没後15年以上経っても、その存在感が増し続けるエドワード・ヤン監督の『エドワード・ヤンの恋愛時代 4Kレストア版』公開を記念し、同作と『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』の一挙上映が8月11日、東京・TOHOシネマズ シャンテで行われた。
この日は幕間に、映画監督の濱口竜介(『ドライブ・マイ・カー』)と岨手由貴子(『あのこは貴族』)によるトークショーも行われ、エドワード・ヤン作品の魅力や、自身に与えた影響などについて語っていた。
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濱口監督は「改めて見てみて、こんなに悲痛な映画だったんだと。そこから希望や前向きなものを見つけていくことに気づき、より好きになりました」と『エドワード・ヤンの恋愛時代』についてコメント。特に影響を受けているのは、「カメラの置き方と、視点の見つけ方」だと言い、「この場所、この時間、この視点からじゃないといけないという“ある瞬間”にカメラを据えている。単なる人間関係だけじゃなく、その空間に人物が生きている。何とか自分の映画でも実現させたい」と魅力を語った。
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一方、岨手監督は「大人になるにつれて、見返すごとに好きになる」と『エドワード・ヤンの恋愛時代』への思いを明かし、「エドワード・ヤン作品は、他の町では置き換えられない物語を描いていて、そういう作品ばかり。そういうところが、特に好きなところです」。自身の『あのこは貴族』についても「おこがましいですが、かなり『恋愛時代』を意識した作品。東京を舞台に、東京でしかありえない、町と人の間に生じる摩擦や亀裂を、どうにか表現できないかと参考にしました」とふり返った。
2007年に59歳の若さで亡くなるまでに、7本の多彩な長編作品を発表してきたが、特に映画史に残る傑作と評される『牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』、続く『エドワード・ヤンの恋愛時代』の間で、作風やアプローチに大きな変化が生まれたとされており、濱口監督は「1本1本が本当に違うが、特に『牯嶺街』と『恋愛時代』の断絶は深いですね。モードの違いを感じます。そぎ落としつつ、豊かになっている」と分析。岨手監督は「『恋愛時代』から、登場人物を責めない、裁かない姿勢が現れ始めた」と指摘していた。
<『エドワード・ヤンの恋愛時代』あらすじ>
急速な西洋化と経済発展を遂げる 1990年代前半の台北。財閥の娘で会社を経営しているモーリーと親友のチチを主軸としつつ、同級生・恋人・同僚など10人の男女の人間関係を二日半という凝縮された時間のなかで描いた本作は、都市で生きることで目的を見失っていた彼らが、自らの求めるものを見つけ出していく様を見事に浮かび上がらせている。
『エドワード・ヤンの恋愛時代 4Kレストア版』は、8月18日(金)より TOHO シネマズ シャンテ、新宿武蔵野館他にてロードショー