの作り込まれたビジュアル、感染者たちに見つからないように物陰に隠れながら進む緊迫感等々、細部にまでこだわりが行き届いている。ゲームの世界観が「そのまま」実写化されたような感覚だ。

そして「補完」部分だが、ゲームは主にジョエルとエリーをプレイするため基本的に二人が見聞きしたものしか描かれない。対してドラマ版では、サブキャラクターの視点でも物語が展開する。第1話の冒頭で「冬虫夏草」の説明から学者たちがパンデミックの可能性について討論するシーンや、第2話ではインドネシアのジャカルタに舞台を移し、アメリカ以外の感染状況を描写。そこで菌類の専門家が提案する「絨毯爆撃」といった物語の設定を補強するシーンは多数の人物の視点で描けるドラマという形態をフル活用したものだし、本作で初めて「THE LAST OF US」の世界に触れる視聴者にもわかりやすいチュートリアルとしての機能も果たしている。

中でも白眉といえるのは、第3話であろう。本エピソードでは全編を通してジョエルの旧友であるビルとフランクの物語が描かれる。ゲーム版ではビルから口頭で語られるのみだった恋人フランクとの出会いと別れまでが、まるまる1話を通して明かされるのだ。しかもゲーム版とは展開が異なっており、切なくも感動的なラブストーリーに仕上がっている。まさに「映画1本分」的な内容であり、ゲーム版では描けなかった物語だ。

こうした人物描写の厚みはドラマ版の特長といえ、ジョエルとエリーの関係性の変化がより温かみのあるものになっている。ゲーム版では娘が目の前で殺された喪失感からエリーになかなか心を開かず、時に過保護になりすぎてしまうジョエルだが、ドラマ版ではペドロ・パスカルの人情味ある演技も相まって第4話で笑顔を見せたりと、疑似親子的なニュアンスが強まっているのだ。

ジョエルと相棒テスの間柄も同様で、お互いにとって大切な存在であるという描写が強まるからこそテスの死がジョエルの心に与えるダメージ、エリーの「自分のせい」という良心の呵責に奥行きが出ている(テスが感染者にキスのような形で菌を移されるシーンの演出が強烈だ)。エリーを中心とした「人を撃つ→攻撃する/殺す」という重みもゲーム版と実写版では微妙に流れが違っており、比較してみるとそれぞれの特長が見えてきて興味深い。ゲーム版ではエリーが戦闘時にジョエルの後方支援を務めるため展開的に「殺しの解禁」が必要になるのだが、ドラマ版ではじっくりと引っ張って心情描写に割いている。総じてドラマ版では、生身の人間が演じる強みを的確に組み込んでいる印象だ。

そのほか、ジョエルとエリーが協力して建物に入る道を切り開くシーンやエリーの思い出の品であるジョーク集が登場するなど(第4話)、ゲーム経験者には嬉しい“わかっている”演出が多々。さらに、山寺宏一をはじめゲーム版のボイスキャストが勢ぞろいした吹き替え版も2月13日より配信開始。実写化のお手本ともいえるスタッフワーク&クリエイティビティで世界中の視聴者の心をつかんだ「THE LAST OF US」、シーズンフィナーレまでにどこまで進化していくのか期待が高まる。


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《SYO》

物書き SYO

1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説・漫画・音楽・ゲームなどエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。並行して個人の創作活動も行う。

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