「イカゲーム」でアジア人俳優初のエミー賞主演男優賞に選ばれたイ・ジョンジェや、映画『マトリックス』シリーズのキャリー=アン・モスが出演することでも話題の「スター・ウォーズ:アコライト」(以下、「アコライト」)が配信開始となった。
いきなりスリリングなライトセーバーアクションから幕が開き、お馴染みの世界ではあるものの、まだ誰も知らないキャラクターによる全く新しい物語が始まった。
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「マンダロリアン」に代表される「スター・ウォーズ」の配信ドラマシリーズで、デイヴ・フィローニやジョン・ファヴローに続くクリエイターを務めているのは、「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」を手がけたレスリー・ヘッドランド。
もともと「スター・ウォーズ」の大ファンで10代のころは二次創作を書いており、今作でマスター・ヴァーネストラを演じているパートナーのレベッカ・ヘンダーソンによれば、右手にレイアのタトゥーがあるというほど“ガチ”のファン。
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「アコライト」では、『スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)』の約100年前、「ハイ・リパブリック」と呼ばれる共和国(リパブリック)とジェダイが全盛期だった時代を舞台に、「スター・ウォーズ」で初めて<ダークサイド>の視点から物語を描く。これまで小説やコミックでのみ描かれてきた「ハイ・リパブリック」の初の実写映像化でもある。
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初回2話では、銀河に多くのジェダイが存在し、戦争もなく平和に包まれていた“光”の時代に、謎に包まれた刺客とその師<マスター>らしき者が現れた。
赤く発光するライトセーバーを持ち、カイロ・レンを思わせるようなマスクを被っているマスターによって訓練されたメイ(アマンドラ・ステンバーグ)は怒りと憎しみに満ち、ジェダイがもたらしている「平和は偽り」だと繰り返す。
メイは、マスター・ソル(イ・ジョンジェ)の元パダワンで、いまは個人契約の修理人をしているオーシャ(アマンドラの二役)と双子。ルークとレイア以来の双子が主人公となるわけだが、双子の間のシンパシーや独特の繋がりは、思えばフォースと近しいものがある。
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冒頭から、初めて目にする星でライトセーバーのアクションシークエンスから始まるのが新鮮だ。だが、フードを被ったメイはなぜかライトセーバーを持っておらず、鎖帷子と胸板のついた胴を纏い、手裏剣のような短刀を駆使しており、まるで忍者のよう。
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注目したいのが、そんなメイとオーシャを演じ分けるアマンドラ・ステンバーグだ。映画『ハンガー・ゲーム』の少女ルー役で一躍知られるようになり、映画『エブリシング』『ヘイト・ユー・ギブ』『ディア・エヴァン・ハンセン』などで俳優やアーティストとして活躍、活動家としての顔もある。
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2016年にノンバイナリー(性自認を男性か女性、どちらにも当てはめないこと)をカミングアウト、黒人女性を主人公にしたコミックブック「Niobe」シリーズ(共著)も手がけており、その活動は多岐にわたる。
キレのいいアクションもさることながら、そんな次世代を牽引する存在のアマンドラが「スター・ウォーズ」の世界にやってきたことが、まずとても心強い。
撮影現場のオフショットで、カタカナで「ボバ・フェット」と書かれたTシャツ姿を見てさらに好きになった。アナキン・スカイウォーカー役ヘイデン・クリステンセンのビデオメッセージを大興奮で受け取る様子から見て、アマンドラも“ガチ”のファンらしい。
キャリー=アン・モスのマスター・インダーラは威厳に満ちていてクールであり(出番はこれで終わりではない)、『LOGAN/ローガン』で注目を集めたダフネ・キーン、A24とコゴナダ監督が組んだ映画『アフター・ヤン』のジョディ・ターナー=スミスら女性キャラクターたちも個性に富み、重要な役どころを担っていくだろう。
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まさに夢のような顔合わせが結実したのが今回の「アコライト」。ヘッドランド監督はフォースのダークサイドを習得する女性主人公には常に関心があったと「スター・ウォーズ セレブレーション」で明かしたが、フォースにバランスをもたらすといわれたアナキンさえも引き寄せられたダークサイドはどこから生まれたのか。なぜ、私たちもそこに興味を惹かれてしまうのか。すべてを失った双子たちの成長譚・復讐譚でありつつ、ダークサイドの深遠な謎解きには大いに期待している。
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「スター・ウォーズ:アコライト」は毎週水曜日、ディズニープラスにて配信中。
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