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【インタビュー】杏×呉美保監督、みんな違うからこそ意識したい“寄り添う”ことの大切さ

「映画、芸術、メディアを通して女性を勇気づける」をスローガンに掲げる非営利映画製作会社「We Do It Together(WDIT)」が企画制作したアンソロジー映画『私たちの声』から呉美保監督と杏のインタビューをお届け。

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『私たちの声』杏×呉美保監督/photo:Jumpei Yamada
『私たちの声』杏×呉美保監督/photo:Jumpei Yamada 全 15 枚
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コロナ禍を経て再び他者を認め合う時代へ


――このアンソロジー映画では、ジェンダーギャップをテーマにしていますが、全7作品とも共通して、理解者とか手を差し伸べる存在の重要性も描いていますね。

呉監督:いろいろな国で、女性たちが今置かれている状況、抱えている問題を知ることができるので、すごく大事な、そして必要な映画だと感じました。それこそジェンダー問題だけじゃない。多様性という意味で、もっともっと世の中が開けていくといいなと思っています。

新型コロナウィルスの蔓延をテーマにした作品もありましたが、世界各国がコロナで閉鎖的になったこともありました。そこでもう一度、自分を見つめ直せたからこそ、みんなが再び他者を認め合おうとしている。この映画からはそれを強く感じました。

:各作品それぞれ、女性キャラクターをはじめ、登場人物の多くがどこかしら閉塞感を抱えています。そこに風穴が開いて、差し込んできた光が心地いいなとか、ちょっと救われるという展開が、どの国の作品にも含まれていますよね。それぞれの国には、異なる事情や違った背景があるとは思う。それでも、同じ光のようなものを感じられた気がしました。

――「WDIT」の主旨についてはどう思われますか?

:寄り添うことの大切さや難しさが、今、注目されていますよね。 核家族化していたり、ネットワークの発達によりコミュニケーションの形が変わってきたり。SNSのように以前は無かったツールが生まれて、これまでとは違ったコミュニケーションの感覚も生まれている。そんな時代だからこそできることはあると思います。「We Do It Together」のように。変わるチャンス、変えられるチャンスがやってきていると感じます。こういった意義のあるメッセージ性を持つ作品に参加できたのはとても嬉しいです。

呉監督:少し前に、#MeToo運動がありましたよね。声を上げる、共鳴することのひとつの代名詞になっています。「WDIT」も、一緒に頑張ろうというひとつの大きな共通認識。声を上げるのはとても勇気がいることで、特に日本人、ましてや著名人が「私もです」と言うのは難しい。周囲に忖度してしまう瞬間もあると思うんです。でも、個人の権利や、日本を始め世界に対してどういう社会になって欲しいかという希望、どういう人が増えてほしいかという未来を考えて、ちゃんと声を上げるのはすごく大事。そこを素直に言える社会にどんどんなって欲しい。本作もそのきっかけになると嬉しいですね。

――#MeToo運動は、告発や告白を主としたものでしたが、WDITはここから一緒に新たな世界を創り出そう、前に進んでいこうという次の段階。前向きなムーブメントですね。

:最近、母親としてインタビューを受けることもあるのですが、そういう立場で話をするときには、「がんばらない」とは声高に言いますね。それこそ家事と育児と仕事なんて、WDIT。つまり、もう皆でやっていかなくては本来成り立たないものだったのだと思います。

今は何とかやっていても、それが本来のあるべき姿や自然なことではないかもしれない。もちろん、いろいろな形があるし、人によって理想も価値観も違いますが。だからこそ、「私、大変なの」と言う人に、「もっと大変な人もいるよ」と言うのではなく、その声をちゃんと受け止めることも大切だと思うんです。私は、取材だとつい取り繕う部分もある。でも、家庭について語るときは、肩肘を張りすぎず、「実は…」というところは積極的に、素直に出していきたい。それも、WDITに繋がるのではないかと思っています。

――最後にお2人が目指したい共生社会、それを目指すにあたりどうあったらいいなという希望はありますか?

呉監督:私は子供を産まなければ気づかなかったことが多く、この映画にもそういったことをいっぱい描きました。子育てについて言えば、保育士さんや学校の先生たちにすごく助けられて来ましたが、同時に、日本の子供教育に関わる人に対する待遇や評価の低さを強く感じています。良い先生なのに辞めていく人も多いんです。もっと高待遇だったら、続けてくれていたかもしれないのに。今、気になることと言えば、そういった社会の未来に大きく関わる教育問題ですね。

:日本では、他者の介在がとても難しい気がしています。困っている人に他人が手を差し伸べにくいというか。二つの国で暮らしをしていると、違う国の違うやり方を知ることができます。ならば、二つのいいとこ取りをしていきたいと思っています。

情報が発達したこの世界では、同じ事柄に対して極論も見えやすくなるし、良いアイディアもあまり良くない考えも見えてきたりする。だからこそ、古今東西の違う文化や昔のいいところ、これから起こる未来のいいところを選べる状況にもなってきている。それなら、いろいろな国の良い部分を取って行くという考えもありだと思うんです。習慣や文化にとらわれすぎず、少しでもみんなが意識して自分の手で自分のやり方を選びやすい社会になったらいいと思います。



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《text:June Makiguchi/photo:Jumpei Yamada》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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