突然起こった製鉄所の事故により、全ての出口を失い、時まで止まってしまった町――変化を禁じられた世界で、止められない“恋する衝動”を武器に、未来へともがく少年少女を描くアニメーション映画『アリスとテレスのまぼろし工場』が9月15日(金)より全国にて公開となる。アニメーション映画の新時代の幕開けにふさわしい、本作の魅力をひも解いていく。
『アリスとテレスのまぼろし工場』公式サイト
業界最高峰の才能が集結!
話題のアニメ制作スタジオの初劇場版アニメーション
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世界屈指のアニメ大国・日本。我々観客が求めるレベルは日に日に上がっており、「スタッフ・キャスト」「スタジオ」「ストーリー」等々、多くの項目をクリアせねば観たい!とならないのが現状だ。そんななか、『アリスとテレスのまぼろし工場』は「よくぞ!」と身を乗り出したくなるメンバーがコラボレーションを果たした。
「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の脚本や、映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』の監督を手掛けた岡田麿里監督が脚本・監督を担当したオリジナル映画であり、『さよ朝』スタッフが再集結。しかも本作は「呪術廻戦」「チェンソーマン」等を次々と放ち、いま最注目のスタジオ「MAPPA」初のオリジナル劇場アニメーション。さらに、主題歌はアニメーション映画への初書き下ろしとなる中島みゆき。台本に心を奪われた中島が快諾し、映画とリンクする「心音(しんおん)」を創り上げた。
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キャラクターに命を吹き込むのは、「呪術廻戦」虎杖悠仁役で知られる榎木淳弥をはじめとする実力派ボイスキャストに林遣都と瀬戸康史が加わった豪華布陣。予告編時点で風・光・空・工場等の微細な表現やキャラクターの動作の滑らかさ、目を奪われるカメラワーク等の映像美や思春期の痛みを体現した熱演が垣間見られ、常に挑戦を続けるスタッフ・キャストが集結した「絶対に見逃せない一作」の呼び声も高い。
“自分事”として没入してしまう説得力
「恋する衝動」と「生きる意義」描く
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コロナウイルスで世界は激変し、働き方に個人の在り方など日々価値観のアップデートを求められる中で良きも悪しきも旧来の“常識”が崩壊しつつある現代。自分たちが欲するエンターテインメントの形もわからないまま、渇きだけを抱えて生活に追われる方も少なくないのではないか。そんな混迷の時代に、稀代の才能群によって産み落とされた『アリスとテレスのまぼろし工場』には、「そうか、自分はこれが見たかったんだ!」と気づかされるような「無意識下の苦悩」を祓(はら)う輝きが満ちている。
物語の舞台は、製鉄所の爆発によって出口が奪われ、時までも止まってしまった地方の町。終わりの見えない冬の中、「いつか元に戻ったときに不具合が起きないように」と変化を禁じるルールが町内に敷かれ、14歳の中学生・正宗は鬱屈とした日々を過ごしている。そんなある日、正宗は同級生の睦実に導かれ、言葉も話せない狼のような少女と出会う。それは、終わらない日常に亀裂が入る前兆だった――。
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本作の秀逸な点は、一見すれば独創的かつフィクショナルな設定が、我々自身が立っている現実とオーバーラップしてくるところ。正宗たちが置かれる「特定のエリアに閉じ込められて変化のない生活を送らなければならない状況」に、身に覚えはないだろうか。そう、コロナ初期の緊急事態宣言×外出自粛期間の混乱だ。「自分がもしこういう状況になったら?」ではなく、「あのとき自分もそうだった」という実体験と照らし合わせて“自分事”として没入してしまう説得力が、本作には備わっている。
そして、岡田麿里という作家の圧倒的な描写力。“心が叫びたがってるんだ”状態ではないが、これまでも綺麗ごとではないリアルな本音を掬い取ってきた岡田は、真の意味で信じられる人物たちを現出させる名手。『アリスとテレスのまぼろし工場』では「恋する衝動」と「生きる意義」の二本柱が濃密に描かれるが、思春期特有の「恋」という感情に対する羨望や不安、拒絶や没頭が恐るべき解像度で掘り下げられていく。正宗たちと同年代はもとより「かつて14歳だった」私たちにとっても、他人事とは思えない「当時に引き戻されてしまう」痛みが刻み付けられているのだ。
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また当然だが、町に囚われているのは子どもたちだけではない。大人たちも含めた一言では言い表せない「衝動と葛藤」も、注目いただきたいポイントだ。元の世界に戻りたいと思う人間もいれば、このまま居座りたいと思う人間もいる。しかもそうした立場は普遍ではなく、状況や心模様によって瞬間瞬間で変わるものだ。人はいつだって幸せを求めてしまう生き物だから――。こうした「紛れもない真実だが、物語ではなかなか言及されてこなかった」領域にまで到達しているあたり、見事としか言いようがない。
岡田は本作の設定について「時代の閉塞感とかよく言われますが、皆が同じように同じ気持ちを感じることってないですよね。でもこの数年、私たちはそれを経験したと思うんです。以前は変化を求めていたのに、いざガラッと変わってしまった時に、どうやって自分を守っていくのか。そんな新たな状態を、全体で味わったというのは大きな出来事でした」と述懐。
その言葉に象徴されるように、変わってしまった世界で必死に適応しようとしてきた我々の苦労も、変われない苦悩も、それらが混然一体となった本当の姿も――。すべてを抱きしめてくれる『アリスとテレスのまぼろし工場』は、まさに時代が必要とする新たなるアニメーション映画の金字塔だ。
満足度88%! 「もう一度見たい」「映像がとにかく凄い」試写会で上がった声
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シネマカフェでは9月8日(金)、シネマカフェユーザーを招待した『アリスとテレスのまぼろし工場』特別試写会を実施。上映終了後に実施されたアンケートでは「とても満足した」「満足した」の声が88%と高評価を獲得! 上映直後の客席は興奮冷めやらぬ様子で「感動した」という声が最多を占め、「胸が熱くなった」「温かい気持ちになった」が続く結果となった。
岡田監督の高密度な心情描写×物語、そしてMAPPAこだわりの映像美に打たれた観客が続出。「もう一度見たい」の声が81%を記録したのがその証拠だろう。「フラットな状態で見ても楽しめるし、何回か観たくなる」「解釈をいろいろ話し合いたい」との感想も寄せられ、リピーター誕生の気配が立ち込めていた。
それを上回る高い数字をたたき出したのが、「おすすめしたい」86%だ。オススメポイントとしては「映像の美しさがとにかく凄かった」「迫力のある映像を是非映画館で見て欲しい」「キャラクターの揺れる心情が事細かに表現されている」「世界観に入り込めるストーリーと美術が融合している」と、作りこみのレベルの高さ、そしてスタッフの才能が結集した結果である“総合力”に言及する感想が多く見られた。ちなみに、試写会とセットで開催されたトークイベントに登壇した岩井勇気(ハライチ)は、「岡田麿里さんはやっぱり、感情の動きを表現するのが上手い」と絶賛。岡田監督とMAPPAとの相性の良さを称えつつ、「変化を“悪”とした世界観の中で、岡田さんの描く心情の変化がより際立つ。自分の一番うまい部分を出せるような設定になっている」と岡田監督&アニメファンならではのディープな目線で分析していた。
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岩井に代表されるように、岡田監督の作家性にうならされた人々が後を絶たない。「岡田監督ならではの心を掴まれて撹拌(かくはん)される心持ちになる」「恋とは、と考えさせられる」「思春期の切ない、青い気持ちが蘇る」「変化が怖い方も変化したい方にも見てほしい」と、変化を禁じられた世界&恋する衝動を描いた本作のテーマに感化されたことがうかがえる熱いメッセージが多数寄せられた。観る人を「変化」させる可能性が詰まった本作、その中身は劇場で目撃していただきたい。
『アリスとテレスのまぼろし工場』公式サイト
『アリスとテレスのまぼろし工場』は2023年9月15日より全国にて公開。
©新見伏製鐵保存会
〈提供:ワーナー・ブラザース〉