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「パン屋再襲撃」柳楽優弥インタビュー 村上春樹作品の魅力を語る「自分の日常とうまく混ざり合うような世界線が面白い」

様々な名作を音声化するプロジェクトの中でも、特に注目を集めているのがAmazon オーディブルによる村上春樹著書のオーディオブック化。「村上さんの作品はすごく好き、オシャレですよね」とうれしそうに話す柳楽さんに、収録の裏話や作品の魅力まで広くインタビューした。

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柳楽優弥/photo:You Ishii
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2023年のいま、本は“読む”だけではないものとなった。いつでも、どこでも、気軽に音声で聴けるオーディオサービス・Amazonオーディブル(以下、Audible)の到来で、本は読むはもとより耳から聴く体験へと広がりを見せたわけだ。

様々な名作を音声化するプロジェクトの中でも、特に注目を集めているのがAudibleによる村上春樹著書のオーディオブック化。これまで「ねじまき鳥クロニクル」(藤木直人)、「騎士団長殺し」(高橋一生)、「1Q84」(杏・柄本時生)など人気作がラインナップされてきたが、8月22日より俳優・柳楽優弥が朗読する「パン屋再襲撃」が新たに加わることになった。


Audibleで「パン屋再襲撃」を聴く


「パン屋再襲撃」は1986年に発売された短編集で、表題をはじめとした初期の傑作6篇が収録されている。これまで映像、舞台化されることも多い村上作品ゆえに、「実はまだ読んだことがなかった」というビギナーにも短編だからこそ入りやすい、うってつけの1冊となっている。

「村上さんの作品はすごく好き、オシャレですよね」とうれしそうに話す柳楽さんに、収録の裏話や作品の魅力まで広くインタビューした。

――これまでも様々な俳優さんたちが村上春樹作品のAudibleを収録されています。柳楽さんにオファーがきたときは、どんなお気持ちでしたか?

ただただ嬉しかったです。村上作品は好きですし、僕の初舞台が「海辺のカフカ」だったこともあり、自分の中でご縁を感じる存在でした。今回呼んでいただけたときは「ぜひ、やらせてください!」という感じでした。

――初舞台のご縁もありながら、もともと村上作品を読んでいたり、映像作品をご覧になったりしていらしたんですね?

はい。直近だと、『ドライブ・マイ・カー』ですね。カンヌに出品している作品が好きで、特に賞を獲っているものは観るようにしているんです。『ドライブ・マイ・カー』は面白かったですよね。読んで印象的だったのは「ノルウェイの森」です。そのほかも、いわゆる有名な作品は読んでいると思います。

僕の中高時代は、村上さんの作品が流行っていたんですよ。世界的にも人気なので「人気のポイントってどこなんだろう」と探るような気持ちで読んでいました。

――柳楽さんは「パン屋再襲撃」の朗読をされました。最初に読んだときはどういう感想を持ちましたか?

初版は1980年代なんですよね。そんなに前からあるタイトルだと知らずに読んで、本当に色褪せない作品だと思いました。ユーモアがあって、ユニークな表現がやっぱりオシャレでしたし、日本だけでなく世界の方が虜になる理由のひとつなのかなと感じました。

僕が学生の頃に読んだときよりも、舞台をやったときよりも、より村上さんの世界観の面白さに引き込まれた感じがあります。「ああ、こういう作品と出会えてよかったな」と思えるような内容でしたし、さらに自分も関われているわけで、そこもやっぱり嬉しくなりました。

――柳楽さんのお気に入り作品のひとつになったんですね。いざ収録されて、手ごたえはいかがでしたか?

いや、僕…本当にわからないんです(苦笑)。もちろん家でも練習で読んだりしたんですけど、あまり声優業も得意ではないタイプなのでどうなのかな?と。1ページに結構時間はかかりましたけど、それでも楽しかったです。

――村上作品は「――」や「“”」など独特の表現も多いですよね。読むにあたり工夫もされたんでしょうか?

そうなんですよね。特に最初の頃は「どういうふうに読んだらいいんだろう?」と考えました。ディレクターさんの指示も仰ぎながらやっていきました。そういった独特な言い回しは、読んでいくと何となく癖になってくる感じもあって。「ああ、こういうところがやっぱり面白いんだな」と声に出して読むことで改めて感じました。

収録のときには、全篇を通してあまり個性的にしないようにというか、変な意識を持たずにやるようにしました。自分も聴いているときに「聴き心地いいな、スムーズに話している人の声だな」と思いたいので、とにかく聴きやすさを重視して臨みましたね。

――聴き手の目線になれるということは、柳楽さんももともとAudibleを愛用していたんですね?

はい。といってもデビューは今年に入ってからなんですけど…(笑)。僕の一番多い聴き方は英語の勉強です。いい教材との出会いをいつも求めているんですが、その点、Audibleはすごく便利なんです。本を読むという心構えより、もっとフラットに向き合えるというか。聴き流したりもできますし、意外と3時間ぐらいで分厚い本を1冊聴けちゃうんですよね。いろいろな使い方ができるのがいいなあと思います。

小説はこれから聴いてみたいんですけど、きっと聴き流しているだけでも「なるほど」と感じる話もあったりするんだろうなと思うんです。特に僕は仕事で台本の文字をずっと追っているから、聴いているほうが好きなんですよね。耳だけで勉強する、学ぶのも今の時代ならではで面白いなと感じます。

――「パン屋再襲撃」の中で、柳楽さんのお気に入りの1章はどれでしたか?

「ねじまき鳥と火曜日の女たち」が特に好きでした。日常なんだけど、絶妙にファンタジーな世界が漂っている点がすごく魅力的でした。自分の日常の中でも、こういう考え方ができたら…なんかこう、くすっと笑えるような瞬間があったりするんだなと思って。自分の日常とうまく混ざり合うような世界線が面白いなあと読みながら思っていました。

――おっしゃる通り、日常だけれども少し違う世界線の物語というのが、魅力のひとつなのかもしれないですね。

普段生活していると、日常にちょっとファンタジーを求めたくなりませんか? 「スーパーマン、飛んできて!」とかじゃなくて、そうだな…例えば「偶然、昔好きだった人と再会した」とか。そういう絶妙なファンタジー感が村上作品にはあるから、そこがすごく好きなんですよね。

村上さん視点で、滑稽なことを文字にする表現がすごくオシャレでユニークというか、ユーモアが混ざっている感じがしますよね。世の中のちょっと嫌なこととか、ちょっと疲れたなと思う瞬間を、こういう視点で見られたらと思うんです。ちょっとくすっと笑えるような、そういう村上さんユーモアを好きだなあと思いました。

――最後に、柳楽さんのAudibleを楽しみになさっている読者に、「ぜひこんなシチュエーションで聴いてみて」というお勧めなどをお願いします。

例えば、通勤や通学で電車に乗るときに聴いてみて、「偶然、電車のシーンが出てくる」とか、よくないですか? 本の世界と実際の現実がうまく交わる瞬間、そういう偶然とかが僕は結構好きなんです。小説を声で聴いて“ならでは”の臨場感を楽しんでもらえたら嬉しいです。


Audibleで「パン屋再襲撃」を聴く

〈提供:Audible, Inc.〉

《text:赤山恭子/photo:You Ishii》

映画ライター10年目突入 赤山恭子

1980年代生まれ、昭和の残党。兵庫県出身。日本大学芸術学部放送学科卒業後、出版社でエンタメ週刊誌、月刊誌の編集者に。その後、映画会社に入社しディストリビューター(権利販売)/映画サイトの編集者を経て独立。現在は映画、ドラマ、舞台などに出演する俳優、監督にインタビューや現場取材が主、アベレージ年間300本。趣味はお酒、英語の勉強、引越し。

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