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【特集】『愛のゆくえ』 長澤樹×寒竹ゆり監督(「First Love 初恋」)スペシャル対談

映画にドラマにCMにと、幅広い活躍を見せる俳優・長澤樹。3月1日より全国順次公開の映画『愛のゆくえ』では、厳しい環境の中で翻弄される主人公・愛を、思春期特有の複雑さと繊細さをもって表現している。

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長澤樹、寒竹ゆり監督/Photo:You ishii
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映画にドラマにCMにと、幅広い活躍を見せる俳優・長澤樹。2017年にTVドラマで演技デビューを果たして以来わずか数年の間に、多くの話題作に出演してきた。3月1日より全国順次公開の映画『愛のゆくえ』では、厳しい環境の中で翻弄される主人公・愛を、思春期特有の複雑さと繊細さをもって表現している。

今回、2022年11月に世界配信がスタートしたNetflixシリーズ「First Love 初恋」で、脚本・監督を務めた寒竹ゆり氏との対談が実現。長澤さんに手話演技という新しい挑戦への扉を開いた監督と共に、演技、そして新作について語ってもらった。

『愛のゆくえ』あらすじ

北海道で暮らす幼馴染の、愛と宗介。

宗介の母はうまく愛情を表現できず、

愛の母は少しおせっかい。

それでも二組の親子は懸命に生きていた。

しかし、そんな日常がある日突然壊れてしまう―。

喧嘩をして家を飛び出した宗介を探している途中、愛の母が亡くなってしまう。

愛は父親に連れられて東京へ、宗介は北海道に残った。

大自然に囲まれた北海道と正反対の都会。

引き離された孤独な心を抱えた少年少女は、苦悩の中で一体何を見つけるのか…。



『愛のゆくえ』公式サイト

長澤樹 × 寒竹ゆり監督(「First Love 初恋」)スペシャル対談

-再会の瞬間に、お二人が両手を広げてハグしていたのを見て、きゅんとしてしまいました。

寒竹お久しぶりだったよね。「First Love 初恋」で、主人公の妹・並木優雨を演じた樹がクランクアップした日から会えてないよね。

長澤2年ぶりです。実はあのとき、『愛のゆくえ』の撮影をしていたんです。

寒竹同時に撮影していたの?

長澤交互に、という感じでした。

寒竹そんなに働いていたの!? 『愛のゆくえ』の愛ちゃんは出会った頃の樹の印象に近かったから、いつ撮ったんだろうと思っていたの。最初に会った時は樹が14歳、中学生だったね。撮影がコロナ禍で延びて一年ぶりに会ったら、女の子ってやっぱり変わるものだなと思って。今日もそうだけれど。この年代の女の子って良くも悪くも変化するけど、樹は素敵な女性になっていて嬉しい。

長澤ありがとうございます!

寒竹我が子みたいな感じで活躍を見守っています。産んでないですけど(笑)。「First Love 初恋」で樹が一員だった並木家は本篇の通り和気あいあいで。空気感を作るために撮影前にみんなで過ごす時間もあったし。

長澤楽しかったですね。並木家はみんな赤ばかり着ていたし、私は真冬にタンクトップに短パンだったし(笑)。私が一番薄着だった記憶があります。家の中にいても息が白くて。みんな、夏の設定なので白い息が出ないように氷を舐めろと言われていました。私は手話だったので舐めなくてよかったんですけど。手話って違う言葉みたいで、気を取られちゃう。優雨はずっと手話で会話をしてきたわけだから、それはよくないなと思って。愛はあまり感情を出さない役。劇中では紹介されていませんが、場面緘黙症という人前では話せなくなる症状を持っているという裏設定があって。台詞がない分、目線とか表情とか、間とか動きとかで、愛として出せる最大限を出そうと思っていました。そこは、手話とも共通しているところでした。

―どちらの役もセリフ以外の表現がとても重要となる役。でも、全く性質が違います。

寒竹しゃべれるけどしゃべらない。音声言語を持たないけれど、すごく色彩豊かに感情を表わす。そんな二人を、並行して演じていたというのが驚き。手話指導をしてくださったお一人は南雲麻衣さんというデフのダンサーの方で。取材させていただいて、音声言語をコミュニケーションの拠り所とする我々は、何かを伝えようとするときに怠っている部分が多々あるなと気づかされて。手話で伝える上で、ノンバーバルな表現はすごく重要で、同じ手話でも表情や視線、相手との距離などによってニュアンスが変わってしまう。話して通じるからいいやと我々が楽している部分を、彼女はとても豊かに表現しようとしていて、すごく魅力的だった。それを樹に体得してほしいって言ってたよね。だから表情も大切にしてもらって、たぶん表情筋とかすごく意識させられたよね 。

長澤そうなんです。それが自分に足りてなかったんだなあと強く思いました。ミステリアスとか大人っぽい役が多いので、表情も言葉もテンションもあまり動かさないんです。だから優雨のような役をやるとすごく勉強になる。その時に自分に必要な役だったんだなと。

寒竹「First Love 初恋」では、若いキャストはすべてオーディション。樹に会った時は迷いがなくて。これは『愛のゆくえ』の役柄にも通じるのですが、ノンバーバルな部分があらかじめ用意されたものになってしまうと嘘くさくなってしまう。当日は、みんな台本を覚えてプランを練って来るんですが、そうすると相手の台詞を聞いてなかったりとか、うまく見せようという思考の方が前に出てしまったりだとか、もっと言うと目の前の大人によく見られようとか、余計なものがくっついて来ちゃうことがあって。でも、樹は役として目に映るものだけに没入して人生にフォーカスしてた。こちらのことなんてお構いなしに。あと生き様として逃げ道を取っておいて無いなというか、この道で生きていこうとする覚悟を感じました。

長澤まさにそうです!

寒竹なんか脱藩浪人みたいというか(笑)。退路を断って、しくじったら斬られるみたいな捨て身感があった。私が見つけなくても見つかっちゃうんだろうなとも思ったし、だから早く撮っておきたいなと。あと、女の子には季節みたいなものがあって、どんどん目まぐるしく変わる年頃なので、樹のその季節を撮りたいと言うか横取りされたらやだなと言うか。そう思わせる俳優なんだよね。

-『愛のゆくえ』を観て、ご自分の目は間違っていないなという印象ですか?

寒竹愛ちゃんは無口な女の子役ということで、本能的なリアクションがより重要になってくる。言葉にしない分、何かを見て驚くとか、情動が表出しちゃうとか、そういったことを一つ一つのシーンで丁寧に誠実にリフレクトしているなと思った。そういうのを頭で考えて演じていると観ている人はわかっちゃうから。あと、「あ、樹ってこんな声してたんだ」と驚いて。もちろん現場では会話していたはずなんだけれど、樹を優雨として見ていたから。今回モノローグを聞いた時にハッとしました。すごく上手だった。

長澤よかったです! あれ、すごく撮り直したんです。

寒竹抑揚とか目線とか、抑えているけれど観る者の感情をちゃんと誘っていって。でも大げさじゃない、すごく微妙なところが上手だった。という、いち観客の意見です。すごく真面目に観たんだから(笑)

長澤嬉しいです。今聞いたから「そうです」って言っているわけじゃなくて。さっき監督が話していた逃げ道を捨てているというのもそうで。自分は女優をやるために生まれてきた、それ以外の道はないと思うんです。失敗も成功もないし、正解自体がないからとにかく進み続けるしかないと思っています。

寒竹14歳はやっぱり14歳が演じるのが一番いい。そういう意味でも『愛のゆくえ』はとても貴重なフィルムになったと思う。でも実際は、台本に対する理解が追いつかなかったり、俳優自身がキャラクターの言動や行為の裏に潜んでいるサブテキストみたいなものを読み取れなかったりする。人生経験もそれほど豊富ではないし引き出しもそれほどない。それが普通。それを引き上げるのが我々の仕事だけれど、何らかの事情でそれができないこともある。適任者が見つからないことも。だから30歳近い俳優が高校生の役をやっているというケースも多い。そこをクリアできるのであれば実年齢で、そのシーズン真っ只中で撮影したほうが目の輝きも躍動もその瞬間にしかないものを捉えることができる。それを可能にするジャストの世代の俳優というのは本当に貴重。

樹は、そこを達成させてくれる俳優だと思う。そういえば、聞きたかったことがあって。座長(主演)をやってみてどうだった?

長澤座長感なかったですよ、たぶん。年上の方ばかりで。共演の窪塚愛流君も2歳上ですし。撮影に入る前は「主演だ、頑張らなきゃ」と思っていたんですけれど、いざとなったら精一杯な部分もいっぱいあったし、ずっと一生懸命だったんで、いつも皆さんに支えてもらっていました。

寒竹でも座長が現場の空気を作るから。監督も現場に適した空気を作るために努力はする。でも、意識していなかったかもしれないけれど、樹の一生懸命さが現場の雰囲気を作っていたんじゃないかな。

-監督は長澤さんの成長をどんなところに感じていますか?

寒竹樹の顔を見に、劇場にみんなが行く。芝居もいいところはいっぱいあったけれど、それだけじゃなく、タイトルを背負うとか、そういう頼もしさを感じますね。主演となると、ずっと見ていたいか、いられるかが重要。スクリーンタイムが当然長くなるので、美人とかハンサムとは別の次元の、お客さんを引きつけていられる顔と風格が必要。その時代にその役を引き寄せる運や磁力みたいなことも含めて、そこに呼ばれる人はそう多くない。それに、『愛のゆくえ』は宮嶋風花監督のごくパーソナルな作品。思い出も強いこだわりもあるはず。そこを託されたということは俳優としてすごく光栄なことだと思う。演じきってもらえて監督はとても嬉しいんじゃないかな。

長澤監督の個人的な物語を背負う重みはすごく感じました。というのも、愛という女の子がほぼ監督なんです。物語もフィクションではあるんですが、半分ぐらいは監督の実体験で、お話を聞いているうちにだんだん重みが増してきて。撮影に入ったらそんなこと考える暇はなかったんですけれど。役づくりの期間は、ずっと監督と一緒にいて、ずっと話をしていました。そのくらい一心同体という感じがしていたし、自分が監督を表現するんだという気持ちで臨みました。

-実際に撮影に臨み、手応えは感じましたか?

長澤監督がOK出す時は、あ、オッケーだよね、そうだよねってわかるんです。逆に涙は出たけど違うよなと思ったら絶対にNGが出る。最初からどこか似ているところはあったんですが、途中からほとんど同じ考えになっていけたという感じでした。それに、撮影している感じはなかったです。愛として存在しているという感じで、カメラもほとんど意識していなかったです。カメラマンさん始めスタッフの皆さんと信頼関係が築けて、撮ってもらっているときも心配や不安が本当になくて。今の表情もちゃんと撮ってくれているから大丈夫だという自信がどこかにあって、結構自由にやっていました。

寒竹樹は本当にいろんなことができると思う。俳優によって言える台詞のレンジみたいなのがあって。私は脚本も書くので、この俳優を魅力的に見せられる台詞の幅はこの辺りかなとか、バックボーンとか考えるの。作曲家がその歌手が出せるキーの音域内で曲を書いたり、響きのスウィートスポットを探るのと似てるのかな。樹はそのレンジが広い。もちろん、愛ちゃんみたいな役はばっちりハマるけれど、ふざけたところもある人間だから、ふざけ散らかした役もやらせてみたい(笑)

長澤やってみたいです。そういう役も。

寒竹すごく汚い顔とか。事務所の人が「大丈夫ですか?」って言っても、何も気にせずやると思うし。

長澤やりますよ!(笑)

寒竹「First Love 初恋」と『愛のゆくえ』でもわかるように振れ幅もある。樹はまさに俳優部の人。人によっては特別に扱われたい人もいるけど、撮影部があって衣裳部があるように、役者はいち俳優部として自立しているべきで。そういう意味では気を使わなくてよくて。撮影中は角っこに放っておいても作品のために自分でやるべきことを準備して、撮影に臨んでくれるという信頼感がある。でもわかんないな、十年後会ったら(笑)

長澤変わっていたら監督に叩きのめされそうです(笑) でも、また是非ご一緒したいです。

寒竹今年19歳でしょう。これがまた特別な年齢。樹はどんどん大人になっちゃうから、急がないとね。

長澤監督は普段は何してるんですか?

寒竹普通に生活者として暮らしてます。山に住んでると落ち葉集めたり、薪割ったり、何かとやることがあるんですよ。今度遊びにおいで。

長澤じゃあ今度、薪割りと落ち葉集めをやりに行きます!


『愛のゆくえ』公式サイト

『愛のゆくえ』は3月1日(金)より全国順次公開。

(C) 吉本興業

〈提供:吉本興業〉

《text:June Makiguchi/Photo:You Ishii》

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