ケイト・ブランシェット主演の話題作『バーナデット ママは行方不明』でメガホンをとったリチャード・リンクレイター監督が、本作は2017年に亡くなった母に捧げる物語であることを明かした。
『6才のボクが、大人になるまで。』でアカデミー賞6部門にノミネートされ、『ビフォア』シリーズでも知られるリンクレイター監督。本作は、ケイト演じる天才カリスマ建築士バーナデットが、出産を機に仕事を引退し家庭に入った女性に焦点を当てている。リンクレイター監督は、バーナデットに自身の母を重ねて見たと言う。
「自分の母が妥協するのを見てきた。母の時代は子育て優先でキャリアは後回しだった。母には夢があったのに、自分たちが邪魔してる気がした」と現代よりもさらに、女性が自由に生きづらかった時代に見た母について語り、「母のような女性を本作で描いたんだ」と明かした。
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また、娘が危うい状態で生まれたからこそ、余計に子離れができないバーナデットについて、リンクレイター監督は「自分がこの世に送り出した小さな人間が無事に育つように守るのは、親として当然のことだからね」とし、「でもいつまでそれを続けられる? いずれその子は社会に出ていくことになり、親は自分の道を歩むことになる。これは彼女が自分を再発見する物語だ」と続ける。
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リンクレイター監督が母にそう望んだように、本作ではバーナデットは夢の続きに向かって飛び出していく。ビリー・クラダップ演じる夫エルジーは、バーナデットと同様に優秀で、常に仕事に夢中だ。かといって、妻や子どもに愛情を注いでいないわけではなく、家族3人円満ではある。しかし、エルジーとバーナデットの間には本人たちも気づけないほどの深い溝が生まれていた。
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リンクレイター監督は「関係が長くなるとマンネリ化してしまって、相手のことをあまりよく見なくなる。子どもや仕事のことで頭がいっぱいになってしまって、以前のように心が通じ合わなくなる。彼女を救う方法についての解釈がまったく違う」とすれ違う夫婦について語り、「でも2人には許し合う心がある。自分にとって大事なことを再確認する。人生の試練として誰もが経験することだよ。厳しい試練だけど、それをどうにか乗り越え、誓いを新たにして新しい関係を築けば報われる」と加えた。
さらにリンクレイターは日本の映画について「大好きだ」と語り、「どの時代にも偉大な監督がいるし、才能ある若い監督が次々と生まれてるよね。日本映画が映画業界に与える影響は大きいよ」とも語っている。
『バーナデット ママは行方不明』は9月22日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国にて公開。