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【インタビュー】『エゴイスト』鈴木亮平が見せる弱さや葛藤――「8割は自分」だからこそ伝わる生々しさと熱<ネタバレあり>

映画『エゴイスト』が話題を呼んでいる。国内外の大作ひしめく中、初週の週末興行収入ランキングでトップ10入りを果たし、鑑賞後のレビュー、満足度でも軒並み高い評価を叩き出している。

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鈴木亮平『エゴイスト』/photo:Maho Korogi
鈴木亮平『エゴイスト』/photo:Maho Korogi 全 22 枚
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<以下、映画中盤以降のネタバレを含んだ内容となります。未見の方はご注意ください>

役のほとんどは“自分”という感覚「それは本当に怖いこと」


――今回は公開後のインタビューということで、特に後半部分のやりとりを中心にお話を伺えればと思います。龍太の母親・妙子を演じられた阿川さんと共演されて、いかがでしたか?

素晴らしかったです。本当に自然体で、2人のシーンに関して、僕はセリフはほとんど決まっていなかったので、阿川さんが龍太の母親として投げかけてくれる言葉に自然に反応するだけでいいという状況でした。

――セリフが決まってなかったんですか?

特に食卓のシーンはそうでした。「別れた夫のことを話す」とか、何となく会話の内容は決まっていたんですけど。もちろん何度も繰り返すので、だんだん固まってくるんですが、監督は固まることを嫌うので…。

「別れた亭主から電話があってね」という阿川さんの言葉に対して「ちょっと待ってください。当てていいですか?」と言ってみたり…“生”の感じを求めるというか、そのテイクごとに新しいことが起きないとOKが出ないんですね。

――浩輔が妙子にお金を渡そうとするシーンでは、松永監督は阿川さんに「受け取らなくてもいいです」と伝え、鈴木さんには「絶対に受け取ってもらうように」と指示されていたそうですね。妙子としては当然「受け取れません」となるわけで、それをどう説得して受け取ってもらおうかと思案し、苦慮する様子が伝わってきました。

あれは本当に決まってなくて…。台本に書いてあることはガイドみたいなことで、それじゃ妙子さんを説得できないんですよね。当然、断られるわけです。どうすればいいのか…? いや、あれはそもそも断られて当然の無理な交渉なんですよね。

なんで自分はこれをそこまでして受け取ってもらいたいのか――? それを言葉にすると、自分が正気ではいられないような気がして…。でも、そこまで踏み込まないとこの人は受け取ってくれないんだというところに気づいていきました。

――最初は「龍太くんを応援してまして…」という言葉を口にされますが、言いながら「いや、この言葉は違うな」と感じているのが伝わってきます。かといって、単に「お願いします!」と頭を下げるのではなく、何とかして自分の“言葉”で思いを伝えないといけないという、役柄を超越して、鈴木さん自身の“誠実さ”みたいなものがにじみ出てくる最高のシーンでした。

「応援」と言ったはいいけど「その言葉じゃないんだよなぁ…」というのが自分でも感じられて。なかなか自分の気持ちを言葉で説明できなかったんです。

なんというか、ああいう撮り方で、本当に嘘のないものを見せたいと思ったら、半分くらいは“自分”を混ぜていかないと…いや、半分以上ですね、浩輔の8割方は僕自身だと思います。自分の見せたくない生々しい部分、傷みたいなものを見せないと成立しない役だったように思います。

――現場で浩輔という人物に向き合い、自身の中からわき上がってきた感情を取り込んだからこそ、繊細さや弱さ、葛藤が生々しく伝わってきたんですね。いま、おっしゃったような、“役に自分を混ぜていく”アプローチの面白さや大変さについて教えてください。

怖いですね。それって僕自身が魅力的な人間じゃなかったら、役も魅力的に見えないということじゃないですか? 僕は自分を魅力的だと思えるほど自信家ではないので、本当に怖いですよね。自分の繊細さであったり「自分だったらこうする」というのを前面に押し出さないといけないわけで…。

「自分の生々しさに賭ける」というやり方は、もしかしたら20代から仕事が順調にいっていた人間だったら自信を持って当然のようにできるのかもしれませんが…、僕は、否定とは言わないまでも、「求めているのは君じゃないんだよ」と突きつけられる経験を現場やオーディションなどで重ねてきたので「こんな自分で勝負できるわけがない」という強迫観念みたいなものがどこかにあるんです。

それでも勇気を持って「でもこれしかないから」と自分を解放させようと思えたのは、即興に近い今回のような撮り方の作品だったからこそできたのだと思います。

もちろん、セクシュアリティという部分で、ゲイの方たちがこの作品を観た時、リアルな物語、自分たちの物語であると納得していただけるものにしなくてはいけないということは、また別の側面としてありました。そこは監修の方と相談しながら作っていますが、そうは言っても、浩輔という役のほとんどは“自分”という感覚でやっていました。それは本当に怖いことでもありました。


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《text:Naoki Kurozu/photo:Maho Korogi》

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